勇者の目から光が消えた日
「これが、あなた達2人がここに来てから起きるまでに起こった出来事よ」
「…………そんな」
「事実だ。現場には俺が居た」
「…………あなたは?」
「俺か?俺は拳聖のラルフ。Sランク冒険者だ」
「……………拳聖」
「五大聖人の1人さっ」
「…………五大聖人?」
「ん?五大聖人を知らないのか?」
「…………うん、知らない。私とルナは少し前にこの世界に転生されたばかりだから」
「かぁ~、あの勇者は何も教えてないのか!まぁ、いいこの際だから覚えておけ。まず、拳聖の俺、そしてそこに居る、剣聖のエリス、斧聖のバロック、槍聖のジータ、最後に弓聖のエリシオン。以上がこの世界にいる五大聖人だ」
「……………覚えておく」
「それより、これからどうすんだエリス?」
「うるさいわね、今考え中よ!」
「おぉ、こわっ!」
「………ねぇ、本当にルナは助かるの?」
「そこは大丈夫だろ。シエナは嘘だけはつかねーからな。やり方は最悪だがよ…………」
「…………アギトはこれからどうなるの?」
「知らん!」
「……………」
「ま、まぁ正直、死ぬまで糞みてーな人生を送るんじゃねーか?」
「ラルフ様!」
「おぉ!そんなに怒るなよ、ユイ!顔がスゲーことになってんぞ!」
「誰のせいですか!それに、言い方ってものがあります!」
「はいはい、さーせん!」
「…………アギト」
「まぁ、こーなっちまった以上あいつの事は忘れるしかねーだろうな」
「…………そんな。私達のせいでアギトが…………」
「とりあえず、明日シエナがここに来てどう動くかにもよるがな…………」
「…………明日全てが決まる」
「下手な事はすんじゃねーぞ!あいつが、自分と引き換えに残した命だ、粗末にするなよ」
「…………わかってる。少しルナの所に行ってくる」
【ガチャ】
ステラは重い足取りで部屋を出て行き妹のルナの所へと向かった。
「ありゃ、だいぶやべーな」
「そうですね。ステラちゃんは私が見張っておきます」
「頼むわね、ティファ」
「任せて…………」
続けてティファもステラの後を追い部屋から出て行った。
「エリス。オメーの妹のティファも平気か?平然を装ってはいるが、あいつも相当病んでんな。何があった?」
「そうね、あなたには話ても問題なさそうね」
エリスは、ラルフにアギトとティファの出会いから今日までの事を伝えた。
「マジか………。この中じゃ、あいつが1番やべーんじゃねーか?」
「あの子なら、大丈夫よ…………。きっと…………」
「ならいいけどよ…………」
【屋敷の廊下】
「う………うぅ…………うぅ…………アギト…………どうして………」
舞台は変わり、ライザ近郊にあるジャッジメントの拠点に戻って来たシエナとアギト
「ここがジャッジメントの拠点…………」
アギトの目の前には天使の宴の3倍はあろう大きな城があった。門の前には、ジャッジメントのカラーである白い色をしたローブを着ている者が数名見張っていた。
「「「シエナ様、おかえりなさいませ」」」
「ごきげんよう、皆さま。見張りお疲れ様です」
「も、勿体なきお言葉…………で、そちらの方は?」
「あぁ、これ?新しい私のおもちゃ」
(もはや、『これ』呼ばわりか………。しかもおもちゃって)
「チッ!羨ましい奴め」
「何かおっしゃいましたか?」
「いえ何も…………」
「では、私はこれで失礼しますね、ごきげんよう」
「はっ!お疲れさまでした」
門番は、敬礼しシエナを見送る。
「さて、アギト。これから私の部屋へと来ていただきます」
「部屋に?屋敷でこき使うんじゃないのか?」
「まさか、そんな事は致しませんよ。うふふふふっ。さぁ、行きましょう」
「あぁ…………」
そして、日付は変わりシエナはアギトと複数名の護衛を連れて、再びルナを回復させるために天使の宴の屋敷に来た。
「皆様、ごきげんよう………あら?今日はエリスにユイも、それからティファも居るのね」
「えぇ、昨日は立て込んでいて出かけていたのよ。誰かさんのせいでね!」
「えっ?それは、私に言ってるのですか?」
「当り前じゃない!全部、あんたが仕組んだことなんでしょ!ステラ達に刺客をおくり、私達をこの屋敷から遠ざけてる隙に、アギトを奪うなんてこと!」
「「「なっ!」」」
「何の冗談かしら?私、知らないわ?私が、アギトが大切にしている子達を襲わせて、その報復にあなた達が向かってその隙をついて、アギトに無理難題を押しつけて無理矢理、私のおもちゃにした事なんて」
「貴様――――!」
シエナの話を聞いて真っ先に怒りを表したのはステラだった!
ステラは、シエナに飛び掛かり殴ろうとするが、そこにアギトが立ち塞がる
【ズザッ】
間一髪の所でステラは止まり叫ぶ。
「アギトどいて!」
「……………………」
「今の彼に何を言っても無駄よ?それよりいいの?早くしないとその子死んじゃうわよ?私は別にその子が死のうが生きようがどちらでもいいんだけど」
「止めなさい、ステラ!」
「そう、いいこね!早くしないと可愛い妹さん死んじゃうものね」
その場にいた天使の宴のメンバーは、シエナが言うがままに道を開ける。そして、シエナは約束通りルナにエクストラヒールをかけた
【スキル エクストラヒール】
ステラの時と同じく、ルナの全身が緑色に包まれ、見る見るうちに傷口が回復していく。
「はいお終い。じゃ、私達はこれで帰るわね」
全てを終えたシエナはそそくさと帰ろうとするが、それをエリスが止める。
「待ちなさい、シエラ!」
「な~に?まだ何かあるの?」
「私が、アギトの代わりにあなたの下に就くわ!」
「「「!!!」」」
「い、いけません、エリス様!」
「そうよ、お姉ちゃん!それはダメよ!それにこんな奴、今ここで皆でかかれば殺せるわ!」
「あら?皆さま何か勘違いしているようね?」
「勘違い?」
「えぇ。とーっても大きな勘違い」
「何よ…………」
「ここで、私を殺せばアギトも自動的に死ぬのよ?」
「「「なっ」」」
「まぁ、知らないわよね。この魔法?術?まぁこの際どっちでもいいか!私しか使えないものだし…………」
「アギトに何をしたのよ」
「皆さんは、禁術って知っているかしら?」
「えぇ、多少なら」
「まぁ、色々あるわよね。死者を甦らさせる禁術、過去を書き換える禁術、異界の者を呼び出す禁術、天候を自在に操る禁術、色々あるわ。それでね、私は遂に禁術を使えるようになったの!どう?すごいでしょ!」
「なっ、何ですって!ま、まさか…………」
「正解!それをね、アギトに使ったのよ!うふふふっ!」
「何て事を…………」
「…………どんな禁術を使ったの?」
「知りたい?ステラちゃん、もしかして禁術に興味あるの?」
「……………ない」
「あらそう。残念」
「で、何を使ったのよ?アギトに」
「それはね………精神を支配する禁術!」
「な、何だと…………」
「これを使えばね、かかった者はみ~んな私の言うことを聞くの!どう?すごいでしょ!これで、アギトは一生私の奴隷よ!私の言う事なら何でも聞くの!肩を揉んで~って言えば、揉んでくれるし、死んで~って言えば死ぬし」
「「「…………」」」
「あら?引いちゃった?ついでにかけておいたのよ!私が死んだら、アギトもどんなことをしてでも死になさいって!」
「……………下衆が」
「うふふふっ。褒め言葉として受け取っておくわね!それとね、私ね壊すのが好きなの」
「壊す?」
「そう!人を壊すことよ!」
「どーいうことよ!」
「アギトは、勇者でしょ?その勇者が壊れたらどうなるのかなって!まずは、心から折ろうかなって昨日から実験してるの!」
「どんな実験よ…………」
「聞きたい!?聞きたい!?じゃ、特別に教えてあげる!昨日ね私、アギトと寝たの!もちろん、ただ寝たとかじゃなくて、身体の関係を持ったって意味でね!えへっ!」
【ブチッ】
誰かの血管が切れる音が部屋の中からした。部屋の中で、プルプルと震える人物…………。ティファだ。
「それでね、今日も帰ったらすぐにするんだけど、まずはアギトの頭の中をね、変態猿野郎にしようと思うわけよ!ほら、うちのクランって、神官の女の子が多いじゃない?そんでもって、アギトってなかなかイケメンでしょ?もう、狙ってる子も居るのよ!でね、当然、毎日必ず一回はわたしと寝て、空いた時間はずっと他の子達と寝させるわけ!それで、猿みたいにずーっとしてなきゃいられない頭にするの!そうすれば、いずれ性欲猿勇者の誕生!ってこと!1日中、それしか考えられなくなるぐらいに壊すの!どう?いいと思わない?」
再びこの話を聞いてたステラがブチギレた。
「殺せー!今すぐ、私とルナを殺してアギトを解放しろ!」
「えー!あなた達双子を殺すのは構わないけど、こちらは約束守ったんだから、アギトは渡さないわよ?何なら、この瞬間にもアギトを殺してもいいんだけど?他にも、禁術の実験体いくらでもいるし」
「……………くっ」
「うふふふっ、お利口さんね。じゃ、そんなわけで私達は帰るわね」
「クソが…………」
「さー、アギト帰るわよ!今日はどんなプレイをする?楽しみね?じゃあね、負け犬の皆様」
シエナ達は高笑いをしながら部屋を出て行った。部屋に残っている天使の宴のメンバーやラルフ達は誰一人として言葉を発せず時間だけが無情にも過ぎて行った。
To Be Continued…
――第一部・完――
第二部 シエナの野望の章へと続く。




