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第4話

深夜。

卓はぼんやりと天井を見つめていた。


本部内の自室。思考しているわけでもなく、ただ一点を眺めている。


彼の体はすでに“死んでいる”。睡眠も食事も、本来は必要ない。


シャワーを浴び、ベッドに入る。それが、習慣になっているだけだ。


(やること、ないなぁ)


先ほどまで読んでいた資料はすでに暗記済み。夏美や桐生向けの書類も片付けた。


「……暇だなぁ」


ぽつりと呟く。


少し前、桐生に尋ねた。

――他の魔法少女も捕まえますか?


答えは却下だった。

赤城美香を逃した以上、相手は警戒を強めている。

次は長期戦になる。今は動くべきではない、と。


ついでに「暇だ」と漏らしたら、

――お前が逃したんだろうが。

と、冷たく返された。


「……探偵ごっこでもしてろ、だっけ」


思い出して苦笑する。

結局、散歩に出る気にもならず。

卓は目を閉じた。



翌日

目を開けた瞬間。


視界に、腕を組んだ夏美がいた。


「……」


(いつ入ったんだろ)


そう思う間もなく、彼女が口を開く。


「ボスからの指示。二人で任務」


「……また?」


心底面倒そうに返す。


「それはこっちのセリフよ」


夏美も不機嫌だった。


「あんたと組まされるなんて最悪」


「お互い様ですねぇ」


軽く流す。


「で、任務は?」


「魔法少女の拠点の“脆弱箇所”の調査」


淡々と説明する。


「捕縛より難しい。でも今は直接接触が危険。だから偵察」


「なるほどねぇ」


卓は頷く。


「じゃ、準備しますか」


指を鳴らす。

一瞬で衣装が変わる。

全身黒。中世の魔女を思わせる装い。


「……それ、教えなさいよ」


夏美が食いつく。


「企業秘密です」


にこり、と笑う。


「はぁ!?ちょっと――」


騒ぎ始めるが、卓は無視。

やがて夏美は口を閉じる。


(……大人、大人)


自分に言い聞かせる。

そんなことは、卓は知らない。


「じゃ、行きますか」


歩き出す卓。


「ご飯は――あ、食べたよね」


「……」


夏美がもじもじする。


「一緒に食べ――」


振り返る。


「って、もういない!?」


すでに卓は廊下の先。


(……あいつほんとにバカ)

小さく毒づき、後を追う。



車内

走り出した車。


夏美は無言で菓子をつまんでいる。

差し出された書類を受け取り、卓は目を通す。


「今回は……浜松か」


独り言のように整理する。


「廃病院。地下施設あり。政府の警備……厄介そうだなぁ」


「……うるさい」


即座に遮られる。


「静かにして」


(機嫌悪いなぁ)


理由は分からない。


「やれやれ」


「誰のせいだと思ってんの」


そんなやり取りをしながら、車は進む。



昼過ぎ。

ようやく高速を降りる。


「ここから下道ですね」


卓が言う。


「場所、かなり辺境ですよ」


さらに続ける。


「今回僕らが選ばれた理由、たぶん透明化能力です」


「ふーん」


「でも問題が一つ」


ちらりと横を見る。


「車は消せない」


「……は?」


「途中から徒歩になります」


「徒歩!?」


車内に響く声。


「無理!イヤ!」


チョコ菓子が宙を舞う。


「妖狐に日焼けとか関係ないでしょ」


「うるさい!!」


完全に地雷だった。



それから、二時間。

卓は黙っていた。


(学んだ)


――乙女心には触れない。



夕方。

ようやく目的地付近。


車を停める。

伸びをする卓。


ふと、風に揺れるススキが目に入る。


(……秋か)


体感では分からない。

だから、景色で知る。


「ここからは徒歩ね」


夏美が言う。


次の瞬間。

狐へと姿を変えた。


「……え?」


一瞬、思考停止。

すぐに戻る。


「じゃ、僕も」


卓は浮かび上がる。

透明化。

気配も消す。

根拠はないが、見つからない自信があった。


狐と、幽霊。

奇妙な二つの影が森へと入る。


――なお。

通りかかった酔っぱらいが気絶したことは、誰も知らない。



二十分後。

二人は足を止める。

夏美は人の姿へ戻り、卓も地に降りた。


目の前。

朽ちた廃病院。


「あそこね」


小さな声。


「魔法少女の拠点」


「えぇ」


卓も頷く。


「地下に政府の施設がある。ここは心霊スポット扱いだけど……実際は違う」


静かに続ける。


「侵入者には“怪奇現象”を演出して追い払う。あるいは――消す」


それが現実。


「……趣味悪いわね」


「同感」


短いやり取り。

沈黙。


空気が変わる。

任務の顔。


「行こう」


「えぇ」


二人は、廃病院の中へ足を踏み入れた。

気配は消えている。


だが――


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