CASE:019 誰も見ていない 報告書
東京怪異捜査録 − 警視庁特対室CASE:XXX −
警視庁 特異事案対策室
特異事案報告書
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【案件番号】
T-2012-013
【事案名称】
未自覚恩寵保持者を対象とした猟奇連続殺人事案
【分類】
恩寵保持者型三類
【発生日】
2012年6月4日
【発生地点】
東京都内及び周辺市街地
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1. 概要
本件は、満月周期で発生していた心臓欠損を伴う猟奇殺人連続事案の加害主体が判明・制圧に至ったものである。被疑者は恩寵『隠蔽』を有し、視認・聴取・痕跡採取を著しく困難化させる能力を用い、複数の殺害及び遺体損壊を行っていた。
被疑者はSNS等を利用し、未自覚の恩寵保持者と思われる者を探索。投稿内容や行動記録を解析するとともに、自身の恩寵を用いたストーキングにより対象を特定。その後、拉致監禁し、恩寵を奪うという妄執に基づいた儀式的要素を伴う殺害を試みていた。
なお、捜査の結果、当該事案の被害者の大半は恩寵保持者ではなく、被疑者の一方的な誤認に基づくものであったと推測される。また、被疑者は当事案以外にも「隠蔽」を利用した窃盗、不法侵入、盗撮などを繰り返していた。
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2. 初動報告
2012年6月4日 18時42分、当室捜査官・葦名透真、久世灯里両名が監視カメラの解析中、被疑者である隠岐祐司に類似する特徴を有する人影の不可視化挙動を確認。同日19時05分、当室捜査官・南雲美優のGPS信号が住宅街経由で廃アパートにて停止。即時、当室捜査官・轟雷蔵、葦名透真両名が現場急行、既に南雲美優により制圧されていた被疑者を確保。
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3. 発生条件
満月当夜
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4. 特性
恩寵「隠蔽」:光学的不可視化、音響遮断、痕跡消失効果を発現。精神的未成熟により暴走しやすく、持続中は外界感覚の一部も自閉傾向を呈す。
獲得経緯:高校在学中、当時受けていたいじめの一環として深夜に校舎へ侵入させられた際、都市伝説型怪異「四次元ババア」と遭遇。生存帰還の代償として「隠蔽」の恩寵を獲得。能力は当初から高い隠匿性を有しており、行動証跡の消去に長ける。なお、被疑者に対しいじめを行っていたグループのうち三名が事故死しており、被疑者の関与が疑われる。
犯行動機:自己顕示欲および能力強化願望。猟奇的儀式は模倣・混合的で、儀式的効果はなし。
犯行手口:SNS等を利用し未自覚の恩寵保持者を抽出。投稿内容等から行動範囲を推定し「隠蔽」による尾行・行動監視。接触・急襲による拉致後、廃建造物等での監禁・臓器摘出試行。
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5. 対処方法
「隠蔽」発動中は本人の意識外の干渉(例:不意の動体への接触、水たまりの波紋)等の間接検知が有効。解析系恩寵による検知の有効性は不明。
被疑者拘束後は、能力暴走阻止のため迅速に恩寵剥奪措置を実施。
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6. 現在の状況
被疑者は恩寵剥奪済み。所轄署にて通常の刑事手続に移行。精神・身体共に中等度損傷あり、継続的医療措置下。連続殺人事件の未解決分、その他余罪については捜査を継続中。都市伝説化した事件情報は沈静化傾向にあるが、一部ネット上に残存するため監視を継続する。
備考:
本件を契機に、轟雷蔵主導による南雲美優への【H.E.I.プロトコル-γ】を同年6月11日付で適用開始予定。
【報告書作成】
特異事案対策室 捜査官
葦名 透真
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