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12 どうしたらいいのかわかりません

 アリーシャさんとの婚約、そして、その流れで結婚をすることになったとしても、それは二人の利害の一致から。

 そこに愛があるわけではなく、なんらかの契約を交わしたからだということはわかった。


 だけど……。


「お断りします」

「ごめん、いつもならパティーの気持ちを尊重するけど、今回ばかりはそうも言ってられないんだよ」


 今まではいくら押しが強くても、私の気持ちを考えて無理なことはしなかったのに。

 立場上、妻にはできないからって突然愛人として望まれても私はどうしたらいいのか困ってしまう。


 それに、もしそのためにアリーシャさんに取引を持ち掛けたのなら、そこまでするフェリクス様に対して、ちょっと引いている自分がいた。


 しかも私に何の相談もしないで決めるなんて、どうかと思うんだけど。


「私は愛人なんて……」

「こんなことを言い出したのは、パティーの夢が歌姫だからなんだよ」

「夢? それが愛人と何の繋がりがあるんですか」


 フェリクス様は私の質問に答えず、腕組をしながら悩み始めてしまった。

 アリーシャさんがその理由を知っているのかはわからないけど、彼女はフェリクス様の出方を黙って見ている。


 それから数分経って、フェリクス様が口を開いたけど、それを聞いた私は戸惑いがひどくなっただけだった。


「パティーは、僕とギャレットだったら、どちらを選ぶ?」


 フェリクス様は、また、わけのわからないことを言い出したのだ。


「私はそんなことを答えられる立場ではありません」

「今回の話はそこが重要なんだよ」

「だから意味がわかりませんって、私はずっと言っていますよね」


 当事者である私に何も教えてくれなくて納得できるわけがないだろう。いくらフェリクス様がいつもと違って神妙な顔つきをしていたとしても、まじめな話だからこそ簡単に返事はできない。


「殿下、このままパティーさんに隠していても話が進みませんわ」

 堂々巡りの私たちに、アリーシャさんが見るに見兼ねたようだ。


「――そうだね」


「あっ、何を!?」


 フェリクス様はテーブルの向こうから腕を伸ばし、突然私の手を握った。

 こんなところでそんなことをするなんて。私は焦ってしまって手を引っ込めようとしたけど、フェリクス様が離そうとしない。


「大丈夫だからこのままでいて」


 そう言われてもと思いつつ私はフェリクス様の方を見た。

 ああ、そうか。ここにいる人たちはみんな、フェリクス様の味方なんだ。


 万が一窓から覗かれたとしても、フェリクス様と私のことが見えない絶妙な位置にモルドー様が盾となって立っていた。


「これから話すことは、ギャレットのことだし、実際に行動に移すかはわからない。ギャレットの気持ちを先に僕が言うのもどうかと思うし、話したことでパティーの見る目が変わってほしくないから本当は言いたくないんだ。でもそれでは、パティーは納得出来ないだろうし、考えてみたらフェアじゃないよね」

「はい?」


 私の手を握っているフェリクス様の手に力が入る。


「ギャレットがパティーを側妃にしたいと望んでいるようなんだ」

「なっ、嘘ですよね?」


「本気なのか、僕をからかっただけなのかはわからない。だけど、あいつがパティーのことを特別に思っていることは確かなんだ。それが、妹のように思っているだけなのかと思っていたけど、だったら側妃にしたいなんて言うとは思えないし」


「本気なわけないと思います。だって、私の身分が低くて、フェリクス様ですらお許しが出ないのに、王太子であるギャレット様の側妃なんて絶対に無理な話ですよね」


「いや、正妃と違って、側妃のハードルはそれほど高くないよ。パティーが言うように男爵家の令嬢では難色を示されるかもしれないけど、歌姫っていう付加価値があれば側妃のひとりして迎え入れることは可能だと思う。重婚が認められていないこの国で、王太子だけが持てる特権だから、僕の愛人になるより身分は保証されるし、パティーが望むならそれも有りなのかもしれないけど、僕はパティーを渡したくはないよ」


 だから、私にどちらを選ぶのか聞いたのか。


「ギャレットの希望が通って、王家から申し入れがあれば男爵家が断ることは難しいと思う。パティーにその気がないのなら、その前に僕の愛人として認識された方がいいと思ったんだ。僕の愛人として認知されている女性なら、ギャレットが側妃に望んだとしても、王家の醜聞になるから陛下が許可するわけないだろうしね」


 理由は理解できた。


「パティーはどうしたい?」

「でも、それでは婚約者であるアリーシャさんの立場がありませんよね」

「それは、気にしないで。私がパティーさんを守ることも契約のうちだもの。婚約者である私がパティーさんのことを認めているとなれば、誰にも文句は言われないはずよ。それに私にもメリットが多いのよ」


 ギャレット様の話は本当のところどうなのかわからない。と言いながら、フェリクス様に外堀を埋められているような気がするのは私の考え過ぎだろうか。


 フェリクス様のことは大好きだけど、私の気持ちが置き去りにされている気がして、その時はその提案を受けることができなかった。


「少し考えさせてください」


 私が歌姫になれるかどうかもわからない。万が一ギャレット様の件が本当だとしても、まだ猶予はあるはずだ。


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