笑顔、生きていく流れに
水着売り場の近くにあったベンチに座って待つこと五分。
「御待たせ致しました」
「霙が死にそうだったが、大丈夫だろうか」
「まあ…大丈夫だろ」
今は霙の無事を祈ろう。
「雹さんが、選び終わったら連絡する、と言っていましたので、暫く何処か見て回りましょうか」
「二人が選んでいいよ」
フロア案内の紙を紗奈に渡す。
「あまり惹かれる所がないな。強いて言うならば、此処か」
時雨が指差したのは、フロアの四分の一を占める大型のトイストア。
「ゲームも売っているのだろう?」
「私も行きたいです」
「二人が行きたいなら其処でいいけど…」
七百歳ということを考えるとシュールな気もするけど、じゃあ七百歳が何処行くかって言われたら、冥土としか答えられない。この場合は、行く、ではなく、逝く、だろうけど。
単純にこの二人はゲームが好きなだけなんだろうが。
最近は時雨も紗奈もゲームにはまっている。時雨はアクション、紗奈はRPGが好み。
暫く見て回ったが、二人とも俺が買わないならそれでいい、と言うので、適当に気になっていたソフトを買う。皆で出来るものなので、丁度いいだろう。
「お、雹からかな」
携帯が電話の着信をお知らせしてくれる。
「今どこー?」
「…トイストア」
「は?何で?ってあの二人はゲーム好きだったっけか」
「さっきの水着売り場に行きゃいいのか」
「いや、一階の隅っこにあるカフェに来て。じゃ」
通話終了。
ちなみにこのショッピングセンター、一階の隅っこにあるカフェは、三ヵ所ある。どれも離れた位置にある為、ただ捜し回ると、凄い時間を使う。
「手間かけさせんなよな…」
マカに電話をかける。
「もしもし、そう君。どうしたの?」
「そのカフェの名前、分かるか?」
「うん、ちょっと待ってね。えーと、すかいむーど?かな?」
「分かった、ありがとう」
電話を切り、カフェへ向かう。
「来た。こっちだよー」
雹が要らないくらい手を振ってきた。余ってるから抑えろ。
「マカ、霙、大丈夫だったか?」
「私は大丈夫だけど霙ちゃんが…」
「マカさんを護れたなら安いですよ…」
「なんか奢るから、元気出せ」
メニューを広げる。
俺、アイスコーヒー。
時雨、アイスコーヒー。
紗奈、ホットココア。
マカ、モカフロート。
霙、アイスココア。
雹、オレンジジュース、チョコケーキ、ミニパフェ二つ。
「何で皆飲み物だけなの?」
雹以外全員追加でミニパフェを頼んだ。
「皆で色々見て回ろーよ」
俺たちがトイストアにしか行ってないことを聞き、雹が提案する。時間もまだあるのでショッピングセンターを歩くことにした。
「靴かぁ。こういうとこって、安全靴置いてないよね」
「もっと相応しい置場所があるからじゃないか?」
「そういえば、ビーチサンダル買ってないね」
「此処で買っちゃいましょう」
ビーサン購入。他にも見て回ったが、特に買うこともなく、歩き回って帰ることに。
「また来たいねぇ」
「次は買う物を決めておこうかな」
ただ、この時間が楽しかったのは、言うまでもないだろう。皆もどうせそうに違いない。
「実際に見てみると、ここまで興味が持てるものなのか」
「今まではただ知るだけでしたからね」
そうでなけりゃ、こんなに楽しそうに笑うものか。
「本当に不思議…人がたくさんいたのに、怖くなかった…」
「あいつが一緒だったらそんなことも考える余裕が無いだろ。まだ会話は上手く出来ないか?」
「うん…でも、きっといつかは…」
「困った時は言えよ?」
「ふふっ、頼っちゃってもいい?」
その笑顔に不安は無く。
「何なりと」
俺も出来る限りの笑顔を見せた。




