最終話 グイグイ来る彼女との約束と未来へ
「11月から2月に冬にかけて、そこの窓からプレアデス星団が綺麗に見えるんです」
フッと彼女に連れられ、窓から夜空を見上げた。ちょうど周りの光が入ってこなくて、満天の星空が、空一面に煌めいている。
こっちに来てから空を見上げたことはなかった。今こうして初めて見れば、澄んだ空気の故郷で見た星空と同じくらい綺麗だ。
「あそこに見えるのがプレアデス星団です。冬に比べて少し小さく、薄くなっていますけど。この星空のどこかにいるのかな……って思いながら」
「ありがとう──ずっと見ていてくれて」
「……気づいていたんですか?」
「俺の名前の由来だからね。この髪飾りも、そうだよね」
そう言って、彼女の髪につけられている髪飾りに触れた。
プレアデス星団。
和名を─【すばる】。
両親がこの星を偶然見て、『あの星のように誰かを照らす存在になってほしい』という思いを込めて、つけてくれた。
この間のショッピングモールで買った6つの星がデザインされた髪飾りも、形的にこれがモチーフになっているものだった。
俺が彼女を想っていたように、彼女もまた俺を想い続けてくれていた。
「い、今それを言うのは……ズルいです」
恥ずかしそうに伏目になる彼女の頬は赤みを増していく。俺も、改めて口に出したことでドキドキしてきている。でも嬉しくて、幸せで胸がいっぱいだ。
子供の頃に言えていた言葉が、年を重ねるにつれて言うのがこんなに難しくなるとはあ思わなかった。無邪気なあの頃なら、こんなに回り道をせずに伝えられたのかもしれない。
でも──もう覚悟は決めてる。この想いをちゃんと伝えたい。
彼女と向き合う。視線が交錯。
「昴君……?」
少し不思議そうに小首をかしげるその姿に俺は──。
彼女の瞳は、いつ見ても世界で一番綺麗だ。吸い込まれてしまうほどに透き通っていて、そしていつも真っ直ぐに俺を見ていてくれている。
その姿に俺は──。
一度を閉じれば、今までの彼女との特別な時間が全て浮かんでくる。出会いも、あの約束の日も、再会の瞬間も。何気ない日常だって、彼女がいればそれだけで特別だ。
俺たち以外の世界の時間が止まったかのように、音が消えていく。聞こえるのは自分の鼓動と、彼女の息遣いだけ。
(あぁ俺、めっちゃ緊張してる。でも……怖くない)
スッと目を開ければ、いつもと変わらぬ彼女がいてくれた。もうこれ以上、待たせるわけにはいかない。
俺の想いを、確認してもらう時が来た。
時間が動き出す。
「俺、美夢ちゃんとずっと一緒にいたい」
「えっ……」
「一緒にいていつも楽しくて、幸せだよ。ただの日常が、美夢ちゃんと一緒にいればそれだけで特別に時間になった。毎日会える事が楽しみで、この時間がずっとずっと続けばいいのにって、心の底からいつも願ってる。あの日の約束──俺も覚えてるよ」
言葉を紡ぐうちに、彼女の頬は赤く染まり、目は潤んでいく。
「今はまだ子供で、完全に約束を果たすことはできないけど、あの頃から想いは変わらないよ。俺は──美夢ちゃんが大好きです!」
「うぅ……っ……!」
この言葉を言うのに、どれだけの時間が流れただろう。どれだけ彼女を待たせてしまったのだろう。彼女の目からは大粒の涙が流れた。
でも──微笑んでくれている。
「俺と、恋人になってください! そして……将来的に、家族になろうよー!」
あの頃とは違って、今はちゃんと言葉の意味と重さを理解できている。それでも特別な約束をした日には言えていた想いが、5年という月日を経て、再び言葉にできた。
そんな俺の言葉を彼女は、泣きながら最高の笑顔を見せてくれている。いつ見ても、彼女の笑顔は最高に眩しいよ。
「私も、昴君のことが大好き!! よろしくお願いします!」
呼吸をするのを忘れ、心臓の高鳴りを感じる間もなく、最高の言葉とともに、再会したあの時と同じように、真正面から抱きつかれ。驚いてあたふたしていたあの時とは違って、優しく、でもしっかりと受け止めて、抱きしめることができた。
暖かくて、全てを包み込んでくれるような感覚。それと同時に涙がボロボロと溢れてくるし……あの時と一緒だ。でもやっぱり最高に幸せだ。
「これからもずっと一緒ですから! 将来的に家族になりましょう! 約束、ですから」
「約束するよ! ずっと一緒だよー!」
最初から最後まで、あの頃からそう変わらない言葉。でも俺たちにとっては、今それを改めて口にすることが何よりも特別な事だ。
告白は確認作業だと思っていたけど、少し違う。たとえ相手が自分の気持ちを知っていても、自分の想いをちゃんと言葉にして伝えるのは凄く怖い。勇気がいる。
でもそれを乗り越えた先には、最高の未来が待ってくれていた。
『幼馴染』、『大切な人』という関係性に『恋人』が新たに追加された。将来的には『恋人』が『家族』に変わる未来を作るために、たくさんの人に支えられながら2人で前に進み続ける。
「昴君、ちょっとだけ横を向いてくれますか」
「うん、いいよ」
その瞬間、頬に柔らかくて温かい感触が…!そして『チュッ─』といリップ音が!
「ふぁっ!?」
頬っぺたにキスされた!された部分がめっちゃ熱い!
急いで彼女を見れば、恥ずかしそうに顔を赤く、目を潤ませていた。自分からしておいてその表情は、彼女の言葉を借りれば──ズルいよ。
「ま、まだ、あそこにする勇気がなかったので……いつか、昴君の方からお願いします……」
どうやら恋人になっても、彼女がグイグイ来るのには変わらないようだ。
俺はこれからも、彼女にドキドキさせられる。そして、ドキドキさせていくんだ。
こんな魅力的で、最高の恋人からの期待されているのだ。逃げるなんてありえない。
でもそんな未来を想像して、またドキドキしてしまっている。
元凶が消えても、でもこれからの未来は何があるのかはわからない。過酷な事や、辛い出来事が待っているのかもしれない。けど離れ離れになるという試練を乗り越えて、5年ぶりに再会できた。そして今、大きな一歩を新たに踏み出すことができた。なんだってできる。なんだって乗り越えられる。
そして──もう絶対に、離れ離れにならない。
これは、大切な人に『好き』だと言えた2人が、特別な『家族』になっていく話。
その始まりの物語。
ここまで一読していただき、ありがとうございました!
初めてのラブコメで不安が多かったですが、多くの方々に読んでいただけて嬉しかったです!
ハッピーエンドを皆様にお見せ出来て、光栄でした。
それではまた




