ひとりぼっちの新婚生活 ④
それからも凌さんの帰宅時間は不安定で、待ち焦がれている私はいつもため息をつきながら時計を目にする。
深夜に玄関が開く音が聞こえれば、飛びつく勢いで自分の部屋から出ていきたい。
でももちろんそんな時は、出迎え禁止だ。
『お帰りなさい』なんて玄関に立ったら、冷たい視線を向けられてしまう。
だからリビングに向かう凌さんに部屋の中から「おかえりなさい」とつぶやく。
本当は凌さんのバッグを受け取って、ハグしてキスなんてしてみたい。
凌さんがお風呂に入っている間にご飯の支度をして、温かいご飯を食べてもらいたい。
でも・・どれも叶わない。
凌さんがお付き合いしている人は、それができているのかな?
想像すると悲しくなる。
私が出来ないことをその人は全てできているように思えて。
私には見せてくれない笑顔を、その人は見ているのかな?
どうしてその人は凌さんに好きになってもらえたのかな?
私の知らない凌さんを、その人は知っているのかな・・・。
そんなことを考えていると、無性に羨ましくなってしまう。
そして凌さんから感じたあのフローラルな香りを思い出すと、言い表せない感情が胸をよどませていく。
リビングのソファーに座っていても鬱々としてしまうので、窓を開けてルーフバルコニーに出てみると、月が綺麗に見えている。
風がそよいで気持ちがいい。
見上げながら眺めていても、頭に浮かぶのは凌さんの顔。
いつもどんな時も凌さんのことを求めてしまう。
私は凌さんじゃないとダメなのに、凌さんは私じゃなくても全然平気。
私にとって小さい頃から凌さんは憧れの人で、沢山の男の子と学校で知り合っても、好きになったり憧れたりすることは一度もなかった。
凌さんにしかドキドキすることもなかったし、好きすぎて苦しくなることもなかった。
好きになるって簡単なことじゃない。
凌さんじゃないと・・私はだめだよ。だめなの。
「凌さん・・・少しでいいから私のこと・・好きになってくれないかな」
凌さんに結婚してもらえるように、どんな条件ものむことを約束したのは私の方なのに。
自分の思いはこうして遂げられたはずなのに。
凌さんと結婚できただけで私は十分幸せなはずなのに・・・。
寂しさは日々膨らんでいく。
「どうして私・・1人なんだろう。・・・凌さん」
綺麗に見えていた月が歪んで、ポロリと頬を涙がつたっていった。




