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武力ゼロと追放された俺、口八丁で最強国家を作ってしまう 〜元トップコンサル白石快斗の異世界再編計画〜  作者: InnocentBlue


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第15話 分裂する強さ


騎士団は、動き出した。


名目は――治安維持。実態は――小規模遠征。


「よし、次は北の林だ!」


「魔物の巣があるらしいぞ!」


号令とともに、騎士たちが散開する。以前なら、城の中で鍛錬を繰り返すだけだった彼らが、今は外へ出て、実戦を重ねている。


魔物を討つ。野盗を追い払う。村を守る。


そして――


「助かった……本当に……」


震える声で頭を下げる村人。騎士たちは、少し照れくさそうに笑う。


誇りが、形になって返ってくる。



その裏で。


「はい、今回分です」


小さな袋が差し出される。快人はそれを受け取り、軽く中身を確認する。


(うん、適正価格)


にやりと笑う。


表では支援。裏ではビジネス。だが搾取ではない。


相手は助かり、騎士団は経験を得て、王国には金が入る。


(全員勝ち)


理想的な形だ。袋を懐にしまい、顔を上げる。


視線の先では――


「そこだ、左を詰めろ!」


鋭い声が飛ぶ。


フィリアだ。



言うまでもなく、強い。


剣の軌跡が、速いとか重いとか、そういう次元ではない。


無駄がない。最短で、最適に、敵を断つ。その一太刀で、戦場の空気が変わる。周囲の騎士たちも、それに引っ張られるように動きが良くなる。


(あれは、別格だな)


快人は腕を組む。身体能力もさることながら。


(現場理解が早い)


一瞬で状況を読み、最適な位置に立つ。指揮官としても優秀だ。


――ただし。


(オツムはちょっと足りないけど)


口に出したら死ぬ。確実に真っ二つだ。


快人は何事もなかったように咳払いをした。



だが、快人が見ているのはフィリアだけではない。


「……ほう」


別の場所。一人の騎士が、部隊をまとめていた。


「右、引け! 前に出すぎるな!」


指示は簡潔。だが的確だ。無駄な動きが減り、全体の流れが整う。


位は高くない。


だが――


(あいつ、場を動かしてるな)


名簿上の指揮官ではない。それでも、現場では自然と人が従っている。


こういう人間がいる。組織の隙間で、実質的な推進力になる存在。


(いいね)


快人の目が細くなる。さらに視線を巡らせる。


別の部隊。


こちらは正式な指揮官がいる。だが、その横で。


「今だ、押せ!」


タイミングを見て、的確に声をかける騎士がいる。結果、部隊が一気に前に出る。


(こっちもか)


興味深い。そしてもっと興味深いのは――


(誰も止めない)


上官が、目くじらを立てない。


「勝てばいい」


そう言わんばかりに、任せている。



遠征が終わり、野営地。


火を囲みながら、騎士たちは笑っている。


「今日のあれ、良かったな!」

「ああ、あのタイミングは助かった」


自然と、評価が共有される。形式ではなく、実力で。


快人は少し離れた場所から、それを眺めていた。


(悪く言えば、上下関係が弱い)


命令系統が曖昧になる危険もある。


だが――


(いい意味では、柔軟)


現場の最適解が、すぐに反映される。封建的な騎士団にしては、珍しい構造だ。


普通は、上が絶対で、下は従うだけ。


だがここは違う。強い者の声が通る。それが、いい方向に働いている。


(これは……)


快人は、ふっと笑った。



「これは、アメーバ経営ですね」


ぽつりと呟く。


当然、誰も意味は分からない。だが快人の中では、明確な像ができていた。


小さな単位で動く組織。


それぞれが自律し、状況に応じて最適化する。


そして全体として、一つの生き物のように動く。


(分裂してるようで、繋がってる)


だから強い。だから、変化に対応できる。


「……面白いな」


快人は、火の向こう側を見る。フィリアが、部下たちと何か話している。


笑っている。あの姿もまた、この組織の象徴だ。上に立ちながら、距離が近い。


(これ、伸びるな)


確信に近い感覚。


だが――


同時に、課題も見える。


(統制が弱い)


拡大すれば、必ず歪む。だからこそ。


(今のうちに型を作る)


個の力を活かしながら、全体として最適化する仕組み。


それを作れば――


この騎士団は、ただの戦力ではなくなる。


「さて」


快人は立ち上がる。火の粉が、夜空に舞う。


「次は、人材配置ですね」


誰が、どこで、どう動くか。それを決めるだけで、成果は倍になる。


快人は、もう一度騎士たちを見る。


一人ひとり。動き。癖。判断。全部、頭に入れていく。


(いい素材だ)


そして。


(料理しがいがある)


口元が、自然と歪む。


アストレア王国。その強さは、まだ形になっていない。


だが――


確実に、兆しはある。快人は夜空を見上げた。


「もう少しで」


小さく呟く。


「跳ねますね、これ」


火は、もう点いている。


あとは――


どう燃やすかだ。

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