1.宿命
人生において大切なことは幸せだったか不幸せだったか、この二つに帰結すると思う。
そしてそれは生まれ持って決められたものだと僕は信じる。
それは宿命という言葉を意味してると思う。
しかしこの際、幸せとか不幸せとかそんなことはどうでもいい。
宿命はそんなちんけなことを言うものではない。
もっと深くて果てしないものだ。
動物とか生き物にもこれは存在するが、僕は科学者ではないし知ったこっちゃない。自然愛好家でもないし。
僕は人間だから人間の宿命だけをこの際考える。
この世界には色んな人間がいる。簡単に言うとこれが宿命なのだ。
つまり僕たちはみなそれぞれ与えられた役を全うしているということだ。
貧乏な家庭で育った人が大人になって大金持ちになる。東大に行くような秀才。派手なものではこうだが、一般人の話になったらキリがない。
そして彼らは人生の終わりに、フィナーレにこの宿命に気づくのだろう。
自分はこういう役だったな、と。
そう、人間は誰しもが役をもっているのだそれは社会において。
社会と言う莫大な規模の舞台で無数の人間が与えられた無数の役を無意識に演じているのだ。
それはいいことばかりじゃない。
残念ながら不幸なやられ役が存在する。
それが多分僕なんだろうな。
早春の朝、締め切ったカーテンから陽光がわずかに部屋に入る薄暗い六畳間に置かれた布団の中でエースは考えていた。
27歳、無職、家族は居ない。完全に一人だった。
エースは覚悟を決めた。
やられ役の自分は今までもこれからも不幸が待ってるだろう。
しかしそれが僕に与えられた役目なんだ。宿命なんだ。
それを受け入れる覚悟が決まった。
「よし、早速ハローワークに行こう」
エースはスマホで検索した求人票の一覧を指で素早くスクロールした。




