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 薄れゆく意識の中で、僕は右手に握りしめた細い刀をひゅんひゅんと振り回しながら歩き、山賊の方に近づいていった。

 山賊は、僕の異常なまでの雰囲気に飲まれていた。

「な、な、なんだこいつは。さっきまでとは雰囲気がちげぇじゃねぇか!に、逃げるぞ!」

 山賊二人組は、そう言って図書館区域の方へと逃走していった。

 刀を振り回しながら図書館区域の方へと山賊を追って僕が歩き始めた、その時だった。

「待ちなさい!」

 ユキが、僕に大きな声で怒鳴りつけた。僕は、ユキの方を向いた。するとユキは僕の方に何かを投げつけてきて、気がつくと僕の意識は薄れていった。


 カクを睡眠ボールで眠らせたユキは、カクの方へと走っていき状態を確認した。

「大丈夫、致命傷にはなってないはね」

 そして、カクの傍らに落ちていた細い刀を元の巨刀の入れ物に戻した。すると、巨刀はシステマティックに動き、最終的にはカクが持っていたサイズにまで縮小した。

 ユキはそれを首からぶら下げ、カクを背負った。

「お、重いわね」

 予想以上の重さにユキは苦戦するものの、図書館区域に急がないといけないという意識が働き、歯を食いしばって図書館区域まで歩き始めたのだった……


 痛い。

 体の痛さで僕は目を覚ました。

 脇腹の辺りが、かなり痛かった。痛い箇所を自分で見たが、骨折とはいかないものの、紫色にくっきりと染まっていた。

「あら、起きたわよ」

 見知らぬおばさんが、部屋に入ってきて、僕の寝ている側で声を出した。

 しばらくして、部屋にユキが入ってきた。

「おはよう。体は大丈夫?」

「痛いけれど大丈夫」

 僕は、若干の無理をして返事をした。ユキは、ほっと一安心したようだった。

「ここは、どこ?」

「ここは、おばちゃまのところよ」

「おばちゃま」

「そう、おばちゃま」

 おばちゃまといえば、僕がこの図書館区域に来た理由でもある。このおばちゃまに届け物があってきたのだ。おばちゃまに届け物をするために、こんな体を痛めるとは思ってもいなかった。自分の元いた世界で、宅配便を働く人たちが連日連夜モンスター達と戦っているかもしれないという想像は僕にはできなかった。

「ところで、ティムは」

 そう、ティムである。山賊達に捕らえられ血だらけになっていたはずだ。

「ああ、ティムならさっき部屋を出て行ったわよ。ちなみに、あのあと、図書館区域の方にあなたを担いで行っている道中でティムを見つけたの。ほんと人騒がせな猫よ。【蝶々を追っかけていたら、みんなとはぐれてしまった】だなんてね」

 わけのわからない理由をティムは、話したらしい。

 まだ短い間の付き合いではあるが、きっとティムには他の理由があったのだろうけれど、ユキを心配させないように彼なりに嘘をついているのだろう。人を傷つけない嘘をつけるのがティムである。

 僕は、部屋の中を見回した。これまた不思議な部屋である。本棚が部屋の壁面という壁面に敷き詰められており、本棚の中にも本がいたるところに収納されていた。

「ここが、図書館区域の本館の第14分室って場所よ」

 さきほどから頻繁に会話の中に登場しているおばちゃまが僕に言った。おばちゃまは大量の本を持って歩いていた。

「この図書館区域はね、分室が15箇所あるのよ。それのうちの14番目の分室が、あなたが今いる場所。14分室は本はたくさんあるのだけれど、利用されている方法としては、仮眠部屋としてしか利用されていないわ。図書館区域で働く人々しかここは利用しないし」

 おばちゃまは、持っていた本を僕が寝ているベットの横の小さなサイドテーブルに置いた。置かれた本の背表紙を僕は見たが、大体がアルファベットでタイトルが描かれたものであった。

「ユキの道中のナイトお疲れ様。ちゃんと紙は受け取ったから安心なさい」

 そういって、おばちゃまは僕にわら半紙を見せてくれた。【フリーマーケットのおしらせ】とそこには書かれていた。

「あなたのおかげで、図書館からもいらない古書を他の人に売ることができるわ!」

 おばちゃまは、嬉々としてよろこんでいる。僕はその姿を見て、苦笑いをした。こんなことのために僕は大怪我をしたようだった。

「とりあえず、お水でも飲みなさい」

 ユキは、グラスに入った水を僕に差し出した。僕はそれを一気に飲み干した。

「あと、あなたの怪我がある程度回復したら団地区域に戻ることにしたわ。その感じだとあの山道を戻るのはちょっと厳しそうだし。何か読みたい本とかあったら持ってきてあげるし、ある程度、体が治ってきたら、自分で図書館区域を歩くと良いわね。リハビリ」

 ユキはそう言って、部屋を出て行った。僕はその後ろ姿を見送った。おばちゃまも「ここの本はしばらく置いておくわ。読みたかったら読んで」と言い残して出て行った。

 あいにく、アルファベットの文字で書かれた本は僕は読めない。英語というジャンルは苦手である。

 いや、ちょっと待て。本当に英語なのだろうか。

 僕は、恐る恐るサイドテーブルに置かれた本を手に取り、本を開いた。


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