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水槽少女展  作者: 下呂娘
第三章 水槽の外で名前を呼ぶ
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14/17

展示番号13号 『検疫箱、外へ出る前の魚たち』

 アクリルの小さな音が、搬入口の床に跳ねた。


 クマノミのキーホルダーは、白線の手前で止まっていた。落ちた拍子に金具が少しだけ開き、透明な腹の部分がコンクリートの冷たい光を拾っている。大水槽の前で見た魚よりもずっと小さく、売店の照明の下ではあんなに軽く見えたものが、今は誰の足元にも近すぎて、誰の手からも遠かった。


 紬は、それを見ていた。


 拾わなければ、と思った。思ったのに、指が動かない。右手の中にまだ握っている感触だけが残っていて、手のひらは空になっているはずなのに、アクリルの角が皮膚の内側へ押し込まれたままのようだった。


 伊織が先に膝を折ろうとした。


 その手より早く、乃愛がかがんだ。


 床に片膝をつくでもなく、乱暴に身を沈めて、乃愛はクマノミを拾った。金具に絡んでいた細い埃を指先で払う。薄いオレンジ色の腹に、彼女の爪が一瞬だけ重なった。


「……大切にして」


 そう言って、乃愛は紬の手へ押し返した。


 責める声ではなかった。慰めるための言葉でもなかった。いつものように口は悪く、差し出し方も乱暴に近い。それでも、紬の指がキーホルダーを握るまで、乃愛は手を離さなかった。


 紬は受け取った。


 受け取ったはずなのに、手の中に戻ってきたものは、さっきまでと同じ重さではなかった。


 クマノミの腹には、乃愛の体温が残っているような気がした。売店で見つけた小さな土産。紬の手へ押し返された、捨てるなとも、持っていろとも言わないまま渡されたもの。そこに向けられたものが、何もなかったとは思えなかった。


 それなのに、受け取った自分が分からない。


 熱帯エリアでクマノミを見たのは誰だったのか。ショップで紙袋を持っていたのは誰だったのか。乃愛が差し出してくれたものを、いま手の中で握っているのは、本当は誰なのか。


 指の腹に、冷たい汗が滲んだ。


 搬入口の外から、湿った風が入ってくる。


 雨のあとに近いコンクリートの匂いが混ざっていた。まだ朝になりきらない外の光は、シャッターの下から斜めに差し込んで、床の白線とタイヤ痕だけを薄く浮かび上がらせている。白線の先にはスロープがある。フェンスがある。道路がある。そこまで見えているのに、紬は自分の靴が今どちらを向いているのかも、すぐには分からなかった。


「外で孤独になるって、何」


 伊織の声が震えている。


 声はさっきよりも小さい。その奥に、無理やり押し込めた熱があった。


「何、それ。そんなの、外に出てから考えればいいじゃん。家とか学校とか、あとから探せばいいじゃん。紬ちゃんはここにいるじゃん。今、ここにいるんだから、それで――」


 言葉が途中で止まった。


「それで」


 紬は、制服の内ポケットに指を入れた。薄いカードケースの角が、爪の先に当たる。最初に目覚めた時も、そこに入っていたものだった。取り出せば、透明な面の向こうに自分の顔がある。名前がある。学校名もある。


 ポケットの中で触れているだけで、紬にはもう分かっていた。


 そのカードは、外へ続く鍵ではない。


 有沢紬、と読める。写真も自分の顔をしている。そこに書かれた学校の門も、廊下も、下駄箱も、誰かと過ごしたはずの時間も、どこにも戻ってこない。鳴海が言った通り、それは外から来た少女であると信じるために置かれたものなのかもしれなかった。


 伊織は、紬の手元を見ていた。


 カードケースそのものではなく、内ポケットを押さえた紬の指を見ていた。外に出てから探せばいい、と言い切るには、その指があまりに強く制服の布を掴んでいた。


 伊織は唇を噛まず、泣きそうな顔もしなかった。ただ、閉じかけた口をもう一度開いて、結局、何も続けられなかった。


 鳴海はその様子を見ていた。


 白いコートの裾が風で少しだけ動く。胸元のカードは、さっき乃愛に問い詰められた時から指で押さえられたままだった。彼は紬を責めているようには見えない。怒らせようとしているわけでも、慰めようとしているわけでもない。ただ、今ここで起きている反応を、目の前の事実として受け取っている。


「最上伊織さん」


 鳴海が言った。


「外へ出たあとで考えることは、もちろんできます」


「だったら」


「ただ、三名には考える責任があります。すべての責任を押し付けるわけではありませんが、名前、家族、学校、来館前の時間が外側に残っている。あなたがたが自分を説明する時、戻る先として参照できるものがある」


 伊織の肩が強く上下した。


「そういう言い方、やめて」


「有沢紬さんには、それがありません」


 紬の指が、クマノミの腹を押した。


 硬い。小さい。冷たい。爪の先に力が入りすぎて、金具が手のひらの皮膚へ食い込んだ。痛いはずなのに、痛みの位置がつかめない。胸の奥が詰まって、喉の下で何かが乾いていく。唾を飲み込むと、消毒液の匂いまで一緒に飲んだような味がした。


「そんなの、今すぐ決めなくてもいいでしょう」


 アリスが言った。


 声は整っていた。言葉の間隔だけが、いつもより少し詰まっている。


「外へ出てから、警察に保護を求めることもできます。病院へ行く必要もあるかもしれません。事情を説明するのは、難しいと思います。わたくしたちだけで判断してよいことでもありません」


 言いながら、アリスは紬を見なかった。


 床の白線を見ていた。白線の塗料はところどころ削れ、黒いタイヤ痕の下でかすれている。そこを越えた先に、外のコンクリートが続いている。アリスの靴先は白線の内側で止まっていて、彼女の指はカードケースの縁を押さえていた。


「紬さんをここに残す理由にはなりません」


 最後の一言だけ、アリスは紬の方を見て言った。


 その目を見た時、紬の胸の奥で少しだけ空気が動いた。すぐに、別のものがそこへ詰まった。警察。病院。保護。戸籍。住所。学校。家族。アリスが並べた言葉は、どれも外へ出たあとに必要なものだった。必要なものなのに、紬の中には何一つ、そこへ伸びる糸がない。


 自分を説明する方法がない。


 有沢紬という名前は読める。


 どこへ持っていけばいいのか分からない。


「じゃあ置いてけって言いたいわけ?」


 乃愛が鳴海へ向き直った。


 クマノミを紬に返した手が、そのまま制服の裾を握っている。白線を越えたところに立っているのは乃愛だけだった。彼女の靴底には、搬入口の砂が薄くついていた。


「外で孤独になるから、ずっとここにいろって? 家も学校もないから、ここに残れって? 人間を水槽に戻す言い訳にすんな!」


「私は、置いていけとは言っていません」


 鳴海の返答は、早くも遅くもなかった。


 乃愛の顔が歪む。


「じゃあ何で、脅してんの?」


「選ぶための情報を渡しています」


「それが超最低だって言ってんの」


 乃愛の声が搬入口の天井へ当たった。跳ね返った音は、外から入る風に削られて、床の近くへ薄く広がった。紬の足元で、さっきのクマノミの音がまだ残っているような気がした。


 鳴海は、乃愛の怒りを正面から受けても、姿勢を変えなかった。


「あなたがたは、外へ出る条件を満たしました。このまま搬入口を通ることはできます。ですが、彼女だけは外側の受け皿を持たない。そこを知らないまま出ることは、別の形で彼女を傷つける可能性があります」


「可能性、可能性ってさ」


 乃愛が吐き捨てる。


「あんた、何回その言葉で人を閉じ込めてきたの」


 鳴海は答えなかった。


 天井の換気設備が低く唸っている。外へ続くスロープの先で、車が一台通った。タイヤが湿った路面を踏む音がして、フェンスの向こうへ流れて消えた。紬はその音を聞いた。外の音だった。水槽のポンプとも、バックヤードの機械音とも違う。遠く、低く、それでも確かに水族館の外から来た音だった。


 出れば、あの音の中に行く。


 でも、その先で誰が自分を呼ぶのか分からない。


 紬はカードケースへ触れた。透明な面は冷えていて、指先の熱がすぐに奪われる。写真の中の自分は、制服を着て、ちゃんとそこに写っている。学生証の学校名も読める。けれど、その学校の門も、廊下も、下駄箱も、誰かと過ごしたはずの時間も、思い出そうとすると途中で途切れた。熱帯エリアで見た映像の中の自分も、教室のような場所に立っているだけで、その前後がない。


 ないものばかりが、手のひらの中で形を持ちはじめていた。


 鳴海が搬入口の壁へ視線を移した。


 古い案内板がそこに貼られている。塗装の剥げた金属板に、生体搬入経路、餌保管庫、冷凍庫、検疫水槽、と文字が並んでいた。客が見るための丸みのある案内ではない。魚を運び、分け、保管し、状態を確認するための言葉だった。


「検疫水槽という設備があります」


 鳴海が言った。


 伊織がすぐに顔を上げた。


「何の話?」


「新しく来た生体は、すぐには本水槽へ入れません。水が合うか、病気を持ち込まないか、餌を食べるか。しばらく別の水槽で見る必要があります」


 搬入口の脇には、透明な樹脂製の箱がいくつも積まれていた。ガラスの水槽ほどきれいではない。角には白い擦り傷が残り、側面には剥がし損ねたラベルの跡がある。空のまま重ねられた箱は、展示室の水槽よりずっと軽く、使い終われば洗われ、乾かされ、また別の何かを入れるために置かれている。


「外へ出る前の彼女も、それに近い状態です」


 伊織の顔色が変わった。


「紬ちゃんを、水槽に入れる魚みたいに言わないで」


 鳴海は伊織を見る。


「ですから、魚と同じだとは言っていません」


「同じだよ!」


 伊織は一歩前へ出た。


「水が合うかとか、餌を食べるかとか、別の水槽で見るとか、そういう言い方してる時点で同じじゃん。紬ちゃんのこと、そういう言葉で見てるんでしょ」


「外部環境へ移す前に、確認すべき条件があるという意味です」


「だから、それが無理なんだって!」


 伊織の声で、壁の奥の水音が一瞬遠くなった。


 紬は伊織の背中を見ていた。熱帯エリアでクマノミを見た時、伊織はもっと軽く笑っていた。クラゲエリアで声をかけた時も、怖いのに笑っていた。その笑い方を、鳴海は記録していたのかもしれない。笑ってから黙る。名前を消しても、同じ場所で立ち止まる。そういう言葉の中に、伊織の笑い方まで入れられていたのだと思うと、紬の喉の奥が少しずつ塞がっていった。


 紬は、三人の後ろに立っている。


 守られている。


 そう思っていいはずだった。


 それなのに、三人の言葉が増えるほど、紬の足元は狭くなっていった。伊織が怒る。乃愛が鳴海を睨む。アリスが現実の手順を探す。どれも紬のための言葉だった。紬を置いていかないための言葉だった。そのすべてが、紬がいることで三人に背負わせてしまうものの形にも見えた。


 家や学校という言葉は、紬にも分かる。戸籍も、病院も、警察も、保護も、説明も、外へ出たあとに必要なものなのだろう。けれど、それらを一つずつ思い浮かべるたびに、最後には必ず、誰が紬を引き受けるのかという場所へ行き着いてしまう。


 まだ白線を越えてもいないのに、紬はもう、三人の手をふさいでいる気がした。


 紬はクマノミを握った。アクリルの腹は、さっきよりもぬるくなっていた。自分の体温が移ったのだろう。そう思った瞬間、そのぬるさが嫌になった。誰かのために作られた反応。困っている相手に声をかけること。誰かと誰かの間に立つこと。遅れた人を待つこと。疑われても、すぐに断ち切らないこと。


 鳴海の言葉が、手の中の小さな魚に貼りついて離れない。


「私――」


 紬の口から出た音は、自分でも驚くほど低かった。


 三人が振り返る。


「私、外に出ない方がいいのかもしれない」


「違う!」


 伊織が即座に言った。


「違うよ、紬ちゃん! それは違う。そんなわけないじゃん!」


「そうだよ!」


 乃愛も言う。


「今の話聞いて、なんでそうなんの。あいつが勝手に言ってるだけじゃん!」


「紬さん……」


 アリスが名前を呼んだ。紬の名前を、丁寧に、いつものように呼んだ。


 紬はその声を受け取る場所を見つけられなかった。呼ばれた名前が胸の表面で止まる。中まで入ってこない。カードケースの中の有沢紬と、三人の口から出る紬が、同じ形をしているのに別のものみたいに聞こえる。


「三人は戻れる場所がある」


 言葉を出すたび、舌の上が乾いた。


「家とか、学校とか、名前を知ってる人とか。全部戻るかは分からなくても、外に何かある。私は、外に出たら、三人の邪魔になる」


「邪魔じゃない!」


 伊織の声がかぶさる。


 紬は首を振った。大きくは振れなかった。少し動かしただけで、首の後ろが冷えた。


「私のこと、説明しなきゃいけなくなる。誰かに聞かれたら、三人が困る。警察とか、病院とか、学校とか、家の人とか。私がいるせいで、三人が帰れなくなるかもしれない」


「そんなこと――」


 アリスの言葉を待たずに続ける。


「帰れても、終わらないと思う」


 紬は、クマノミを握ったまま言った。アクリルの角が、手のひらの同じ場所に食い込み続けている。痛みはあるのに、指をゆるめることができなかった。


「伊織ちゃんも、アリスちゃんも、乃愛ちゃんも、外に出たら戻る場所がある。家があって、学校があって、ここに来る前から三人を知っている人がいて。たぶん、帰らなきゃいけない場所がある」


 三人は何も言わなかった。


 その沈黙の中で、紬は三人の制服を見た。乱れた髪。皺のついた制服。汚れた靴。たくさん歩いて、何度も立ち止まった身体。そこには、ここから出たあとに戻っていく生活がある。朝になれば誰かに名前を呼ばれ、帰りが遅いことを責められ、学校へ行き、席に座り、今までの続きを始めることができるかもしれない。


 自分には、その続きを始める場所がなかった。


「三人は、元の生活に戻りたいはずなのに」


 喉の奥がざらついた。


「私がいたら、きっと気にしちゃう。どこにいるのかとか、なにをしているのとか。ちゃんとご飯食べてるのかとか、誰かに保護されたのかとか、学校に行けるのかとか。伊織ちゃんも、アリスちゃんも、乃愛ちゃんも、そういうの、気にしないでいられる人じゃないから」


 言葉にするほど、胸の内側が冷えていった。


「私だけ何もないままだったら、三人は帰れても、ずっと帰れなくなる」


 伊織の顔が歪んだ。アリスの指が、制服の袖を小さく握る。乃愛は何か言いかけて、口を閉じた。


「私がいるせいで、三人の外にまで、ここが残る」


 紬は白線の先を見た。


 外はすぐそこにある。その先に自分の部屋も、机も、靴箱も、誰かに呼ばれる帰り道もない。三人がそこへ戻っていくたびに、自分だけが戻る場所のないものとして、三人の生活の端に引っかかり続ける気がした。


「私、それが怖い」


 やっと出た声は、ほとんど息だった。


「ここで忘れられるのなら、ここに残る方が、正しいのかもしれない」


 紬は、自分の言葉がどこへ向かっているのか分からないまま続けた。


 外へ出る白線が、すぐそこにある。スロープは開いている。鳴海は何もしてこない。誰も紬の腕を掴んでいない。進めばいいだけだった。膝の裏に力が入らない。足の裏は床に貼りついたまま、靴底の内側で指だけが縮こまっている。


 戻ろうと思った。


 けれど、水族館の奥を振り返ることもできなかった。


 そこには大水槽がある。熱帯エリアがある。クラゲエリアがある。淡水魚エリアがある。タッチプールがある。標本資料室がある。ミュージアムショップがある。全部、三人を出口へ連れていくために通った場所に見えた。そこへ戻れば、紬はまた同じ役割の中へ沈む。


 外には出られない。


 水槽にも戻れない。


 搬入口の床だけが、紬の足の下に残っていた。


「紬ちゃん」


 伊織が手を伸ばそうとした。


 紬は身を引いたわけではない。伊織の手は途中で止まった。触れていいのか、抱きしめていいのか、名前を呼べばいいのか、その全部が分からないまま、空中で迷っていた。


 その手を見て、紬の中で何かが細く切れた。


「私、どこに行けばいいの」


 自分の声なのに、搬入口のどこから聞こえたのか分からなかった。


 伊織が唇を開いた。言葉は出なかった。


 アリスが拳を握り締めている。爪の先が白くなっている。彼女も答えられなかった。


 乃愛だけが、紬を見ていた。


 外の風が吹き込んで、紬のスカートの裾を揺らした。膝のあたりが冷たい。薄い制服の内側で背中に汗が滲み、その汗だけが冷えていく。喉の奥に薬品の苦さが残っていた。検疫水槽の水の匂いかもしれない。口を開くと、その匂いが肺の中へ入ってくる気がした。


「私、ここから出たら、誰になるんだろう」


 誰も答えなかった。


 答えないでいてくれたのではない。答えられなかったのだと、紬には分かった。分かってしまったから、胸の奥がさらに冷えた。


 外へ出れば、誰にも待たれていない。


 ここへ残れば、誰かを出口まで連れていくためのものになれる。


 では、自分はどちらへ行けばいいのか。


 靴底の下で、床の冷えがゆっくり上がってくる。白線の内側でも外側でもない場所に立っているのに、線の上に置かれているようだった。踏み越えれば外。戻れば水槽。足を上げることも、下げることもできない。


 紬は乃愛を見た。


 見た、と思った時には、右手が少しだけ動いていた。


 助けてほしかったのか、止めてほしかったのか、自分でも分からない。触れなければ、もうどこにも行けなくなると思った。


 紬の手は、乃愛の袖口へ向かって伸びた。


 細い距離だった。あと少しで触れる。制服の布地の縫い目まで見えている。乃愛の手首の骨が、袖の下で少し動いた。紬はそこへ指を伸ばしかけて、触れる寸前で止まった。


 搬入口の音が、急に遠くなる。


 換気設備の唸りも、外の車の音も、水槽の奥で動く水の音も、全部が厚い壁の向こうへ退いたようだった。乃愛の視線は、紬の指先に留まったまま動かない。


 その手は、何も掴んでいなかった。


 誰にも触れていなかった。


 乃愛は、その手を見つめている。


 そして()()、思い出した。


 自分が、この手を何度も払ってきたことを。

展示番号13号『検疫水槽』


 検疫水槽は、新しく来た魚をすぐ本水槽へ入れず、体調や病気の有無、環境への適応を確認するための場所です。ただし、人間にとっての「外へ出る準備」は、環境に慣れることだけでは足りません。待っている誰かがいるか、帰る場所があるか、自分の名前がそこに続いているか。それもまた、外で生きるための条件になります。

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