表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/28

第26話 かかってこいっ!!

 ――殿下は、ローレンシアと結託して、国境の砦を攻撃した。

 ――ローレンシアの軍門に下り、ルティアナに反旗を(ひるがえ)した。

 

 それが、敵の主張だった。

 たとえ王太子でも、国家に歯向かえば、それは死に値する。

 「まったく、キッツいことを考えてくれるよなっ!!」

 イリアーノさんが敵を斬り倒す。

 「まったくだっ!!」

 バルトルトさんが唸り声を上げる。

 混戦になりながらも、必死に戦う。

 敵になっているのは、かつて王都で、殿下に忠誠を誓ってくれていた兵士たちだ。閲兵えっぺい式で何度も見かけた、その姿。

 殿下の執務室に訪れた人もいる。

 それが、今、殿下の敵となって、戦いを挑んできている。

 (こんなのってっ、こんなのってっ!!)

 戦いながら、泣きたくなる。

 みんな、殿下が大事にしてきた人だ。それが、こうして命のやり取りをしている。

 殿下が、国家に反逆した。

 そんなまったく根拠もない罪のせいで。

 「レオッ、お前はここから逃げろっ!!」

 殿下が叫ぶ。

 「インメル夫人を捜して、王都の外に出ろっ!!」

 この状況は不利だ。そう判断したんだろう。

 だけど、だけど、だけどっ!!

 グッと手綱を握りしめ、一気に王宮の階段を駆け上がる。

 「レオッ‼」

 殿下の制止も聞かない。

 

 「鎮まりなさーいっ!!」

 

 ありったけの声を張り上げる。一瞬、みんなが静まり返る。

 「殿下が、アナタたちに、どんな害を及ぼしたっていうのっ!? 殿下はいつだってルティアナ王国のために力を尽くしてきたわっ!!」

 いつだって、いつだって。

 私はずっとそれを見てきた。

 「砦を落としたのだって、メリクリオス将軍が、砦を盾に、ローレンシア人と内通したからよっ!! ローレンシア国王は、将軍を倒すために力を貸してくれただけで、この国を滅ぼそうとなんてしてないわっ!!」

 滅ぼす気なら、あの場所で、殿下と戦っていたはずだ。

 「それでも、殿下に謀反の疑いが、あるというのなら…、殿下がこの国を滅ぼそうとしていると思うのなら…」

 スウッと息を大きく吸い込む。

 「一度でも殿下に傷つけられたという者のみ、前へ出なさいよっ!! 殿下に助けられた経験のない者のみ、前へ出て、私と戦いなさいっ!!」

 グルリとみんなを見回す。

 「いないのっ!? 殿下を悪だと決めつけてるんでしょ⁉ だったら、その証拠と一緒にかかってきなさいよっ!!」

 言い切って、肩で息をくり返す。

 興奮しすぎて、顔が熱い。目が潤む。

 「スッゲー、啖呵(たんか)

 イリアーノさんの呆れた声が聞こえた。

 「レオ」

 いつの間にか、殿下がそばに来ていた。

 (くつわ)を並べ、グッと頭を抱き寄せられる。

 「ありがとう」

 「………っ!!」

 我慢しようとしてた涙がこぼれる。

 こんな時に反則。抱きしめないでよ。

 「……っ!! ええいっ、何をしているっ‼ 逆賊アルフィリオを捕らえろっ!!」

 静まり返った兵士の中で、一人の男が叫んだ。

 けど、ほとんどの兵士が動かない。剣を持つ手をダラリと下げたままだ。

 「戦えっ!! 戦わんかっ!!」

 男の金切り声だけが虚しく響く。

 「レオッ、アルッ!!」

 階下から、イリアーノさんの声が届く。

 「お前たちは先に行けっ‼ ここは僕たちがなんとかするよっ!!」

 軽いウィンクとともに、イリアーノさんが男に突進していった。

 続いてバルトルトさんも、攻撃をしかける。

 「急げっ!!」


 「行こう!!」

 その言葉に弾かれたように、殿下が私の手を引っ張った。

 二人、騎馬のまま王宮内に突入する。

 

 *      *      *      *


 「やっぱ、レオくんは、いい王妃になれそうだねっ、バルトルトッ‼」

 目の前の敵と斬り合いながら、イリアーノは長年の悪友に声をかける。

 「知らんっ!!」

 吐き捨てるように言って、敵の長剣を叩き割る。

 そのバルトルトの怪力ぶりに苦笑しつつ、イリアーノも敵を倒す。

 「見上げた根性の持ち主だとは思うがなっ!!」

 それは、おそらくバルトルト最上の誉め言葉なのだろう。

 「少しは『カワイイ』とか、外見を褒めてあげたらどうなのさっ!! せっかく、あんなにかわいいのにっ!!」

 「無理な話だっ!! 俺に、そういうのは判断できんっ!!」

 まあ、猪突猛進…、いや、熊突猛進だもんなあ。

 軽口をたたき合いながら、敵を倒していく。

 レオの啖呵のおかげで、敵の数はグッと少なくなった。兵を扇動する連中だけ倒せばいい。

 さて、あと何人だ⁉

 軽く舌なめずりして、イリアーノは剣を構え直す。

 終わりは近い。


*      *      *      *


 殿下と二人、王宮内を走っていく。

 途中、どうにも通れなくなるほど狭い通路があって、馬を置いてきた。

 目指す場所を殿下はご存知なのだろう。私を手を握ったままの殿下に迷いはない。

 時折出会い頭になった兵士を倒し、その部屋へと近づく。

 王宮の最上階。

 一番きらびやかな扉の向こう。

 勢いよく開かれたそこにいたのは…。

 

 「国王陛下…」


 殿下のお父上だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ