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50話・手ごわい強敵



 このヴィジリタス国の今は平和だが、陛下が戴冠する前は確か、先代陛下が病で倒れ、その後を誰が継ぐかで揉めに揉め、後継者と目される者達が次々と病死や、毒殺、暗殺などで命を落としたと聞いている。

 王家の唯一の王女であった陛下だけが兄弟の中で生き残り、戴冠したのは24年前のこと。私が生まれる前の話だ。

 あとは確か、兄王子だか、弟王子の子供がいたはずだがいずれも幼くて後見人を必要とし、その母親の身分が低いとかで王位にはつけずに、王宮で王子王女として暮らしているとは聞いていた。

 

 王家の普段の生活については公開されていないこともあって、私達国民は陛下の兄弟や親戚さえ、あまりよく知らない。陛下の戴冠でさえ、後から公布されたようだし。そこまでに至る経緯を聞く機会もないし、関心も持っていなかった。雲の上のお人に早々会う機会だってない。自分とは無縁の人と思っていたのに……。人生何があるか分からない。



「わたくしが21歳で戴冠してから早いもので24年が過ぎたのね」

「ノアールは25歳になったか」


 陛下と公爵が感慨深いように言う。二人には私の知らない二人だけの過ごしてきた時間が蘇ってきているようだった。


「早く、あなたも身を固めなさい」

「放っておいてくれ」

「ウベルトもアドリーヌも婚約したのに……。歯がゆいわ」


 そう言いながら陛下は、私を見た。ウベルトやアドリーヌとは確か、王都でよく聞く名前だ。女王陛下の甥や姪で、王宮で暮らしている王女と王子さまだ。二人とも公式の行事で民衆の前に姿を見せることがあり、国民の人気は高かった。



「サーラ嬢もそう思うでしょう?」

「サーラは関係ないだろう?」


 母親に噛みつくように言うノアールを、公爵は楽しそうに見ていた。仲の良い家族の一面が知れた気がした。私も父や母が生きていたのなら、こうして他愛も無いことを口にして笑いあっていただろうか? ほんの少しだけそれが寂しく思われたが、いつの間にか側に来ていたカルロッテに肩を抱かれていた。


「うちのサーラは、いくら相手がノアールさまでもそう簡単には渡しませんよ」

「そうそう。サーラが欲しかったら俺と勝負して勝ってからにしろ。ノアール」

「カルロッテさん。伯父さん」


 アコダはカルロッテとは反対側に腰を下ろし、ノアールを威嚇する。私には両親は亡くなっていないけど、その代わり頼もしい伯父さん達がいる。それが泣きたくなるほど嬉しかった。


「あらあら。手ごわい強敵が現れたものね。ノアール」

「母さん」

「アコダに勝ったら、次は我だな」

「何でだよ。父さんは関係ないだろう?」


 ノアールが文句を言うと、ロージイが竜人の習性ですな。と、お──っ、ほっほっほ。と、特徴的な笑いをし、それにつられて皆が笑った。




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