第71話 「灯の戻る町」
町は、生まれ変わったようだった。固く閉ざされていた家々の戸が開け放たれ、通りには人の声が戻っている。四人の姿を認めた誰かが叫び、みるみる人垣ができた。「目を覚ましたんだ! 眠っていた者が、次々と!」。薬草店へ駆けつけると、ミラが奥の部屋から飛び出してきた。その後ろで、青白かった少女が――彼女の妹が、寝台の上に身を起こし、きょとんとした顔でこちらを見ている。「姉さん、私、どれくらい寝てたの……?」。ミラは妹を抱きしめ、声を上げて泣いた。
その夜、町はささやかな祝いに沸いた。フィーナは町人と杯を交わし、ヴェルナは子供たちに角を触らせてやり、テオは町医者から淀みの説明を求められて質問攻めにあっている。ノアは輪の少し外から、その光景を眺めていた。新しい瞳には、町中の家々に、命の灯が一つ、また一つと点り直していくのが視える。まるで、消えかけていた星空が、静かに蘇っていくようだった。
宿の窓辺で、ノアは一人、東の夜空を見上げた。窓が地図を開き、静かに告げる。「残る封印――三つ」。次の印は、遥か東の果てで、鈍い青に明滅していた。ふと、あの黄金の王の最期がよぎる。深々と頭を垂れた、あの姿。胸の奥の心臓が、答えの出ない問いに、とくりと疼いた。次の守護者もまた――僕を、知っているのだろうか。




