第27話 レベルアップ
二人は騒いでいる所を警備員に見つかって、休憩室を追い出された。
その部屋は自販機はあるものの、部外者は立ち入り禁止だったようだ。二人は次のバスを待ちがてらスマホを開いた。
「あれ。クリフォト、消えてる……」
「え?」
山北総合病院に広く分布していたはずの、クリフォトが消えている。半透明のピンを指で触ると『制圧済クリフォト』と表示されていた。
「毎回クリフォトを探さないといけないってこと?」
「あ、でも、まだ近くにいくつかあったような……」
マップ上には、まだ未制圧のクリフォトがばらばらの方角に点在している。うさぎはマップをスワイプして、近場のクリフォトを探し始めた。
その隣で、ひなたが「あっ」と声をあげた。
「レベル上がった」
「え!?」
「マジ。見て見て」
ひなたはプロフィール画面を見せた。
『サンライズハート/Lr.2/ニューエラ/炎・光・無』
外見に特に変わった様子はなかった。ステータス画面を見ると、HPの最大値が100上がっていた。さらに細かい所が変わっているようにも見えるが、目に見えて分かるのは経験値の欄だった。
EXP 139 Next 300。
「HP増えてる。強くなったってこと……?」
「すごい! ひなたちゃん、もうレベル2なんだ。もしかして、私も……」
うさぎは期待して、プロフィールを開いた。
ムーニーバニーはレベル1のままだった。
EXP 66 Next 100。
「さ、34足りない……!?」
「経験値にこんなに差が出てるのは何だろね? 二人で戦ってたはずだけど……」
ひなたは本気で悩んでいるが、うさぎには心当たりがあった。ありすぎた。
うさぎは逃げ回っていただけで、戦闘に参加していないのだ。むしろ66点も経験値を頂けていることに感謝しなくてはならない。
だが、この数値は希望にもなった。
一度クリフォトを制圧すればだいたい50~150程度の経験値が手に入るようだ。基準は分からないが、あと1回クリフォトに潜ればムーニーバニーもレベル2に上がりそうだった。
「うーん、別に変わってない感じする……。ていうか、これ最初からある能力だったのかな」
ひなたは画面を見て、ぶつぶつと呟いている。
うさぎが顔を向けると、画面を見せてくれた。それはプロフィール画面の項目の1つ。スキル画面だった。
画面はものすごくシンプルで、上に2つ、そして下に4つのスロットルがあった。
画面上の2つは『近接武器習熟』と、もう一つは黒く塗りつぶされ×がついていた。また、下4つは一番上の『コロナサーキュラー』だけが埋まっていた。
「『近接武器習熟――パッシブ。すべての近接武器に習熟する』。あ、だめ。全然分からん。もう分からん。何言ってるか分からん。帰ったら兄やに聞いてみなきゃ」
「ひなたちゃん、お兄さんいるの?」
「うん。ゲームとか詳しいんだよね。えっと下のやつは、『コロナサーキュラー――チャネリング。攻撃を続けている限り、武器に炎を纏わせ攻撃速度が上昇する』チャネ……なに? うさぎ、分かる?」
「あれかも。ひなたちゃん、ロボットにパンチした時、手、燃えてた」
「え、マジで?」
「うん。なんかパンチも速くなってた、ような……。たぶん、その事を言ってるんじゃないかな……」
うさぎはそう言って、自分でもスキル画面を開いた。少しだけわくわくしていた。自分にも何か必殺技みたいなものが用意されていると思ったのだ。
ムーニーバニーのスキルは上2つが埋まっていた。『一歩』『大跳躍』だ。
しかし、それらの内容を確認する前に、うさぎは黒ガキの用意した仕打ちに涙を滲ませた。
ムーニーバニーの第一スキル枠にあるスキル名は、あまりに悪意がありすぎたのだ。
「ムーニーバニーは何だったの?」
「脱兎」
「えっ?」
「脱兎ッ……!!」
『脱兎――チャネリング。逃げ足が速くなる』
引退する。絶対引退してやる。うさぎは決意を新たにして、スマホを握りしめた。
第一部 第二章 チュートリアル 完




