表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第8章 デビルウンディーネのガディ登場、広場販売編
22/232

思いつきでやったほうがうまくいくときもある

さあ、パンは売れるのでしょうか?

***

 俺の様子を見てかすかに微笑んだスコリィが、くるりと回って背伸びをしながら現状の問題を指摘する。

「……で、まずはお金っすね。メンバーも増えて、このままだとすぐに資金が底を尽きるのは目に見えてるっすよ」

 いつでもしっかりしているのは女性だ。なんとなくスコリィには指摘されたくなかったが。


「俺に借金が75万もあるくせに」

 と俺がツッコミをいれても、彼女は平気だった。


「借金100億の人に言われたくないっす」

「ぐっ……」

 見事なカウンターに言葉が詰まる。

 

 視線をそらした俺は、マリーさんにもらった月魔法時計を見て時間を確認する。

 午後ニ時になろうとしていた。

 

 広場を見渡すと、多くの人が思い思いの時間を過ごしていた。まるで先程の騒ぎはなかったかのように。さすが異世界だ。皆、騒ぎなど日常なのだろう。


 ともかく、客の数は見える範囲でも十分。


「よし、ここでパンを売ろう」

 俺は、ずぶ濡れのまま、高らかに宣言した。


***


――数十分後。


 俺たちはパン販売を始めていた。


「おやつに、レンガパンはいかがっすかー? スロウタウンのレンガパンっすよー! 今なら60ゲル引きの220ゲル! 素敵なゴーレムが焼いたレンガパンですよー!」


 身長の高いスコリィが客寄せをしてくれる。推し活で鍛えたらしい良い声で販売してくれる。私情がどこか入っているような気がしたが、聞こえないことにする。


 ペッカに木材を召喚させ、火を付けさせ、火の番をしてもらい、俺の作った即席の立体かまどで、イゴラくんの練った小麦でパンを焼く。

 完璧な連携だ。


「お、いい匂いだね。1つおくれ」

「こっちは2つ」

「俺には3つ!」


 実演販売が珍しいのか、次々と売れていく。


 広場での実演販売の許可はすでに取っている。もうクレームがくることもないだろう。

 (我ながら経営の才が恐いぜ……)

 

「ありがとうございます! 水もどうぞー!」

 そう声を一生懸命に張り上げるのは、水の精霊とデビルガーゴイルの娘、ガディだ。


 俺はひと工夫をした。飲料用の無料の水場の見える位置で、パンの実演販売を始めたのだ。

 パンを食べるとどうしても水分が欲しくなる。本当はミルクが最高に合うんだけど。ミルクを露店販売するのは許可が下りなかった。


「コップはご自由に。使うのは無料です! 使ったらこちらへお返しくださいー」


 噴水の近くには、人が飲める用の小さな水場があり、俺はその近くに自分の作った焼き物のコップを並べていた。

 こういう販売戦略はよくみる。器が余っていたから思いつきでやってみたけど、まあまあ、うまくいっている。


「旅費はこの感じでいけばどうにかなりそうっすね」

「油断大敵だけどな」


 今までの売上の資金は、村を出る前になくなった。レンガパンの支払いとマリーさんへの支払いですっかりなくなってしまったのだ。何ヶ月も返ってこれないかもしれないから、近いうちに支払い義務のあるものだけ支払った。

 まあ、100億の借金と比べれば些細なものだ。


 俺達は夕食時まで売り続け、初日は全て売れて、1万ゲルほどの売り上げ。


 一番頑張ったのはイゴラくんだが、捏ねるのをスコリィが手伝ったりしてなかなか楽しそうだった。

 いや、スコリィは捏ねるふりをしながら小さなゴーレムを鼻の下を伸ばしながら見ていた。これも気が付かないふりをした。

 大事なのは調和だ。……たぶん。


 俺はこのまま三日くらいここでパンを売ろうと考えた。それだと、徒歩ではなく馬車での移動が可能になる。結果的には圧倒的に早く着くだろう。


***

 次の日も、俺たちは意気揚々と売り始めた。

 ――だが、パンが売れることはほとんどなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ