第五話 安息
「つまり、どういうことですか?」
「元々、いざというときのために用意してあったものだ。魔法紙とか、隠れ家とか、な」
困惑して詰め寄ってくる聖女様にそう答える。
「魔法紙? ……じゃああれはテレポートですか!?」
驚きを隠さず、疑問をぶつけてくる聖女様。
「まあ、そうなる……なります」
答えている途中で、敬語を忘れていることに気づいた。
唯一無二の存在である聖女は、十字架教のなかでも枢機卿に次ぐ地位を持つ。下手をすれば不敬罪で処されかねない。
「敬語は必要ありません」
「え?」
さっきまでワタワタとしていた聖女様は落ち着きを取り戻していた。
「みたところ、そっちがあなたの本来の口調でしょう?」
「ですが……」
どうやら気づかれていたらしい。聖女様は勘も鋭いようだ。
「ほら、戦闘のときとか……」
なおも続ける聖女様。
「ですから、敬語は必要ありません。それに、我々は逃げているわけですから、勘づかれる要素は少ないほうがいいでしょう?」
最もらしい理由をこじつけてまで、俺に敬語をやめさせたいみたいだ。
「なるほど、一理ある」
ここは俺が折れておくとするか。ただ、それじゃ不公平だよな?
「そうでしょう? だから今から敬語は禁止です!」
「聖女様もな」
無邪気そうな笑顔を浮かべる聖女様に言ってやる。
「え!? わ、私もですか!? それはちょっと、こまるというか? なんというか……?」
虚を突かれたのか、照れを含む慌て顔をしている。
……ふむ、和むな。
「じゃ、そういうことで」
「は、はいっ! がんばりますっ!」
そういうことになった。
なかなか執筆の時間が取れず、短くなってしまいました。すみません。




