第8話
ちょっと短いです。
ひとまず、桐生からもらった休暇は1ヶ月。この間にゆりをリッチに適応させろ、と暗に示されている。
夏美も同行しているのは、ゆりの世話係だからだ。
ゆりが「私たち、家族みたいだね」と言うと、夏美は早とちりして顔を真っ赤にした。
「こいつが夫なんてありえない!」
卓は理不尽に傷つけられた。
「え? 三人姉妹みたいだって言いたかったの」
ゆりの言葉に、夏美は黙り込む。指をもじもじと動かし、顔を赤らめている。
そんな夏美はひとまず置いておき、卓はゆりに向き直った。
「これから1ヶ月、僕が君の特訓を担当する。難しいことはしなくていい。僕のやることを真似すればいいんだ。……わかる?」
「うん!」
ゆりは素直で、どこか守ってやりたくなるような可愛らしさがあった。
――そのまま三人は教練場へ移動する。
「来たばっかなんだから、自由にさせてあげればいいのに」
夏美が不満を漏らす。
「遊ばせてあげなきゃ」
「時間がありません」
「甘やかして育てろって言ったの、あんたでしょ?」
「褒めて育てろとは言いました。意思を尊重しろとも」
「も〜……卓のバカ!」
また理不尽だ。
卓は一か八か、ゆりに話を振ることにした。
「ゆり、君はどうしたい?」
夏美は、きっと「遊びたい」と言うはずだと信じていた。だが――
「うーん……。お兄ちゃんたちに助けてもらったし、恩返ししたい。だから言うこと聞くね!」
「ゆり……遊びたいなら、そう言っていいんだよ?」
余計な口出しをする夏美。卓は少しだけ険しい顔をしたが、ゆりの意思は揺らがなかった。
――特訓が始まる。
わずか二十分後。
_どかーん!
大爆発が起こり、夏美が吹き飛ばされた。
「うぅ……痛いぃ……」
半べそをかく夏美に、ゆりが駆け寄る。
「ごめんね……私のせいだ……お姉ちゃん、ごめんなさい……」
今にも泣き出しそうなゆり。しかし夏美はすぐに表情を和らげ、優しく頭を撫でた。
「大丈夫。私は平気。ゆりは悪くないよ」
「ほんとに……?」
「うん」
微笑ましい光景だったが、卓は崩れた教練場の跡を見ていた。
ゆりには素質がある。だが魔力量が多すぎて、制御できていない。
それは卓の誤算だった。
――つまり、魔力制御から教え直す必要がある。
もっとも、土魔法で建てた施設なので修復は問題ない。
ゆりがキラキラした目で卓を見つめてくる。
一方で、放置された夏美は少し寂しそうだ。
「それ教えて!」
「今はまだ早い。まずは初級魔法からだ。……何が好き?」
「光!」
卓は固まった。
光は希少属性――闇・光・時空・飛行の一つだ。政府でも扱える者はほとんどいない。
(よりにもよって……)
卓自身、扱える希少属性は飛行のみだ。
「軍服ちゃん、花蓮さんって光魔法使えましたよね?」
「やめて! あの人に渡すのは絶対ダメ!」
夏美が即座に遮る。
「あの人がロリコンなの、わかってるでしょ!?」
「……わかりました。今のは忘れてください」
過去の件を思い出し、卓は素直に引き下がった。
「ねぇ、ゆり……」
「いいよ。わかった。私、わがままだったよね。……じゃあ氷魔法教えて?」
卓と夏美は顔を見合わせた。
氷は準基本属性。使い手は少ないが、卓にも扱える。
「……わかった。氷魔法から教えよう」
「捕縛中の里奈を使えば?」
唐突に夏美が言う。
「敵に頼るのは現実的じゃありません。花蓮さんが手放すとも思えませんし」
「子供には甘そうだったから、いけると思ったんだけど……」
惜しい案ではあったが、現実的ではない。
そのとき、ゆりがまた質問を投げかけた。
「ねぇ、魔法ってどんな種類があるの?」
卓は頷く。
「まず基本属性。火・水・草・雷・風。五大魔法とも呼ばれる。
次に準基本属性。氷・土・無。
そして希少属性。飛行、光、闇、時空……扱いは難しいし、危険なものも多い。」
「へぇ……」
「ちなみに昔は“閨”とか“魔”って属性もあったけど、今は統合されてる」
「じゃあ私、風魔法の使い手になる。それで飛ぶ!」
「欲張りだね……」
「いいの!」
ゆりはそう言って笑った。
――こうして特訓の日々が始まった。
朝八時に三人で朝食を取り、特訓。昼も一緒に食べ、また特訓。夕方からは施設を探検する。
ゆりは着実に成長していった。
そして――初級魔法を使いこなせるようになった頃。
それは起こった。
突如として、魔法少女の――




