バーチャルらしいことがしたい(2)~ステータスの振り直しを希望します!
小野と天寺は勇者と魔王に参加するためにバーチャルにアクセスする。
小野がゲームにアクセスする方法を天寺に聞いたところ空に浮かぶ画面中央のタイトルをクリックすればいいとのこと。
二人がタイトルをクリックすると体はポリゴンの粒に変わり画面の中に吸い込まれていく。
小野が瞼を開くと馴染みのない城の内にいた。小野は膝まづくように片膝をついている姿勢で転移した。
小野以外の人たちも同じような姿勢で横一列に並んでいる。その中には天寺と見覚えのある顔の者がいた。
「よく来たな、勇者の卵たちよ」
玉座に足を組んで座る白髭を生やした王様が鎮座していた。
「君たちにはこれから魔王を討伐してもらう、討伐した者には褒美として我娘をやろう。そして我娘と婚姻しエルタニア王国を繁栄に導いてくれ」
この後も王様の長話は続く。痺れをきらした小野は普段と変わらぬ声量で話しかける。
「天寺、おじさんの話長いんですけど、スキップできないの?」
天寺は口元に手を当てて声量を抑える仕草を見せている。配慮のできる男はモテるというがバーチャルではどうなのだろうか。
「できないよ、校長の長話よりはマシだよ、耐えて」
王様の話を要約するとこうだ。ステータスは自分で割り振る。スキルはイベントの経験を積むことで生成される。イベントは討伐、政治、人と話したり、些細なことから大きな出来事まで、ありとあらゆる行動がスキル生成に関係するらしい。そして重要な職業選択だが今から勇者の卵たちで話合いをして決定する。水晶玉に手を当てて決めるとかではない随分と平和的な決め方だった。
五人は一心同体、魔王討伐まで一つのパーティーとして行動を共にすることになる。
王様のチュートリアル説明が終わり、各々ステータスの確認に移る。レベル1は合計100のステータスポイントがある。体力、攻撃力、素早さ、防御、魔力、賢さ、幸運、会話術だ。
会話術が特殊でNPCとの交流を円滑に進めやすくするものだ。コミュニケーションをとり友好値をあげることでゲームを有利に進められるのだ。
「さてと初期ステータスの割り振りっと。会話術とか糞の役にも立たんだろ! ゼロ! ゼロでいい!」
小野は会話術をゼロに振る。
「幸運とかいらんから! 俺はデフォルトでカンストしてるから!」
現実で運がよかろうが関係ない、異世界ではステータスが全てなのである。王様はしっかりそのことを説明していたが、小野は聞いていなかったらしい。
小野は幸運をゼロに振る。
「賢さ? 文字読めたら十分! インテリ系勇者は存在しない!」
小野は賢さに5ポイント。
小野のステータスは以下の通りになった。
【名前】小野 雄太
【ステータス】
体力:30
攻撃:25
素早さ:15
防御:10
魔力:15
賢さ:5
幸運:0
会話術:0
ステータスを割り振ったあとは衣服を支給されることに。小野は最後、天寺は最後から二番目に貰う順番だ。
ピンク色のドレスに身を包んだそばかす顔の美女が服を支給してくれるようだ、名前はアリアという。城内にいる下女とは思えない程田舎育ちの女性に見える。服を渡す姿や声色、雰囲気からして人当たりの良い女性だ。人を下に見るそんな下品な女性ではないだろう。
次は天寺が衣服を貰う番だ。
「天寺さん、遠方からエルタニア王国に来ていただきありがとうございます。こちらは私が縫ったお洋服になります。お気に召すでしょうか」
天寺に手渡された服は王族が着ていそうな赤と金色の豪華な服だった。天寺は裾を通し「うん、とても着心地の良い服です、素敵な衣服を縫って下さりありがとうございます」と感謝を伝える。そして感謝を伝えるだけでは終わらなかった。アリアの前で跪いて手にキスをした。頬を赤らめ恥ずかしがるアリアをみて可愛らしいと思う小野。
次は小野の番だ。
「天寺、俺も上手く振舞えばアリアさんを惚れさせられるかな」
「いけるいける、ここはバーチャルだからね。現実よりも簡単だよ」
天寺はウインクをしながら「なんならセリフをパクっていいよ、成功率あがるよ」と言った。
アリアが小野に話しかけてくる。
「遠方から来ていただいた小野さんには悪いのですが、布地が足りず粗末な洋服しか用意できませんでした」
小野に手渡された服はよれよれの茶色の無地な服、ズボンは青色のジーパンだった。
「いくら布地が足りなかったからってこれはないでしょ!」
「お気に召しませんでしたか」
「とても満足してます! 俺のために縫ってくれた、その気持ちだけで十分です」
「いえ、私が縫ったわけでは……」
「ん?おかしいな」
確かに天寺と展開は違うがここから一言一句違わずにセリフを言えばアリアさんの可愛い姿が見れる!
小野は天寺のセリフを完コピして「うん、とても着心地の良い服です、素敵な衣服を縫って下さりありがとうございます」と感謝を伝える。着心地は良くないし素敵でもないが小野は欲望に逆らえない!
そしてアリアの手を取りキスをしたのだがアリアの顔は赤く染めあがることはなく、むしろ青ざめていた。悲鳴と共に強烈なビンタをくらう小野。アリアではなく小野の頬が赤く染まってしまった。
「あれ? 思ってた展開と違うんですけど!」
期待を裏切られた小野は天寺に訴える。
「だれにでも優しく振舞う女神のような彼女が手を上げるなんて超レア展開だぞ!」
「なにに興奮してんだよ! アリアちゃんに嫌われたんですけど! バーチャルでもハードモードなんですけど!」
「ちゃん付けしないで!」
別にいやらしい目で見ていないのに胸元を隠すアリア。
「なんで俺だけこんなにひどい目に遭うんだよ」
「おそらく賢さと幸運それに会話術のステータスが低いことが原因だね」
天寺と同様に手作りの洋服だと考えていたようだがそうではなかった。何故最序盤で展開が違うのか。それはステータスの賢さと幸運と会話術が原因だった。王様の説明にもあるのだが、この三つにステータスを割り振らないプレーは上級者向けで内政が難しく難易度が上がるかわりに、戦闘で活躍しやすくなるというものだ。戦闘面のステータスに全部振らないと倒せない裏ボスがいるので上級者は内政ステータスに振らない。
小野は鎧を纏う騎士たちに取り押さえられながら今の説明を聞いた。
「あの!ステータスの振り直しを希望します!」
天寺は何も言わず首を横に振るだけだった。
小野はバーチャルを楽しみたかっただけなのに牢獄のなかくさい飯をたべることに。




