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第10話 「最下層へ」
短い休息のあと、二人はさらに地の底を目指した。階層を下るごとに空気は重くなり、岩肌には焼け焦げたような黒い筋が刻まれていく。何かが、ここを通るたびに大地を抉ってきた証だ。
最下層が近いことを、ノアの窓が告げていた。地図の赤い点はもう一つ――巨大な反応が、最奥でゆっくりと脈打っている。歩を進めるごとに、地響きが足元から伝わってきた。ずん、ずん、と。まるで山が呼吸しているかのようだった。
やがて二人は、見上げるほどの石の扉の前に立った。フィーナは剣を握り直し、ノアを横目で見る。「ここから先は、戻れないかもしれない。怖いなら、今のうちよ」。ノアは首を横に振った。怖くないと言えば嘘になる。だが、この扉の奥にこそ、失った自分の最初のかけらが眠っているのだ。
ノアが鋼の手で扉を押すと、地の底から、世界を揺るがすような咆哮が轟いた。




