7 新しい美の誕生
ウィリアムと正式に婚約してから、数ヶ月。
ついに――
二人で社交の場へ出る日が決まった。
「シャーロット
私のせいで、視線を集めることになるかもしれない
だが、どうか堂々と――
私の隣で微笑んでいてほしい」
「君の笑顔は、私が守る」
その言葉の通り。
用意されたのは、すべてが“彼女のため”の装いだった。
フルオーダーのドレス。
選び抜かれた装飾品。
それは、この国の常識とは異なる――
【健康美】を最大限に引き出す、新しいデザイン。
大きく開いたデコルテ。
柔らかく光を受ける白い肌。
程よく存在感を持たせた胸元。
締め付けない、自然な曲線のウエスト。
花弁のように重なるスカートが、ふわりと広がる。
「……まぁ……」
支度をしていた侍女たちが、一斉に息をのむ。
「お嬢様、とてもお似合いです」
「まるで別人……いえ、本来の魅力が」
褒め言葉に、シャーロットは少し頬を染めた。
「そ、そうかしら……?」
その時。
待ちきれずに現れたウィリアムが、言葉を失う。
「シャーロット……」
ゆっくりと歩み寄る。
「……とても、美しい」
低く抑えた声。
熱を帯びた視線。
「本当は、その姿は私だけに見せてほしいのだが……」
「え?」
「……いや、行こうか」
軽く咳払いをして、手を差し出す。
「今夜は――君のための夜会になる」
◆
王宮。
すでに多くの貴族たちが集まり、談笑していた。
扉が、開く。
その瞬間。
空気が、変わった。
「……え?」
「どなた……?」
ざわめきが広がる。
ウィリアムにエスコートされ、現れたのは――
これまでの常識を覆す装いの令嬢。
風に揺れるドレス。
光をまとったデコルテ。
そして。
少しだけ恥ずかしそうに、微笑む表情。
「……シャーロット、伯爵令嬢?」
誰もが、信じられないものを見たような顔をした。
一方で。
他の令嬢たちは――
締め上げられたウエスト。
首元まで覆うハイネック。
似通った、細いシルエット。
まるで、同じ型で作られたかのようだった。
男性たちの視線が、自然と集まる。
「あの方は……」
「なんて、美しい……」
その視線を遮るように。
ウィリアムが、一歩前に出る。
「シャーロット」
そっと、囁く。
「君が――誰よりも美しい」
「……ありがとうございます」
小さく、答える。
だが。
それでは、終わらなかった。
「……はぁ、シャーロット」
ウィリアムは、彼女の手を取り――
「できることなら」
その頬に、そっと触れる。
「私の視界の中だけで、生きていてほしい」
甘く。
しかし、明確な独占。
その瞬間。
「……ああ……」
数名の令嬢が、ぐらりと崩れ落ちた。
「ウィリアム様が……あのように……?」
「あり得ませんわ……あんなふうに見つめられるなんて……」
ざわめきは、止まらない。
そして、その夜。
王都を駆け巡った噂は、ただ一つ。
『あのシャーロットが――
ウィリアム様の、唯一となった』
それは。
新しい“美”の誕生を告げる夜だった。




