第3話 渋滞
朝7:00、目覚まし時計がけたたましく金属音を鳴らす。
色んな目覚まし時計を試した結果この耳をつんざくような金属音が一番目を覚ましてくれる。
レンタカーの受け取り時間は8:00にしている。
一番目の目的地である福島県磐梯までの距離は調べていない、地図で見る限り結構遠そうなので途中仮眠を取ることを想定して朝から出ることにした。
どうにか着替えて数枚の服と下着をリュックサックに入れて外に出た。
朝日が眩しい。
レンタカー屋さんは隣駅にある。
移動だけなら自転車が早いが今回は旅行である。
軽自動車に自転車は積めない。駐輪場も調べていない。
私は徒歩と電車で向かうことにした。
途中のコンビニで朝ごはんを買う。
パン3つに500mlペットボトルのコーラ。
せっかくの旅行なので奮発してしまった。
いつもはオレンジジュース一杯のみで仕事が終わって帰りがけに買うカツ丼弁当以外飲み食いはしない。
パン3つにコーラなんて我ながら贅沢をしていると思う。
疲れている時はとにかく食うことだ。
カロリーが身体を癒してくれる。
駅に着くまでに食べ終わり電車に乗り隣駅に向かう。
休日でも電車はそれなりに人がいる。
座席に座ることなく立って過ごす。
約束の時間にレンタカー屋さんに到着し手続きを済ませて車を待つ。
待っている間立っているのがしんどくなり地面に座り込んでしまう。
体育座りをして頭を膝小僧に押し当てて溜息を吐く。
「大丈夫ですか?」
店員さんが心配そうに顔を覗き込んでいる。
これから旅行に行こうとする人間がしんどそうに座り込んでいたらそう尋ねるだろう。
しかもこれから行うのは車の運転である。
一瞬の油断も許されない。
「つい先日死亡事故がありましたので体調がよくないときは仮眠を取ってくださいね。」
店員さんからの優しいアドバイスに頷く。
車のキーを受け取り車に乗り込んでアクセルを踏んだ。
東京の道は混んでいると思う。
信号は多いし路駐も多い。
その上車の数も多いときた。
どうにか高速道路に乗ったはいいが渋滞にはまり牛歩の歩みである。
運転に集中しているおかげかハンドルを握ってから体全体を覆っていた疲労感が和らいだように感じる。
これは感じているだけで実際に疲れが取れているわけではない。
油断は禁物である。
ナビの指示に従い高速道路に乗ったが渋滞に嵌ってしまう、牛歩の歩みで車は進んでいく。
渋滞は酷く東京を脱出できたのはレンタカー屋さんを出てから2時間半後だった。
どうやら渋滞は料金所のゲートで発生していた。
事故かな?
と思い自分の車がゲートをゲートを通過した時に見る。
ゲートの先、料金所で一時的に広くなった道路の先に通常の高速道路が続いている。
その3車線しかない道路に料金所をくぐった多くの車が我先にと進もうとしていた。
当然ながら辺り一面からクラクションの音が鳴り響いている。
無理やり横から侵入しようとして横入りされた車が急停車する、その後ろに並んでいる車たちもブレーキを踏み歪な停車の列が作られる。
我先に行こうとし譲り合いの精神を忘れた人々によって渋滞はさらに酷くなっていた。
私は運よく3車線の真ん中に続く正規ルートに並ぶことができた為、牛歩ではあるが無理やり割り込むことをせずに進めそうだった。
もう少しで3車線に絞られるところに来た時、右目の視界の端に白のワゴン車が映った。
私と同じように牛歩の歩みでゆっくりと進んでいる。
私の右車線なので一番速度の速いレーンである。
3車線に絞られた先の道路では車がビュンビュンと速度を上げており渋滞とは無縁なようである。
早くそちらに行きたいと思い前方に意識を集中していたがやたらと右側の白のワゴン車が目に入る。
何か段々と近づいてきてないか?
隣のレーンなので近づいてきているのは自然なことなのであるが何か違和感がある。
牛歩の歩みなので脇見運転をして前の車にぶつかってはいけないと思いアクセルとブレーキをこまめに調整しながら進んでいる。
正直運転に慣れていないから前方だけを見ておきたいという思いが強いが、そう考えている最中にも隣の白のワゴン車が近づいてきているように見える。
もう視界の端にちらつくというレベルではなくなっている。
私は一瞬だが右側に振り向いた。
そこには白のワゴン車の奥にもう一台車が見えていた。
3車線の道路で私が真ん中のレーンにいるのだから白のワゴン車の奥に車があるわけがないのである。
あまりの現実離れした光景に呆気に取られていると白のワゴン車を運転する男性と目があった。
私よりも年上に見える。目をカッと開いてこちらに迫ってきている。
彼は私のレーンに入ろうとしているのだ。
せめて指示器のランプでも点滅させてくれていたらもっと早く気が付いたかもしれない。
目力だけで私に訴えてきても私はエスパーではない。
彼の車をよく見ると中央と右端の車列の間にいた。
このままいけば彼はどちらのレーンにも入ることができずに止まるだろう。
彼も必死なのだ。
私は急ブレーキを踏んで止まり彼を自分の前に割り込ませることにした。
当時はサンキューハザードとかもない時代である・・・なかったと思う。
その車は何事もなかったかのように私の前を走っていた。
そして白のワゴン車は中央のレーンに入り道路が3車線に絞られ通常の高速道路になり渋滞が解消された瞬間に猛スピードを上げて私を置いて行った。
2時間半かけてやっと東京の境を越えることができた。
それから先は早かった。
速度を上げるタイプでないので中央車線から左車線に移り車を走らせる。
途中サービスエリアとかで休憩しようかと思っていたが想定外の渋滞により遅れているという気持ちがあった為私は休憩をとることなく運転を続けた。
ただの1人旅である。音楽を聴くこともなければラジオも聴かない。
景色を見る余裕もない。
誰かとも会話することない、エンジン音をBGMに私は車を走らせた。
この時気が付いたのは軽自動車で速度を上げるとエンジンがまるで爆発でもするんじゃないかと言うくらいの音を上げるのだ。
音というよりかはエンジンの叫び声である。
そんなにも大きな叫び声を上げて走っているはずなのに中央車線、右車線を走る車に何台も抜かされていく。
この軽自動車だけの問題なのか私には判断つかなかったが車の名誉のために車名は伏せておく。
爆発しないよな・・・?
と思いながら高速道路を北上しながら最初の目的地である福島県磐梯を目指した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




