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49話・卵で産まれた?



「私はアイオライト公爵の息子として、認知はされている」


 私の疑問が伝わったかのように、ノアールが答えた。それについてはロージイが教えてくれた。


「坊ちゃんは、生まれた時が特殊でしたからな」

「……?」

「卵で産まれたのじゃ。その生まれた卵を青金さまは孵された」

「じゃあ、ノアールさんはアイオライト公爵さまに育てられた?」

「その通りじゃ。しかし、青金さまにとって初めてのお子。卵から孵ったのは竜の幼体だった為、養育に手を焼いていてのう、見るに見かねてわしらが協力を申し出たのじゃ」

「ロージイ達は、私にとって半分育ての親みたいなものだ」



 ノアールがロージイ達に気を許しているのは、幼い頃に彼らに育てられたことが理由だったようだ。彼らがノアールを「坊ちゃん」と、呼んで、実の子のように気にかけているのにも納得した。ノアールは育児放棄されていたのではなく、手がかかって仕方なく、ロージイ達が協力していたらしい。そこで疑問が湧いた。



「竜人は卵で産まれるの?」

「いや、人間とそう変わりない。卵で産まれるのは特殊な事例らしくて……」

「坊ちゃんの場合は、母体を守ろうとしたのじゃろうて。父親は竜人でも相当力が強い。

力ある竜人の子は竜の幼体で生まれやすいが、そうなると母親を傷つけることになるから」


 私の質問に言いよどむノアールに代わり、ロージイが答えてくれた。そこへチムも加わる。


「坊ちゃんの幼体は可愛かったですよ。すぐに誰にでも懐いて。このノースデン山に住む者達は皆、坊ちゃんのことが大好きなのです」


 竜人の本体はアコダで体験済みだけど、幼体ってどんな姿をしているのかな? やはりあの竜体の子供版? みたいなもの? 


「ノアールさんの幼児期ってどんな姿だったのですか?」

「アコダの本性を幼くした形だ。大きさはロージイの乗っているハヤブサくらいだな」

 

 私の問いに答えたのは、青金さまだった。その隣には麗しき女王陛下がいる。



「あの頃は素直で良かった」

「そうそう。ノアールが可愛くて手元に置いて育てたかったのだけど、わたくしの側に置いて育てるには、周囲の理解を得られそうになかったから。泣く泣くこの人に預けたわ」

「それが寧ろ良かったのじゃ。卵から孵っても坊ちゃんは、すぐに人間の姿を取れなかっただろうしのう」

「そうですよ。ここで育った坊ちゃんは伸び伸び育って5歳になる頃には、自然と人の姿を取れるようになりましたが、王都のある王宮で暮らすのは窮屈だったかも知れませんもの」


残念そうに言う陛下を慰めるように、ロージイやチムが言う。ノアールが王宮で暮らすことが出来なかった事情は、何となく察することが出来た。竜人と人間との間に生まれた彼を守るためだったのだ。陛下の立場を守る為でもあったのだろう。人間である陛下が卵を産んだと知れたら、忌避されるのは当然のこと。恐らく出産の折にはかん口令を敷いたに違いない。そう言えば──と、思う。陛下の在位って今年で何年目だったかと。


「それでも坊ちゃんが生まれたのが、陛下が戴冠される前のことで良かったですよね」

「わたくしとしては、ずっとここで暮らしていたかったわ」


 チムの言葉が引っ掛かる。陛下はここに三人でずっと暮らしていたかったと言っていた。それまで陛下はここで暮らしていた? 青金さまとノアールと三人で?


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