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ホームレス王子  作者: 斉凛
王子からの脱却…転落?
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 勉強には半年時間がかかった。むしろ理解するのに半年ですんだ……というべきかもしれない。国も文化も法律も違う。しかし……王子として仕事をしてきた経験は、国が違っても役立つものなのだと実感した。

 私は車が好きだし、自分で作れるようになったら嬉しい。だが……向いてないと言うなら、作る事が得意な人間を支援する事で、自分が役立つ方がいいのではないか……そう吹っ切れてきた。


 知識を身につけた上で、社長の許可をとって帳簿や会社の経営について調べた。これも1ヶ月以上かかかった。会社のパソコンでネットで調べたり、色々出向いて調査もした。そして自分なりに考えた意見書を作成し、武田社長に渡した。


「現在の経営の無駄の削減、資材調達方法の変更によるコストカット、国の補助金で活用できそうなもの。それらをまとめてみたら、これくらいの資金的余裕ができるかと思います」


 意見書に目をとおした武田社長の驚きぶりはすごかった。何があっても動じない、いつもの落ち着いた表情が抜け落ちて、驚きのあまり意見書を凝視したまま固まった。そのあと食い入るように何度も見返して……それから声を出して笑った。


「まさか……ここまでの事を、期待してなかったし、こんなにも早く結果をだすとは思わなかったよ。……いや……恐れ入った。ありがたい。実にありがたいよ」


 経営者である武田社長の目から見ても、妥当な意見書になったのか…と、ほっとした。そして自分でも役に立つという自信にも繋がった。


「これだけ資金的余裕ができるなら、新たな設備投資も……」

「その事なのですが……1つ質問してもいいですか?」


「何だね?」

「うちは小さいながら、取引先が大手自動車メーカーが多いようですね。それはうちが他の会社にない技術力があるということでしょうか?」


 武田社長はその質問に嬉しそうに頷いた。熟練職人の神業的腕と、他社に真似できない画期的な技術……それについて語る時、武田社長の目には誇りが宿っていた。

 他社には負けない! という気概があったのだ。


「その技術……は、特許がとれるくらいですか?」


 そう私が言ったら、武田社長は大きく目を見開いた後、少しだけ言葉をつまらせてから、口を開いた。


「特許が取れる……くらいに、画期的な技術ではある。ただ……現実的に特許は難しいよ。あれは時間も初期投資もかかるし……それに……」

「大企業に潰される弱みがあるから……ですか?」


 特許をとって技術を独占しようとすると、大概大手企業の横やりが入るという事は聞いていた。時間より費用よりそちらの方がよほど厄介なのだろうという事も察していた。


「不法滞在者の外国人を雇っている事は違法ですからね。そこを突かれればあっという間に潰される」

「その通りだ。だから……うちでは無理だよ」


 自分の読みがだいたい当たっていた……であるならば……私は用意していた追加の意見書を差し出す。


「思い切って私以外の外国人労働者を全員退職させて、その代わり正規の日本人を雇ってみるのはどうでしょう? 退職する外国人には充分な退職金を払ったり、別の就職先を斡旋すれば、不満は出ないと思います。この会社でしかダメだ……という人も私以外はいないようなので」


 二枚目の意見書には、最初の意見書で提示した内容の結果、できた余剰資金を元に、外国人労働者の退職金に使った場合の試算もまとめてある。

 いきなり全員は無理だし、新しい日本人労働者と少しづつ入れ替えなければ、工場も立ち行かない。だからかなりの時間をかけたスケジュールになった。


「……確かに……できれば違法な外国人労働者より、日本人が雇える方がうちの会社としてはよいけれど……うちの給料は安いし、最近の日本人は雇ってもすぐ辞めてしまうからな……」


 他に仕事が無い、どうしても金を稼ぎたい。そういう外国人の方が辞めずにしっかり働いてくれる……そう武田社長は言った。長年会社経営をしてきた悩みなのだろう。


「確かに短期的に見れば外国人労働者の方が離職率は低いかもしれません。しかし彼らは日本に永住する気はなく、皆いずれ帰国したいと願っている。長期的に見れば日本人を100人雇って1人しか残らなくても、その1人が定年まで働いてくれる方が、良い人材が育つと思います。この会社を支えているのが熟練技術者の技なら、後継者の教育は欠かせないのではないでしょうか?」


 痛い所を突かれたように武田社長はため息をつく。そう……今の熟練技術者達も、年々高齢化している。いつまでも後継者を育てずにいれば、いずれ会社は立ち行かない。

 1人の立派な技術者を育てるのは、資金面、労力面、時間面、あらゆる面で困難はつきまとう。それでも……いつまでも先送りできる問題でもないのだ。


「わかった。エドガーの意見……検討してみよう。しかし……君はこの会社に残る気かい? 君を雇ってる時点で、うちが違法な事に変わりはないはずだが?」


 すでにその問いに対する答えは用意してあった。私の答えを聞いた社長はしばらく考えさせてくれ……と言って、今日この話は終わった。

 その後武田社長は1ヶ月悩んだ末に、私の提案を全て受け入れてくれた。長く、困難な道のりでも、自分を信用してもらえた事が嬉しかった。

経営も特許もよくわかってないし、ろくに調べてもいないので、かなり無茶苦茶で穴だらけの話なのですが…

この回以外で経営の話がでてこないのに、この回を書く為だけに、取材・資料探しに何ヶ月も更新を止めるわけにも行かなかったので……はい、かなり無茶苦茶な書き方を…

信じないでください…(土下座)

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