ローブの香り7
そうして連れてこられたのは、なぜか自分の部屋だった。
「……なんで私の部屋を知ってるの?」
窓から入り、ダリウスは私を抱えたまま床にそっと足を下ろした。
「前に言ってただろ。寮の1番上の1番右端だ、って」
そういえばそんな事、言ったっけ……?記憶にないわ。
相変わらずの記憶力の高さに、驚かされてしまう。
けど、そんな思い出に浸る暇などなかった。
私は床に足をつけるなり、彼に怒りをぶつけた。
「なんてことしてくれたの!?」
「は?」
「ルヴェルにあんな言い方したら、私たちの関係を完全に認めたように思われるじゃない!」
「さっきの話ちゃんと聞いてたか?」
「えっ?」
「ルヴェルは、俺らの関係を疑っていたんじゃない。確信した上で実家に密告したんだ。だから奴に演技する必要なんかない」
その一言に、私は息を呑んだ。
「にしても、俺が実家で監禁されてる間に……」
監禁……!?ダリウスが!?
じゃあその頬は、両親が?
「……浮気していた、なんてな」
視線が冷たく刺さる。
……えっ?
「う、浮気!?って、ちょっと待って!?何言って……」
「天使はみんな、まだ食堂にいる時間だった。なのに、お前とルヴェルだけ中庭にいた。二人で抜け出して、あんな……」
ダリウスからギリっと歯ぎしりのような音が聞こえた。
「別れたんだから、関係ないでしょ!」
「まだそんな事を言ってるのか。お前が勝手にそう言ってるだけで俺は一切認めてない」
その言葉に、眉が寄る。
「そんな……認める認めないなんて……結婚したんじゃないんだから」
そう言った途端、ダリウスの目が鋭くなった。
でも構わず続けた。
「……私達は、もう……完全に終わったの」
「だから、勝手に決めるな!!」
突然の怒鳴り声に、思わずビクッと肩をすくめる。
彼がこんな声を出すなんて、初めてで、驚きが隠せない。
慌てて目を伏せ、小さく呟く。
「じゃあ……どうしたら認めてくれるのよ……」
そう口にすると、鋭い目線が視界の端から突き刺さるように感じた。
「……そんなに、俺と離れたいのか?」
「だから、私はそう言って……」
そう言って目を向けると、心の読めないルビーのような瞳が映り、言葉に詰まった。
思わず一歩後ずさると、同じだけ彼が詰め寄った。
すぐに背に壁が付いた。
そのことに気付いた時、彼が勢いよく私を壁に挟み込むようにして手をついた。
そして私の手を取ると、静かに自分の胸へと誘導した。
「な、何……?」
「お前がここに……お互いの思いを刻んだのは、こうやって、またお互いに愛し合えるようにするためだったんじゃないのかよ……っ」
ダリウスは、言葉に出来ないような顔で顔をしかめた。




