バーチャルらしいことがしたい
小野と天寺が机を隣り合わせて話なにやら話している。
春が終わり夏が来た。小野はうちわを仰ぎながら気机の上で溶けている。
最近の出来事を振り返れば、競竜に競馬。現実では他になにかするわけでもなく家で堕落する日々。
高校生の身分でありながらパチンコを打つ不良男子。
そんな彼の嘆きは以外だった。
「バーチャルで遊んでいるのに、バーチャルらしいこと出来てなくね?」
「小野もそんなこと考えるのか?! 賭けごとできたらいいって思ってるタイプだと思ってた」
「そんなこと……」
そんなことないと言いたいが最近の行いを振り返ると否定できない。
「お金がないんだ俺は。親から競馬もパチンコも二度と行くなって」
机を涙で濡らしながら答える小野。どうやらおこ遣いは二度と支給されないらしい。
「だからギャンブル以外のことをしたいってわけだ」
「そんなとこだ、例えばモンスター倒して諭吉を稼ぐとかバーチャルで彼女つくるとか」
「そういう楽しさもあるね、でも今勧めたいのはロールプレイかな」
小野には聞きなじみのない言葉だった。首を傾げ頭の中で言葉の意味を検索するが出てこない。
「ロールプレイってなんだ?」
「キャラになりきって遊ぶことだよ、バーチャルだと容姿も変わるから演じるというより転生したような心持ちで楽しめる」
「説明だけされてもイメージつかないな、実際に体験しないと。ちょっくら魔王になって人類滅ぼしてくるわ」
人類滅亡などという不届きな冗談を言っているがバーチャルでは冗談では済まされないらしい。
「そういうこともできるよ、試しに勇者と魔王っていうバーチャルゲームがあるから参加してみる?」
天寺から詳しい話を聞いたところ勇者陣営と魔王陣営に分かれて戦うイベントのようだ。勇者の勝利条件は魔王を倒すか姫を助けるか。魔王側は人間を勇者陣営を全滅させたら勝利だ。ステータスは役職ごとに違う。特性やスキルは個人の経験や性格から生成される。
魔王陣営の特徴は魔族を使役できること、勇者陣営は騎士団を指揮できるところが特徴だ。
それぞれの陣営にいるNPCの好感度を上げることで、より強いキャラを仲間にできたり協力な武器が手に入る。
小野はゲームの説明を聞いて乗り気の様子だ、目を輝かせて「はやくやろうぜ!」と意気込でいる。
「それじゃ行こうか、勇者と魔王の世界へ!」