閑話 : シャノワーヌ子爵家
<シャノワーヌ子爵家>
子爵 エドモン・フォン・シャノワーヌ
夫人 ソフィ・フォン・シャノワーヌ
長女 ブランシュ・フォン・シャノワーヌ
次女 ジョアンナ・フォン・シャノワーヌ
先代子爵 ドナシアン・フォン・シャノワーヌ
夫人 マルゴット・フォン・シャノワーヌ
シャノワーヌ子爵家では施策を実行するのは先代の夫妻だ。
子爵であるエドモンと子爵夫人のソフィは娘たちに授業に参加するように命じた。
「やっと勉強が終わったと思ったのに、また勉強するの?」
「大事なのは分かるけど、もう、一通り終わらせたはずなのだけど。」
ブランシュとジョアンナは不満気だ。
「勿論、私も、ソフィも参加する。勉強とはいうが、休息日のたった数時間程度。それに、領民が皆参加するんだ。同じように我々も参加して、領民がどれだけ理解しているのかを体感しなければならない。」
「でも、領民に向けてってことは文字の読み書きでしょう?流石に文字なんて扱えるようになったわ。」
「うん。それよりも、収穫されたものたちの数を数えなければなりませんし。」
文字を既に扱えるようになった彼らには退屈なものと思ったのだろう。
「公爵さまたちによれば、私たちにも学ぶべきことが沢山あるそうだ。それでも不満だというなら、我々が受けるものに加えて、その後の2冊目という授業を受けてみるといい。それが満足に理解でき、問題ないのなら、数ヶ月後、授業は受けなくて構わない。」
「それなら、まぁ、数ヶ月程度なら。」
「2冊目というのも、2年目なのでしょう?たった2年で文字なんて扱えるわけがありません。私たちにはそれすら不要なはずです。ですが、そこまでおっしゃるなら、受けます。」
二人にとって、勉強とは苦しく、辛いものだった。
教師の説明は意味がわからず、その人が楽しそうに喋っているだけだった。それなのに、分からないというと鞭で打たれた。マナーの講師も鞭で打たれたけど、それには明確な正解があった。マナーにしても、勉強にしても、訓練は辛いものでしかないというのが二人の認識だった。
その認識は子爵夫妻も先代の子爵夫妻も同じだ。
勉強が、座学が、楽しいものであるはずないのだ。




