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視察準備

 視察当日、私たちはこれまでに開発したものたちをフル装備した。


 私が持っているのは、コンパス・定規・方位磁針。他にはノート数冊、鉛筆、消しゴムなどの筆記用具も準備済み。


 ノエルは腕時計を装備の上、ノートを方眼紙に加工。グラフを描くための紙も専用に用意した。


 腕時計は私とノエルが砂時計と同時に開発させたもので、小型化する時にデジタル部分を搭載できず、アナログとなっているから、私とノエル以外には基本的に読むことができない。とはいえ、私も読むのは苦手だが。

 腕時計がなかったのはアナログ時計が読めなかったこと、そもそも時間に拘って生活していないことが挙げられるが、また別の話。


 今回の視察の目的は、領地の授業の準備だが、これは正直建前だ。

 何故なら、私は真面目に地理の授業を受けていない、というよりも、試験のためにしか勉強していなかったので、正直、何を観察したらいいのか分からない。そして、比較対象は前世のみ。この世界に全くフィットしていない。修学旅行他、校外学習では、何を書いたらいいのか分からなかったよ。それを知って何になる?なんで?とかなってしまって。自分で気づけるほどは見ていられないんだよね。


 私はこの世界の常識を見ようと思っている。

 私から見てこの世界は歪だ。

 屋敷はとても立派で、算数が微塵もできない状態で建てられるものではない。ちなみに三階建てだ。

 屋上からは同じ高さの建物などほとんどなく、他の建物は平屋、もしくは二階建てだ。

 可能性としては、土地が十分にあるから上に作る必要がないということもある。しかし、屋敷以外の建物の技術レベルが極端に低い。私からしたら奇妙でならない。


 そういうことも含めて確認をしようと思っている。

 コレらのことは別のノートにでも記しておいて、表向きはちゃんと視察しますよ。


 ノエルはまた別の目的を持っている。


 エマール領は山と森と湖に囲まれた自然豊かな領だ。屋敷から山までが約60(10)kmあって、屋敷を背に正面が山右手が湖左手が森、背後は森。そして川が流れている。屋敷から山まで直線ではない道が1本ある。およそ90(10)km、馬車の通常ペースで15(10)時間ほど。その1本道がエマール領の交通であり、授業が始まって以降はその道を通って、エマール家の支部に集まっているテストや手紙を集めているのだが、ノエルはここに時刻表を作るつもりなのだ。いや、時間で無理に縛るつもりはないが、自分の研究の一つとしてダイヤグラムをつくるつもりなのだ。だからこその腕時計である。


 視察に出る前に、エマール領の事前知識を再確認しよう。


 エマール領に教会は7つ。

 よって、領は7つのブロックに分けられている。

 それぞれの教会の周辺には最寄りの教会へのポータルが点在する。ポータル間の移動は不可能で、ポータルからは決められた教会に飛ぶことしかできないが、移動を容易くする重要な移動手段である。ほとんどの領民が授業の度に教会に集まることができたのは、そのポータルのおかげである。

 ポータルという移動手段は不思議なことに国中に存在するそうだが、撤去や移動、改造をできた例はなく、作り方さえ分からない、ロストテクノロジーである。

 

 エマール領の最も大きな一本道に沿って7つのエマール家支部が存在する。

 支部は物資の流通の拠点となり、宿泊施設、応接室などが存在する。倉として物資が保管してあり、常時エマール家の使用人が滞在している。

 エマール家の支部はポータルの近くか教会の近くに設置されていて、交通の便がとてもいい。生活がしやすいうように物資を流通させているから、いろいろな種類のご飯を食べることができるのだ。


 ロストテクノロジー......失われた技術。

 これが恐らく、この世界の歪さの原因。

 女神の洗礼に頼りきりになって失われてしまった技術や知識がたくさんある。

 もし、誰かが受け継いでいるのなら、その人に話を聞きたい。

 もう一度、その技術を引き継ぎ直さなければ。

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スピンオフ短篇の紹介

「ラッキー7の世界で」スピンオフ短篇

作品紹介


完結済

すべてはあの桜花のせい

悠という少年の巣立ちの物語。推理SF小説。

連載中

魔女の弟子と劣等学級 -I組生徒の過ごし方-

魔女の弟子が初めて街に降りて人と関わる学園もの。

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