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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
サイドストーリー 相原 浩介編(3)
32/86

record32 時間

この話はサイドストーリーです。

読まなくても本編に直接の影響はありません。

音一つしない、静かな廊下を一人で歩く。

周りで大きな音をたてられても不快だが、こうまで静かだと逆に寂しさを感じる。

まるで一人だけ取り残されて、他のみんなはどこかへ行ってしまったみたいに思える。

なんだかこの館自体に、自分は孤独なんだと痛感させられているようだった。

そう思うと、進む足が重く感じる。

浩介は気を紛らわすため、なんとなくだが腕時計に目をやる。

――もう十八時か……。

部屋で新聞や資料、あの十一人の失踪事件に関する全ての書物を出した。

普通なら見られない警察の書類や事件当時の資料など、くまなくあさった。

初めは半信半疑だったのだが、本当にこの館では望むものならなんでも提供してくれる。

だからこの館でなら、もしかしたら姉がどうなったのかを探し出すことができる、そう浩介は思っていた。

――でももう残された時間は少ない……どうすればいい。

そう思い、悩んでいても仕方がないと敦司の部屋へと足を運んでいるのだ。

もちろん敦司は浩介の姉がどうなったのかは知らないし、まず兄弟が居ることすらも知らない。

そして今後話すつもりもない。敦司だけではなく、誰にも。

話しても余計に心配をさせるだけだし、迷惑になると浩介は思ったからだ。

でも今、この状況で頼れるのは敦司しかいない。

自分は馬鹿だし、考えも浅はかだ。

だから自分よりも頭がいい敦司に今自分が持っている、失踪事件に関しての全ての情報を託せば、この館との関連性を見つけ出してくれるかも知れないと淡い希望を抱いていた。

虫がいい話だとは自分が一番分かっている。

けど、まどかに一歩でも近づくことができるなら――。


「確かここだよな」


浩介は敦司の部屋の前まで行くとそこで足を止める。

そして何度かノックをする。

けれど何も返事はなく、誰かが出てくる気配すらない。

――あ、そうか。そういえば中の音は外には通じないのか。

なんて不便な構造なのだろう。

これじゃあ中で何をしているか、外からじゃ全く分からない。

それから少しの間待ってみたが、結局中から敦司は出てこなかった。


「おい、敦司? 居るなら少し付き合ってくれないか?」


今度はノックだけではなく、声も上げて扉を叩いてみる。

だがやっぱり誰も出てこず、また廊下に静けさが戻る。

――俺が部屋を間違えたのかな? というか、この部屋の番号……こんな訳の分からないものをつけるくらいなら名前でも付けてくれればいいのに。

他の扉を見てみても違うところは数字だけで色や形、作りは一緒になっているのでどれがどれだか簡単に見分けがつかなかった。

でも自分の記憶が確かなら、この番号の部屋が敦司の部屋だったような気がするのだ。

――最後にノックして、これでだめだったら自分でどうにかするか。

どうせ出てこないだろうな、と思いながらももう一度ノックをする。

すると浩介の期待に応えるように扉が開いた。

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