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恋の温度  作者: 穂高胡桃
12/17

ひとりぼっちの新婚生活 ④

それからも凌さんの帰宅時間は不安定で、待ち焦がれている私はいつもため息をつきながら時計を目にする。

深夜に玄関が開く音が聞こえれば、飛びつく勢いで自分の部屋から出ていきたい。

でももちろんそんな時は、出迎え禁止だ。

『お帰りなさい』なんて玄関に立ったら、冷たい視線を向けられてしまう。

だからリビングに向かう凌さんに部屋の中から「おかえりなさい」とつぶやく。

本当は凌さんのバッグを受け取って、ハグしてキスなんてしてみたい。

凌さんがお風呂に入っている間にご飯の支度をして、温かいご飯を食べてもらいたい。

でも・・どれも叶わない。


凌さんがお付き合いしている人は、それができているのかな?


想像すると悲しくなる。

私が出来ないことをその人は全てできているように思えて。

私には見せてくれない笑顔を、その人は見ているのかな?

どうしてその人は凌さんに好きになってもらえたのかな?


私の知らない凌さんを、その人は知っているのかな・・・。


そんなことを考えていると、無性に羨ましくなってしまう。

そして凌さんから感じたあのフローラルな香りを思い出すと、言い表せない感情が胸をよどませていく。

リビングのソファーに座っていても鬱々としてしまうので、窓を開けてルーフバルコニーに出てみると、月が綺麗に見えている。

風がそよいで気持ちがいい。

見上げながら眺めていても、頭に浮かぶのは凌さんの顔。

いつもどんな時も凌さんのことを求めてしまう。

私は凌さんじゃないとダメなのに、凌さんは私じゃなくても全然平気。


私にとって小さい頃から凌さんは憧れの人で、沢山の男の子と学校で知り合っても、好きになったり憧れたりすることは一度もなかった。

凌さんにしかドキドキすることもなかったし、好きすぎて苦しくなることもなかった。

好きになるって簡単なことじゃない。

凌さんじゃないと・・私はだめだよ。だめなの。


「凌さん・・・少しでいいから私のこと・・好きになってくれないかな」


凌さんに結婚してもらえるように、どんな条件ものむことを約束したのは私の方なのに。

自分の思いはこうして遂げられたはずなのに。

凌さんと結婚できただけで私は十分幸せなはずなのに・・・。

寂しさは日々膨らんでいく。


「どうして私・・1人なんだろう。・・・凌さん」


綺麗に見えていた月が歪んで、ポロリと頬を涙がつたっていった。




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