あなたのぬくもりの中で7
「うん。旅先での移動中に馬車の中から、たまたま貧困の町を通りがかったの。
その時見た者は、食べ物の奪い合いや、ひったくりだったわ。
凄くショックだった。慈悲深いとされる天使がそんな事するなんて……
だから、そんな行動に理解出来なかった。
でも……きっと生きていくことに必死で、相手に対しての思いやりなんて回らないんだと思った」
ダリウスは私の言葉に静かに眉を寄せた。
「裕福な天使も、みんながみんな幸せとは限らない。
心の中に小さな綻びがあって、それが広がって……それがきっかけで崩れていくことだって……
でも、そうならないように少しでも埋めていければ……いつか、誰しも本当の真実の慈悲が生まれてくるんじゃないかって思うの」
私はすっと半身を起こして、ダリウスを見つめた。
「だから私は天帝の補佐を目指している。天帝の次に、この世の中を動かせる立場だから」
綻びから、大きな悲劇になる気がしてならない。
だから私は、誰かを守れる場所に立ちたい。
「お前なら、やれるよ」
「ダリウス……」
「俺が惚れた奴なんだから」
そんな言葉に、心が温かくなった。
こんな事、誰にも話したことがなかった。
まるで、天使の裏切りみたいな話だから。
口にすることで、心がずいぶんと軽くなった気がして、私から小さな笑みがこぼれた。
「ありがとう」
やっぱり、ダリウスといると、心が強くなる気がする。
でも、それと同時に、この幸せの終わりを想像しては、不安で泣きそうになる。
だって、ダリウスは悪魔だから……
次は「崩れ行く……」の章になります(^^)/




