8- リンゴ
「師匠、どうします? この後」
「師匠じゃなくていいよ。 名前で」
「わかりました。 ――エルガ、どうします、この後は」
「封印が溶けるなんて思ってなかったから何も考えてなかった。 私は君について行くよ」
「はい。 って目が!」
「目?」
エルガの深紅の目が黄金の目に変わっている。
そういえば耳も普通の耳から少しとんがった耳に変わっている。
「あぁ、これが神が堕落したときに起きる現象。 人ならざる者へと姿を変える。 と言っても少しだけだけど」
「なるほど、それが堕ちるってことですか」
記憶を何とか呼びおこす。
確か耳がとんがった種族は……
「エルフですかね?」
「さぁ? 3万年のうちにこの世界がどう変わったかわからないし」
「そうですか。 ――俺はここから出ていろんなことを知りたいと思います。 【万物を見通す眼鏡】を作った時に痛感しました。 生き物だってぶっちゃけ竜しか見てませんよ?」
「――偏ってるねぇ。 私でも狼神とかは知ってるけど」
何か違う気がしたがまぁいいか。
「出るためには色々準備をする必要があります……その前にですよ」
俺はエルガをまっすぐ見つめる。
「な、なにさ」
「何か隠してますよね?」
「――ハイ」
さて、尋問のお時間です。
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「というわけで……改めて。 創造と破壊を司るものにして、全ての神の最高上位者。 神銘は創造と破壊。 破創神エルガ」
「何で黙ってたんです?」
「――嫌われたくなかった。 今思えばどっちみち変わらないだろうけど」
「でもですねぇ……」
神能【契約の2対】によって使えるエルガの権限は創造のみ、破壊は使えない。
因みに指輪は左薬指にくっついた。
外れないし魂に刻み込まれてる感じがする。
「破壊の権能は全てこの槍が持ってるよ。 権能【破壊の槍】として分けたからだからだね」
「そうだったんですか」
「私の創造は封印に使われてるし君の創造も私の封印のせいで使えない。 【大地創造機】が壊れたとはいえしばらく時間がかかりそうだね」
「でも動けるようで良かったです。 ――それじゃ、出るための準備と行きますか」
「ねぇねぇ、この後はどうするの? 人間の世界に行くの? それとも魔界?」
「それなんですけどね。 エルガの言う魔界? に行こうと思います。 人間の世界じゃエルガは部外者になる。 それか奴隷の扱いです。 ――俺はにそれは許せません」
エルガの言う魔界というのはおそらくは魔族領のこと。
魔族領ならむしろ部外者は人間の俺になる。
俺が部外者となるならその障害は俺が取っ払う。
「何度も言うけど私は君について行くよ! 絶対に楽しい!」
「わかりました。 それじゃあ準備しないといけませんね」
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「準備できた?」
「ええ。 この神器を作っておいて良かったですよ」
【際限無きカバン】にひたすら自分の物を詰め込むだけで引っ越しは完了。
神器も融合しちゃったので【自動攻撃衛星】を始めとして色々作った。
というか【自動攻撃衛星】と便利系神器以外はほとんど新造だ。
「エルガ、神器の作り方うまくなってません?」
「願いがどんなものかわかったからかな? 超神器にはできないけどね」
エルガもいつの間にか白いワンピースに赤いマントを羽織って槍を背負っている。
エルガ以外には開かない隠し場所があったらしい。
引きずっていた髪もいつの間にか腰の長さに切りそろえてある。
「それじゃあ行きますか。 【道を示す物】」
【道を示す物】によって地面に光点が浮かび上がる。
示す場所はここからの出口。
「しっかし……周りが落ち着いていますね。 溶岩も固まりそうだ」
「【大地創造機】が無くなったからこの火山も動きを止めたんだよ。 今動いてるのは残り火だね」
「なるほど……確かに鉱石も減っていますね」
この辺りにはオリハルコンやミスリル、宝石なんかもあったのに消滅している。
ボーデンアシュクが俺を倒すときにいろんなものを取り込んだんだろう。
「しっかし遠いですね」
「3万年間山が成長し続けたからなんだけど……こっちの方向は……?」
「どうかしました?」
「何でもないよ?」
「そうですか」
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やっと光が見えてきた。
太陽光なんて本当に久しぶりだなぁ……
「ってあれ? 外じゃない?」
どうやら山の頂上に空いた湖のほとりらしい。
「何というかオーラがすごいですね。 洗われるようです」
「精霊たちのおかげだね……この辺はあれのせいで精霊が集まりやすいの」
「あれ?」
エルガが指さした場所は湖の奥深くに根付き湖を影にするほどの大木。
「私が植えた世界樹。 【大地創造機】を守る外殻としてね。 今となっては精霊たちの憩いの場になってるみたいだけど」
「ここって何なんです?」
「3万年前、私の隠れ家があった場所。 家はもうストスに粉みじんにされてるけどね」
「そうですか……お、実ってるじゃないですか」
神器【追尾する弓】を取り出して木の実の根元を撃ち抜いて地面に落とす。
「食べます?」
「――うん!」
そういえばだけどこの実、俺が最初に食べたリンゴだ。
ここの木の実だったのか。
「――あれ? 何で泣いて……うぅ……」
「美味しいですね、このリンゴ」
「――うん」
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