バーチャルでもギャンブルです。
これはギャンブル中毒の小野とゆかいな仲間たちのお話。
天寺は椅子の腰掛けに座っている。小野は校庭で走り回る女の子達を眺めていた。
現実とは違うもう一つの世界、VRが世界中で流行していた。その中でもラグナロクは売上本数15億! 圧倒的な人気を誇り、ゲームという垣根を越えて、生活必需品となりつつあった。自由度の高さかラグナロクは現在、第二の地球と呼ばれている。そんな中、世界一熱いVRゲームを日本で唯一持っていない男がいた
小野の下に金髪イケメン男子が駆け寄ってくる。
「小野―、ラグナロク五周年いこうぜ」
「ラグナロク持ってねーよ。3万もするソフトは高くて買えん。俺は半額になるのを待ってんの!」
「五年経って値引きされるどころか2倍近く値上がりしてる。今が最安値だよ」
「金溜まったらな。そんなことより今から女子部対抗リレーが始まるぞ」
「それがどうしたんだ」
「何部が勝つか賭けないか?」
天寺は肩を落として深いため息をついた。
「ギャンブルから手を洗え、賭場太郎」
小野は眉間にしわを寄せて不機嫌そうに言う。
「賭場太郎じゃない。小野雄太17歳にして、賭博王になる男だ」
天寺は握りこぶしをつくり手の平をポンと叩く。何かを思いついた様子だ。
「そういえば、ラグナロクに賭博場ができたぞ」
「突拍子もないことを言うんじゃない、これだから最近のイケメン男子君は、やれやれ」
小野はそう言いながら椅子に足をのせて、青空を指さす。まるで船長になったかのようだった。
「さあ行くぞ、ラグナロクへ!」
小野は宙に浮かぶキーボードを操作してラグナロクを購入する。
「勝っても負けてもこれでギャンブルは最後にしろよ」
「安心しろ。負け額取り戻したらやめるつもりだ」
「絶対やめないじゃん!」
二人は扉の前に立ち扉を開く。
「第二の地球、ラグナロクへ」
「レッツゴーギャンブル!」
「会場まで案内するからついて来いよ」
「了解!」
小野の視界にはチュートリアルが表示される。小野は絶対に見るようにと書いてあるにもかかわらず、スキップを連打して終わらせた。
そして時は経ち……
荒れ果てた市街地を竜に乗って駆ける人がモニターに映りそれを血管が浮くほど見つめる男たち。
小野もまたモニターを見ながら手を合わせて祈っていた。
「これで負けたら破産、これで負けたら破産」
「兄ちゃん、何番に賭けたんだい」
「五番に3万だ。一位なら六倍一角千金だ!」
アナウンサーは身を乗り出し声を張り上げ実況をしている。
「6番人気の五番マッルガリーダは現在七位です。ここから追い上げられるか!一位は2番のペペロンチーノ!」
映像には竜のほかに特撮のレンジャーのような赤い服を着ている者がいた。その正体は天寺である。その天寺の周りをドローンが徘徊している。
天寺「ハバネロフレンズのみんな、急な配信ですまない。緊急事態だ。どうやらここの社長は悪事を働いているようだ! 今から八百長を阻止しにいく。みんなも応援してくれ」
「五番はもう無理や、この位置からの逆転はできん」
小野の手には汗がべったり。瞬きせずに画面を見ている。
「もうーなんかこうー、隕石落ちろ隕石!」
「現実的じゃない」
「バーチャルだから!まだ可能性あるから!」
小野と男は柵から体を乗り出し瞬きをする。
上空から五周年と型取られた物体が流星群の如く降り注ぐ
「なんだあれは」
「神の恵みだ!」
「災いじゃ神の祟りじゃ、わしのペペロンチーノちゃんがどんどん順位を落としていく・・・」
小野は立ち上がりマルガリーダに声援を送る。
男はその場で座り込む。映像をみる気力を失い、券を握りしめてる拳の力を抜いた。その姿は老人のようだった。
「五番マルガリーダが一位に踊りでた。降り注ぐ障害物を華麗に避ける。速い速い、このまま逃げきれるか!」
「勝てる勝てるぞ!」
マルガリーダがゴールラインを通過しようとした時だった。赤いヒーロースーツを着た男が上空から降ってくる。
ハバネロマン「私が来た」
マルガリーダに向かってライダーキックをかます。
「お呼びじゃねぇよ!」
ハバネロマンは腰に両手をあてて言う。
「ハバネロマン参上!」
会場は歓喜と悲嘆、両方の声が聞こえてくる。
続きは明日書きます