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【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
許されぬ恋のはじまり~終盤~

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112/121

ローブの香り1

 

 別れた後、ダリウスは何度も私に声をかけてきた。


『本当の理由を聞かせてくれ』

『話し合おう』って……


 そんな言葉に、私は何も答えられず、ただ逃げることしかできなかった。



 前世の二の舞にならないためには――

 どちらにしても、別れるしか道はないから。



 前世では、逃亡してからは、ずっと生きた心地がしなかった。

 ダリウスも、逃亡前まで向けてくれていた笑顔もほとんど無くなり、眉間に皺を寄せて悩む姿が増え、次第にやつれていった。


 そして、あの結末……



 もう、二度とあんな過ちは繰り返せない!





 そんなある日――



「えっ……!!」

 強く腕を掴まれたと思い振り返ると、怒りを露わにするダリウスがいた。


「ダリウス!やだ!離してよ!」

「離すわけないだろ」


 私はダリウスに強引に手を引かれ、人通りの少ない裏庭に連れてこられた。


 すぐに背中が冷たい壁に押しつけられた。

 逃げようとする私の逃げ道を塞ぐように、ダリウスが私の真横の壁に手をつく。


「や……やめてよ!こんな事されると困る!」

「なんで」

「なんでって……こんな所、誰かに見られたら……」


 頭をよぎるのは、父との約束。

 私は真っ青になりながら辺りを見回す。



「ああ……その()()()()とやらに誤解されると困るからか?」

 怒りをにじませた彼の声が鼓膜に響く。


 でも、一瞬、何のことか分からず黙り込んだ。


 すると、やっと浮かび上がる自分が過去に言った言葉。

『少し前から……他に好きな人がいた。だから……もう、引き止めないで!』


 そうだった……!



「そ、そうよ。だから困るの」

 視線を逸らしながら、眉を寄せる。


「……んと。下手なんだよ……」

 悲しげに鼻で笑うダリウス。


「え?なにが」

「リシェルは、何に怯えてるんだよ」

 その言葉にギクっと胸が鳴る。


「お、怯えてなんて……」


 否定しようとしたその瞬間、ダリウスの視線がまっすぐに私を貫いた。


 心の奥の奥まで見透かされるような、赤い瞳。

 私は思わず、視線を逸らす。


 すると、彼の手がそっと私のあごに触れた。

 静かな力で、私の顔を正面に向かせる。



「俺の目を見ろ」



 そう言われて、ついつい言われるままに恐る恐る視線を上げる。

 そこには、私を逃がさないという意思に満ちた瞳があった。


「前に言ったよな。『このままじゃ、あなたまで危険になる』って」


「だから何?もう終わった話でしょ」

「終わってなんかない」

「終わったのよ!」

 そう叫んで手を振り払った瞬間、思いもよらない言葉が返ってくる。



「悪かった」


「……え?」

 突然の謝罪に、思わず顔を上げる。

 そこには、悲しげな目でまっすぐ私を見つめるダリウスがいた。


「……な、に?」

 なんで謝って……

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