第1話「そしてふたりの少女は出会う」
「……聞こえますか? 予定されていた未来を書き換える、不規則な鼓動が。」
舞台は西暦3000年。完璧なAIによって全ての旋律が管理され、感情さえも数値化された電脳都市。そこに歴史のバグとして現れた8人の少女たちがいた。
慈愛を歌うリーダー・詩音。
爆速の鼓動を刻む流音。
孤独を解析する深音。
現状をブチ壊す璃音。
これは0と1の海で出会った彼女たちが支配された運命(AI)に抗い自分たちだけの「旋律」を奏でていく物語。
2026年8月6日。
既存の物語をデコードし、Chrono・Sphereが21世紀をジャックする。
私たちが奏でるのは計算不能の奇跡。銀河を揺らす時の調べ。
最新情報はBlueSkyにて「#Chrono_Sphere」で発信中。
「準備はいいですか? あなたの心に私たちが直接シンクロします。」
お待たせしました。「Chrono•Sphere ー 運命の旋律 -」、先日発表した「らいだ~く」「ゆめあや」に続いての設定を練り直してのリブート連載となります
これも、もはや旧作の面影はありません
これで難航していた三作品ともリスタートすることができました
あたしにとってはみっつとも思い入れがありすぎるものです
それでは第1話【そしてふたりの少女は出会う】、どうぞお楽しみください!
バシャッ、バシャッ!
激しく水たまりを蹴立てる足音が、下層街の薄暗い路地裏に響き渡っていた。
幾何学的なホログラムネオンの光すら届かない、都市システムに見捨てられた小雨の街。
そこを猛烈な勢いで走っているのは、18歳の少女――流音だ。
愛車である反重力エアロマシン『パルス・エッジ』から飛び降りた彼女は、水色のヘルメットを小脇に抱えたまま、何かを必死に追い求めるような真剣な形相で猛ダッシュを続けている。
普段見せるような、クールにゼリー飲料を吸う余裕など微塵もない。息を荒く切らし、剥き出しの情熱を秘めた横顔。
「はぁ、はぁ……ッ!」
激しく地面を蹴り出す彼女の脳裏に、数時間前の出来事が鮮烈にフラッシュバックしていた――。
◇
コンテスト会場のきらびやかな専用楽屋裏。
白を基調としたスタイリッシュな部屋のど真ん中に、湯気の立つ白米と、本物の海の幸を贅沢に敷き詰めた豪華な『刺し身大皿御膳』がドカンと鎮座していた。
上層部が流音のデータをプロファイリングし、アレルギーや嫌いなもの――イカ、タコ、貝、そして過去にあたった苦い記憶のあるホッケ――を完璧に排除して用意した特注品である。
「……フッフッフッ! 分かってんじゃん、上層部ぅ……!」
さっきまでのクールな仮面をかなぐり捨て、腹黒いドヤ顔を全開にする流音。
お刺身を醤油にくぐらせ、ほかほかの白米の上にワンバウンドさせて猛烈にかき込む!
白米とお刺身をかっ食らい、砂抜き完璧な関西タイプの極上シジミの味噌汁を美味そうにすすった。
(ズズッ……ズズズッ……)
(あはー、染みる! この砂育ちの出汁こそがアタシの魂のエンジンよ!)
心の中で歓喜の叫びを上げていた、まさにその瞬間だった。
――ガチャリ。
下心全開の男が楽屋に入ってきた。
流音は、お椀を持ったポーズのままピキッと完全硬直する。
……コンマ一秒。
流れるような無駄のない動作でお椀を置くと、何食わぬ顔でポケットから無機質な『ゼリー飲料』を取り出し、ちゅーちゅーと吸い始めた。
その顔は一瞬にして、クールでドライな天才アーティストへとシフトしている。
「あー、別に。アタシ、エネルギー補給はこれで十分なんで。ノイズは要らないわ」
男を冷たく追い出した後、大皿の刺身御膳をソッコーで完食した流音は、不満げに唇を尖らせた。
「ハァ。確かに美味かったけどさぁ。あんな量じゃ全然足りないっつの! アタシの燃費、舐めないでほしいわね」
ふと彼女の目が、部屋の隅に置かれた「お土産用の高級ゼリー飲料(ダース箱)」を捉えた。
「ま、これはこれとしてもらっていくよ。タダの栄養素は拒まない主義だからね!」
腹黒くニヤリと笑い、流音はその箱を容赦なく強奪したのだった。
◇
フラッシュバックが鮮烈に明ける。
バシャッ!!!
再び水たまりを激しく蹴立てて走る、現在の流音。
息を荒く切らし、ジャンク通りの路地をさらに奥へと曲がった――その瞬間。
ひっそりと佇む古びたガレージの隙間から、冷たい小雨をすべて払い裂くような、世界を凍らせるほど「完璧な歌声」が響いてきた。
猛ダッシュの勢いのまま、ガレージの前で急ブレーキをかけるように足を止める流音。
「……ッ!?」
電撃が走ったように目を見開いた彼女の瞳の先に、その少女はいた。
薄暗いガレージの奥で、独り寂しく圧倒的な旋律を口ずさんでいる詩音。
流音の放つ圧倒的な輝きが詩音の瞳に映り込んだ瞬間、詩音の脳裏にもまた、世界から拒絶され続けた過去が鮮烈に蘇っていた。
――白い無機質な実験室。
幼い詩音は無数のコードを繋がれ、大人たちから「Lv.30の数値データ」としてしか見られていなかった。温かい言葉など一度もかけられたことはない。
学生時代も、完璧すぎる才能のせいで周囲から不気味がられ、誰も隣に並ぼうとはしなかった。
(完璧であればあるほど、人は離れていく。……だったら、もう誰も入れない)
回想が明け、深い怯えと拒絶の瞳で流音を見つめる詩音。
これ以上傷つかないために、彼女は何も言わずにすれ違いざま、逃げるようにガレージから立ち去ろうとする。
だが、流音の身体が瞬時に動いた。
ガシッ!!!
詩音の華奢な手首を力強く掴み取る、流音の手。
「……ッ!?」
驚きで息を呑み、見上げる詩音。
光の差し込む小雨の境界線で、詩音の手をガッチリと握りしめたまま、流音は爽やかで優しい「最高の主人公の笑顔」を向けて言い放った。
「見ぃ〜つけた。アタシのパルスを狂わせた、最高にイケてない迷子の歌姫さん?」
爽やかに微笑みかける流音。
……だが、その口元はほんの一瞬だけ、何かを企むように腹黒くニヤリと歪んでいた。
(フッフッフッ、これでこのコミュ障の天才歌姫はアタシだけのもの……! アタシが独占して世界をあっと言わせてやるんだから!)
まさにあの瞬間、猛烈な独占欲のパズルを完璧に噛み合わせていた流音の脳内モノローグ。
驚きで見つめ合うふたり。
小雨の街に、遠くパルスの駆動音が小さく響く中、物語の幕が上がる――。
(第1話「そしてふたりの少女は出会う」おわり / 第2話へ続く)
こんにちは、まりもです。
はじめての方ははじめまして
BlueSkyでの公言通り、何とか今週中に連載開始することができました
本作は、30世紀のネオ・ルミナを舞台としたChrono・Sphereの魅力的なヒロインたちの物語です。
最初に詩音のイラストが出来て、それから流音を製作して、物語の方向性をスタート。しかし作品から楽曲が必要不可欠なのに、当時のあたしは楽曲制作のノウハウがなく未実装にて、どうしても作品展開に無理が生じました。その後、必死に楽曲制作を繰り返してChrono・Sphere以外のものも含めひととおりの楽曲を用意できたので、ストーリーを彩らせることができました。
「らいだ~く」や「ゆめあや」とは作り方からしてまったく違う作品です
さあ、流音が30世紀のネオ・ルミナを舞台とした「Chrono・Sphere - 運命の旋律 - 」の世界をこじ開けてくれました。ぜひ、彼女やChrono・Sphereの歌姫や楽曲と共に30世紀の世界を疾走してくださいね。
こちら作品の旧第1話もこのネットのどこかにまだあるので、もし見つけられたら比べてみると、その違いに驚くと思います。
なるべく早く上げていきますので、どうか最後までお付き合いのほうよろしくお願いします
メインヒロインのひとり流音が歌う、Chrono・Sphereの前期OP主題歌です
『雨境のイグニッション』
架空アニメ 「 Chrono・Sphere - 運命の旋律 - 」 前期OP主題歌
歌:流音 - ruon - & Chrono・Sphere
https://suno.com/s/ibFkP8V4rSbSYIWS




