崩れ行く……3
崩れかけた屋根。
割れたガラス窓。
そこから差し込む、眩しい位の月明かり。
『魔界に……いや、世界に背いてでも、ただ……お前の傍に居たかった。それだけなのに……それすら許されないのか、この世界は……』
苦しげに顔を歪めるダリウスらしき姿。
『大丈夫よ。万が一、私達が離れ離れになっても……』
『私たちは、また……きっと出会える』
『ここに、これがある限り……』
忍び寄る影に、引き裂かれる手と手……
貴族の端くれに生まれ、必死に勉強をして入ったアルカディア学院。
奇跡的に合格して手に入れた、天帝補佐官という座。
そこで出会ったのは、ダリウス。
どこか目を引く、美しすぎる悪魔。
彼に惹かれること自体、禁忌。
だって、彼は悪魔だから。
でも、止められなかった。
それほどに強い想いだった。
そうして私は……自ら正しい道から外れてしまった。
走馬灯のように一気に記憶が流れ込む。
その瞬間――全てを思い出した。
「……えっ……」
そしてすぐに、思い知らされた。
あの選択が、間違いだったことを。
私たちは、無惨な終わりを迎えた。
あの日、私達が手を取る道を、選んだせいで――
「う……嘘……っ」
気づけば、私の目からは涙がこぼれ落ちていた。
「俺たち……」
「私たち……」
震える声で、互いに紡ぐ。
「やっと会えた……」
私は、顔をクシャっと歪めた。
「なんで……なんでよ……」
涙が次から次へと頬を伝う。
「なのに、どうしてまた……天使と悪魔なの!?」




