第12話 リスの暴動
第12話 リスの暴動
リスたちが狂ったように部屋に突入し、一人の少女を取り囲んだ。
「な、なんだよ!?」
灰色の髪の少女は混乱した状況に慌てふためく。
赤髪の女性、コードネーム『レッド』が鋭い視線を向ける。
「従え!」能力:闘志(完全体)。
彼女の声は軍令のようにはっきりと響き、リスたちは一斉に静止した。
「家の中に入るな」
リスたちはもがいたが、すぐに窓から逃げ出していった。
「グレイ、窓を閉めなさい」
「は、はい!」
灰色の髪の少女は急いで周囲の窓を閉めた。
囲まれていた少女はまだ手のひらのパンを見つめている。
レッドは歩み寄り、彼女からパンを奪い取った。
「リスが触れたものは食べさせない」
冷たい口調で言うと、指示を出した。
「グレイ、新しいパンを持ってきなさい」
「一度に二つも命令しないでよ!!」
グレイは抗議の声を上げる。
「早くしなさい!」
「急かすなよ!!!」ぶつぶつ言いながらも素早く動く。
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「はあ……」疲れた。
彼女は食卓にぐったりと倒れ込む。
「なんで自分の疲れは消せないんだろう……」
レッドが隣に座っている。
「最初から私に頼めばよかったのに?」レッドが言う。
「永遠に疲れを感じなくしてあげられるわ」
微笑みながら、指で何かを描く。
「やだ!!死んじゃうよ!」
「大丈夫よ、一日中働けるわ」レッドは頬杖をつき、
「7日以上はちょっと危険かもしれないけど」
「やっぱり危ないじゃん!!」
「でもあなた若いんだから、ちょっとくらい平気でしょ?」
「いらない!」
ふと、二人は向かいの少女がまだ食べていないことに気づく。
「どうしたの?食べないの?」レッドが尋ねる。
少女はテーブルの上のパンを見つめ、躊躇している。
「夕食の時間が近いわ……食べすぎると夕食が食べられなくなる」
レッドは静かに彼女を見つめる。
「レッド、今日は暇なんだ」グレイが突っ込む。
「普段は一階にいないくせに」
レッドのこめかみに血管が浮かぶ。
「あら~そう?じゃああなたが『掃除』した庭を見に行きましょうか?」
「やだ!本当にきれいに掃除したもん!」グレイは彼女の太ももにしがみつく。
「木の葉っぱ一枚残ってないくらいきれいになったんでしょ?」
「能力が強すぎるのが悪いんだよ!仕方ない結果だ!」
「じゃあ木を早く成長させて、もう一度掃除させようか」
「やめてええええ!!」
その時、少女はついにパンに手を伸ばし、小さくかじった。
「泣いてる?」グレイは困惑した顔をする。
少女は食べながら涙を流している。
「なんで?ただのパンじゃん……」
拳が降りる。
「感情のわからない奴だ」レッドは呆れたように言う。
「感情は生存に必要ない」グレイは頭を抱える。
「それに感情みたいな見えないものは消せないよ」
レッドは少し黙り込む。
「他のみんなを呼んできなさい」
「え?なんで?」
「もちろん今日は彼女の歓迎会よ」レッドが言う。
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「さっき見た大きなケーキだ!」
グレイは庭掃除の時、ロボットが作っているのを見た巨大なケーキを思い出す。
「窓を開けて食べようとしたら、リスがいきなり入ってきて……」
こっそりと呟く。
「ケーキケーキ!」
三人の影がケーキの周りで興奮して回っている。
グレイ、そして緑の髪の少年と少女。
コードネーム:『緑』。能力、分裂(完全体)
「今日歓迎会があるの忘れてた」
黒髪の男性が傍らに立つ。
コードネーム:『黒』、能力:死(完全体)
「残念ながら『無』はいないな、任務中だ」
今回は間に合わないようだ。
「レッドはどこ?」青髪の女性が尋ねる。
コードネーム:『青』、能力:反転(完全体)
「白を連れてくるって」グレイは無関心に答え、ケーキから目が離せない。
「私の時よりでかい気がする……」不満そうに言う。
「確かに、こういう時だけ白を連れてくるわよね」
青髪の女性は意味深に言う。
「全員揃ったかしら?」
レッドは車椅子を押し、白を乗せて現れる。
「一人足りないわ」レッドは周囲を見回す。
「『無』ならまだ任務から帰ってきてないよ」
「彼じゃないわ」レッドの声は冷たい。
「紫、どこにいるの?」レッドが言う。
「紫って誰?」
「覚えてない……新人?」
皆はきょとんとしている。
「グレイ、呼んでこなかったの?」レッドが尋ねる。
「え!?紫……紫って誰?」
彼女も困惑している。
「まったく……」レッドは白を押して食堂奥の部屋へ入り、ドアが自動で閉まる。
「出てこないなら『無』みたいに任務に行かせるわよ」
「出ますよ……」
薄紫色の髪の男性がドアを通って入ってくる。
「みんなに忘れられてた……」ふてくされたように言う。
「あ!」皆は突然思い出した。
不死者のメンバーの一人、コードネーム:『紫』、能力:否定(完全体)
「くそ!呼ぼうとしたら自分の部屋を『否定』しやがって、見つからなかったんだよ!」
グレイは憤慨して指さす。
「ただ見えてなかっただけだ……」紫は不満そうに言う。
「うるさい!」レッドが一喝する。
「今日は新メンバーの歓迎会、主役は?」
少女はまだ椅子に座り、静かにパンを食べている。
「まだパン食べてるの?これから夕食よ……」
レッドは眉をひそめる。
「そういえば、そのパンどこから持ってきたの?」
視線をグレイに向ける。
「違うよ……リスが触れたパンが食べたいって言うから」
「イヴに消毒させてあげたんだ~」
結局外の動物用だったけど。
「なんか彼女の言うこと断りにくいんだよ、変な感じ」
グレイは小声で言う。
「まあ、夕食食べられなかったら胃の中の食べ物消しちゃえばいいし!」
「やはり庭掃除をやり直させた方がいいわね」レッドは低い声で言う。
「今度は私が監視する」鋭い視線を向ける。
白は軽く笑う。
「このままでいいわ」白が言う。
レッドは白の後ろ姿を見つめる。
「あなたがそう言うなら……」
「グレイ、リスに能力を使おうとした件、そして庭掃除の件」
「ケーキを食べる前に報告書を提出しなさい」
「えー!」
「そうだ、私の前から逃げた件も——」
「三つの報告書、全部提出してからケーキよ」
「うっ……!」グレイは膝をつく。
「さて、不死者拠点——」
「第九回歓迎会、始めます!」




