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取引

あんまり話が進んでないですね。

このダメ作者が!

もっとスムーズに書けるようにしないとなぁ。

敗北。それすなわち私の人生が終了を告げたということだ。覚悟はできている。もとより危険を承知でここへやってきたのだ。ただ心残りは、私を心配してくれるであろう友人や肉親たちだ。恐らく私を探すために全力で調査をするはず。それでもしここへたどり着いてしまったら。そう考えると震えが止まらない。


「さて。まずお嬢さん、貴女は一応表で忠告をされているはずです」


そう。私は忠告を聞くべきだった。彼女に帰るよう言われた時、大人しく退散すればよかったのだ。


「彼女は貴女のような客人ではない人がここへ来ないように見回りをしていた私の部下です」


やはり。先ほどの口ぶりから察したが、彼女は目の前の人物の部下だったというわけだ。彼女は己の任務を果たすため、私に忠告をした。それなのに、私はそれを無視してしまった。


つまり。


「私は彼女を罰する必要が出てしまいました。この責任、どうとってくれるんですかね?」


彼女は優秀な部下なのだろう。この人物の声から彼女に対する信頼と、彼女を罰しなければならない落胆が滲んでいた。明らかに私のせいだ。


「勝負に負けた以上、私はあなたに何をされようと構いません。でも、あの人を罰するというのなら、私を使って下さい!」


目の前の人物が、どれだけ邪悪な存在であっても、彼らなりに事情があり、こうして仕事に務めていた。しかしそれを私が土足で踏み込んで汚した。彼らにも裏稼業をする上での矜持やプライドがあるだろう。そういう人と、私はよく関わっているから分かる。記者はそういう事を平気でするものだと理解はしているが、決して褒められるものではないし、私自身良心がないわけではない。だからこそ、『郷に入れば郷に従え』だ。彼女のためにも、私が犠牲になるのは当然だろう。


「ほう? では私の仕事の手伝いをして頂いてもよろしいと?」


「ええ、覚悟はしてます」


ニタリと、相手が笑った気がした。


「では、彼女の処罰をしない代わりに、貴女は我が霊感お悩み相談室の仮所員として働いていただきましょう」


地下労働じゃない? いや、この相談所は強力なバックからの莫大な援助で悩みを解決している。恐らく私にはそれをさせるつもりなのだろう。恐らく敗北してきた人々もいるはず。彼らと結託すれば、うまくいけばこの裏稼業を、黒幕ごと潰せるかもしれない。


「では。まずは自己紹介といきましょう。私の名はゼノン、相談所の所長をしています」


そう言って髑髏の面を外す。現れたのは蒼白な顔をした美青年。思っていたよりも年若い。恐らく裏稼業で頭角を現してきた期待の若手、といったところなのだろう。


だが。生気をまるで感じない。


私の勘が告げている。今すぐ逃げろと。最初に感じた感覚と同じ。この世ならざるものが、目の前の存在だと。そう頭の中が警鐘を鳴らしている。


「そして、私は人間ではありません。私の種族は……」


逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ! 人間の危機を伝える本能がそう告げる。しかし逃げられない。体が凍りついたようだった。私は彼の何もかもを見透かしたかのような目に射抜かれ、何もできないでいた。そして彼は告げた。私が最も嫌いな存在で、最も出会いたくない存在を。


「死神です」


これが私の初めての、怪奇への遭遇だった。






「申し訳ありません。忠告はしたのですが引き止められず。処罰は受ける所存です」


「いいですよ。彼女はなかなか面白い人ですし。優秀な貴女を罰する理由でも無いですしね」


私は彼女、顔面蒼白になり今にも倒れそうな明山寺凛音を表通りまで連れていき、無事に帰路についたことを確認した後、報告のため相談所へと戻った。


正直、新しく赴任したこの所長を試す意味もあったのだが、彼は私を罰することもなく、彼女を無事に返した。今までここに来た客人ではない人間を、彼は例外なく無慈悲に処断し、魂を奪った。ゾッとした。これほどの即断即決をし、容赦を見せない人物は初めてだった。


しかし普段は温厚であり、上司としての働きも問題なく、非常に優秀だった。だからこそ、この人物がどのような考え方をしているのか、試してみようと彼女をあえて泳がせた。結果的に彼女はここへと至り、彼と何らかのアクションを起こしたらしい。話を聞いてみれば、


「ああ、彼女とトランプゲームをしたのですよ」


と言った。内容はポーカー。私は彼女に心から同情した。彼は賭け事においては類まれなる運を持っている。それはもはや天運といってもいいほどだ。まあ、死神ゆえ天国からの恩恵など全くないが。


運命は誰にも、それこそ神様さえ操れない。人の死を司る死神とて例外ではない。


だが。彼はまさしく神のような運を持っている。だから彼と勝負するときは、適度にイカサマを使って勝ちを取る。幸い、彼にはバレていない。彼は恐らくその豪運を使ってとんでもない手札を呼び寄せたらしい。彼女はイカサマを使ったらしいが、バレてしまったようだ。彼が札の切り方がおかしかったと言っていたから間違いない。


そして彼はその時の手札の内容を言った。ロイヤルストレートフラッシュ。私は目眩がする思いだった。出れば間違い無く幸運とまで言われる手札。私でさえイカサマ無しで揃えたことはない。


イカサマをされてなお最上の手札。彼にバレてしまったから、彼が意図的に幸運を使って彼女に勝った。そうとしか思えなかった。


……これからはイカサマを使うのは控えよう。そう、心に誓った。






「ああ、そうそう。彼女は私に負けたので、ここでしばらく働いて頂くことになりました」


私は彼女に同情の念を抱く他無かった。同族内でも"死神の墓場"と言われる、この『霊感お悩み相談室』、正式名称、『現世霊魂管理局』に、彼女を職員として迎え入れると。彼女がなぜあれほどまで蒼白な表情をしていたのか理解できた。現世の霊魂とは、大半が浮遊霊などの無害な存在だが、地縛霊や悪霊の類、ひいては妖魔の存在さえあるのだ。


現代ではひっそりと、しかし人々に都市伝説などと恐れられる存在を、只の人間が相手にせねばならない。心情は察して余りある。私たち死神が存在するのが、何よりの証拠なのだから。


私を罰することをダシにして、私達を無意識に感知してここへやってきた彼女を手中に収める。なんと悪辣で効率的。彼女はきっと役に立つだろう。私の見立てでは、ここ十年見てきた中で一際大きな"気"を有している。加えて明山寺・・・の苗字。私の知るあの(・・)明山寺であれば、間違いなく人間の中でも逸材中の逸材。


それを苦もなく手に入れるその手腕。彼を試すつもりが逆に利用されてしまうとは、何とも情けない話だ。今悟った。彼を敵に回すべきではない。彼は最も敵に回すべきではない存在。だが優秀であり、何より好感が持てる。ならば私は精一杯彼の右腕として仕事を全うしよう。


彼さえいれば、私の望みもきっと叶う。そう、私の復讐もきっと……。






「さて。まずお嬢さん、貴女は一応表で忠告をされているはずです」


とりあえずお説教。んー、でも彼女、私の威圧にも耐えるほど優秀な人材だし、叱っても意味ないかも。ならいっそ、私の部下になってもらって働いてもらったほうが理に適ってるんじゃ……。


いややめときましょう。ただの一般人を巻き込むわけには。……いやまあ、ここに客じゃない人間が何人かきたことがありますけど、その尽くを殺した私が言っても説得力無いですね。


でもあれは仕方なかったんです! だって皆現世で悪いことやってた人達ばっかなんだもん。大方、ここを警察から逃げるための根城にでもしに来てたんでしょうけど、運がなかったですねぇ彼ら。


「彼女は貴女のような客人ではない人がここへ来ないように見回りをしていた私の部下です」


ここには楊さんという優秀な人材がいたのですから。ホント、あの人は私の部下なんかにするのは勿体無い方ですね。……あ、でも今回は見廻りに出てた彼女を処罰しないといけませんね。すんごく気がひけるんですけど。でも規則は規則ですし……。


「私は彼女を罰する必要が出てしまいました。この責任、どうとってくれるんですか?」


責任転嫁。うわぁ、大人げない。うっかりとはいえ言ってしまいましたよ……。軽蔑されそう。


「勝負に負けた以上、私はあなたに何をされようと構いません。でも、あの人を罰するというのなら、私を使って下さい!」


え?覚悟は決まってる? 男らしい……ってこの子は女の子じゃないですか! バカにしてるってレベルじゃないですよ! はぁ……、どうも今の私は心根を鍛え直す必要があるかもしれないですね。後で久しぶりに山の道場に行ってきましょう。ビシバシ扱いてもらったほうが私のためになるというもんです。


さて。彼女、明山寺さん、でしたっけ? 中々に優秀な方のようです。特に"気"や"霊力"が半端じゃなく高い。今まで私達のような存在が気づかなかったのが不思議なくらいです。うーむ、一応我々という人外の秘密順守のために彼女を雇えば、楊さんを処罰する必要はなくなりますね。でも一般の人を巻き込むのはちょっと……。


ええい、こうなったら現世での協力者として正式に書類を通してしまいましょう!


「ほう? では私の仕事の手伝いをして頂いてもよろしいと?」


「ええ、覚悟はしています」


よろしい。これで楊さんを処罰する理由がなくなります。思わず顔がにやけちゃいましたが、仮面つけてますからバレてはいないはず。


では、彼女の処罰をしない代わりに、貴女は我が霊感お悩み相談室の仮所員として働いていただきましょう」


ええと。とりあえずあらためて自己紹介からですよね? 仮面も外さないと。これから一緒に働く方に顔も見せないのでは不審なだけでなく、何より失礼ですものね。


「では。まずは自己紹介といきましょう。私の名はゼノン、相談所の所長をしています」


私は仮面を外す。一応、私が人外なのも教えておきましょう。そのほうが後々理解が早くなりますし。


「そして、私は人間ではありません。私の種族は……」


一呼吸置き、


「死神です」


私ができる笑顔120%でスマイル。あれ? フレンドリーな感じにしたのに何で顔面蒼白なんですか彼女。あ、そうか。いくら精神力があるとは言っても、あくまで一般人ですからね。死神なんて聞けば、そりゃ青くもなりますか。


あ、丁度いい所に楊さんが。本当に優秀な方ですね。私が困っている時に助け舟を出しに来てくれるなんて。






楊さんが彼女を送って行ってから10分ほど。彼女が戻ってきました。ご苦労さまです。


「申し訳ありません。忠告はしたのですが引き止められず。処罰は受ける所存です」


「いいですよ。彼女はなかなか面白い人ですし。優秀な貴女を罰する理由でも無いですしね」


律儀な人だなぁ。私なら処罰が怖くて言い出せないよ。


「……ありがとうございます。ところで、彼女とは何かあったのですか?」


「ああ、彼女とトランプゲームをしたのですよ」


初めてだったなー、あんな手。正直私死ぬんじゃないかと今内心ビクビクですよ。まあ、私死神ですけど。


「ああ、そうそう。彼女は私に負けたので、ここでしばらく働いて頂くことになりました」


とりあえず事務連絡。彼女と私だけの職場でしたから、明山寺さんが入れば賑やかになりそうですね。楊さんは女性ですし、彼女と話も弾むでしょうね。いやー、彼女と働くのが楽しみです。

先日、小説を始めてから

初めての感想を頂きました。

嬉しくて泣きそうでした。

この場を借りて、改めて感謝させて頂きます。

ありがとうございました!

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