613列車 乗り鉄は戦争
2062年4月3日・月曜日(第27日目)天候:曇り 東日本旅客鉄道水郡線常陸大子駅。
常陸大子14時36分→安積永盛16時19分
気がついたら、安積永盛の手前まで来ていた。どうも蒟蒻神社に行ってから色々と街を歩いていたのが功を奏したらしい。水郡線に乗っている間二人でずっと眠っていたようだ。起き上がると背中の辺りが痛くなっている。寝ている姿勢は悪かったみたいだな・・・。
左側から東北本線の線路が近づき、やがて水郡線の線路は東北本線と合流する。列車はポイントで東北本線上り線を声、下り線へと入る。後はこのまま東北本線を走って行くのだ。
安積永盛駅に到着。僕たちは列車から降りた。
「うーん・・・。何か早く着いたね。」
「早いどころじゃないなぁ・・・。途中で寝落ちしてたから早かったんだって・・・。」
さて、安積永盛駅に着いたら乗り換えなければならない。これから東北本線を南下し、小山まで向かわなければならないからだ。
小山に行くには東北新幹線が最も早い。郡山16時39分発の「やまびこ316号」に乗れば、小山駅には17時32分に到着出来る。僕らの持っている最長往復切符は水郡線から安積永盛駅で東北本線に乗り換えるが、郡山→小山間は東北新幹線に乗っても東北本線に乗車したことになるため、特急料金を払えば不正乗車にはならない。さらに安積永盛→郡山間は郡山で改札の外へ出ない限り、運賃を払わずに乗ることが出来るという特例もある。
だが、僕たちはあえてその選択をしないことにした。新幹線は今回いくらでも乗ることが出来るだろうが、時にはゆっくり行きたい物だからだ。
次の新白河方面行きの列車は16時32分発新白河行きだ。
安積永盛16時32分→新白河17時06分
新白河行きはE723系2両編成だった。18切符シーズンと言うこともあり、車内は混雑している。この列車の始発駅は隣の郡山駅。そして、郡山駅では仙台・福島方面からやってきた18切符ユーザーが喜びそうなダイヤ設定になっている。この列車が混雑するのは致し方ない。ドア付近にあるロングシートに腰掛けている、18切符ユーザーを見てみる。目つきは玄人じみていて、悟りの域にまで到達しているようだ。
「ロングシートで開眼するって言うのはあながち嘘じゃないらしいねぇ・・・。」
「嫌なもの、開眼したわね。」
列車が新白河駅に到着するとドアが開いた瞬間に一斉に走り出す人たちがいる。彼らは皆18切符ユーザーだ。そんなのは乗り鉄をしていれば、嫌ってほどよく分かるようになる。
彼らは少しでも早く椅子にありつこうと頑張っている。僕らは椅子にありつけるとも思っておらず、席取りゲームのように血眼になる気は無い。待っている列車はGV-E410系。E723系と同じく固い椅子を装備する。椅子にありつけてもあまり嬉しくないものが待ち構えていた。ふと車内で椅子にありつけた18切符ユーザーを見てみると、血の気が引いている人もいれば、もうすぐ東北本線のロングシート旅が終わりを迎えると思っている人には安堵の表情も見える。
新白河17時09分→黒磯17時32分
戦争は約30分後の黒磯駅でも発生する。E723系から片側辺り1枚減った扉から18切符ユーザーが吐き出され、宇都宮行きの止まるホームへと急ぐ。僕らは今回もその戦争には参加せず、達観する。席にありついたユーザーの表情はほぼ全員から血の気が引いた。上を行った東北新幹線が快適な旅を誘惑し、彼らの精神を破壊する。今の彼らにはこれ以上にない攻撃であり、致命傷にも相当する。
黒磯17時37分→宇都宮18時28分
宇都宮駅での戦争は一時休戦だ。18時28分に到着しても、18時41分発の通勤快速まで列車が無いからだ。13分の間に気分転換のために下車する人。課金の誘惑に勝てず、新幹線へ財布と相談しながら脱落する人。最後の気力を絞り出し、普通車で行く決意を固める目の死んでいる人。最後だけでも楽をしたいと体力に限界を感じ、グリーン券を買い求める人に分かれていった。・・・どこの修行僧の集まりだ。
最長往復切符往路宇都宮駅で途中下車
僕らはどこか座れる場所を求めた。それと夕食だ。
「宇都宮に来たんだし、やっぱり餃子食べていこうか。」
昨日の唐揚げで結構お腹がとなったが性懲りも無く、またお腹にキツい一発を食らわせられそうなものに落ち着くか・・・。
そうそう、僕らの浜松と宇都宮は餃子の年間消費量日本一を争っているが、僕からしてみるとそれはかなりどうでも良いことである。勝手にやってくれと思っているのが僕の感想だ。
宇都宮19時42分→「通勤快速」→小山20時08分
19時42分発の通勤快速上野行きには東北地方から運ばれてきた修行僧達が乗り換えてくる。彼らは空いている座席を次々と埋め、僕らの座るボックスシートにも2人腰掛けてきた。彼らの疲労は体力を大きく上回っているのだろう。席に着いた瞬間に寝てしまった。それだけの寝付きのよさは見習いたいものだ。
小山駅で東北本線から両毛線に列車を乗り換える。この列車で目的地新前橋に着けば、今日の宿にありつくことが出来る。
小山20時40分→新前橋22時17分
最長往復切符往路新前橋駅で途中下車
僕らの目もその頃には死んでいたらしい。少しばかり駅員に引かれたのはそのせいだろう・・・。




