フェアではないです
レオが尋ねると、アルフォンソは数秒考え込むように黙り込み、しばらくしてこくりと頷いた。
「お二人がそう仰るのであれば…」
「良かった」
「決まりね! よろしく、アル」
正直、レオがなぜこんな提案をしたのかは分からないが何か考えがあってのものだろう。快諾してくれて良かったと、私は微笑みながら手を差し出した。
「えっと…よろしく、サラ…」
おずおずと握り返してくるアルは少し眉を下げながらも笑顔を返してくれた。
ゲームのアルフォンソの時は氷の様に冷たく見えたアクアブルーの瞳も、クールさがないせいか柔らかく見える。今はどっちかと言うと澄み切った空色って感じだろうか。
こうして見るとまだ年相応の少年なのに、既にレオの側で護衛についているのだ。きっとゲームがスタートする頃まで護衛として周りに気を張っていたからああなっていたのかな、と思うと、彼には年相応の楽しみも見つけて欲しいと思う。
「あ、そろそろ着くみたいだね」
そんな事を考えていると、速度を落とした事に気付いたレオがカーテンの隙間から外を確認する。すると、ポケットからキャスケットを取り出して被った。
「それは?」
「ああ、これ? さすがにそのままって訳にはいかないからね。被ってた方が少しは顔が隠れるだろう?」
確かに、レオの顔は目立つ。……いや、というよりもこの三人がそもそもメインキャラなだけあって顔面偏差値が高いんだけど……。
でもこうして見ると、帽子を被って簡素なYシャツにサスペンダーと黒のチノパンを合わせたレオは王太子には見えない。
さらにアルも、Yシャツにグレーのチノパン、革の斜めがけカバンとシンプルな装いだ。…というか、護衛の割に身軽すぎないかしら。
「ねぇ、アルは今日護衛も兼ねてるんでしょ? 武器とかはどうするの?」
まさか帯刀して歩くわけにもいかまいと思って聞くと、アルはカバンの中から鞘に入った短剣を取り出した。
「いざという時はこれを使います。あとは靴底に暗器が仕込んであるのでご心配なく」
「アルー?」
「あ…。えっと、心配しなくて大丈夫」
レオに敬語を指摘されて言い直すアル。まあ、すぐに順応しろって方が無理よね。転生者じゃないし、そもそも家格が違うわけだし。
それにしても、ちょっとレオに振り回されてるのは可哀想かも…。代わりに少しだけ、意趣返ししても良いわよね…。
「仕方ないわ。普通はこういう話し方には慣れていないものだもの。いきなり順応出来なくても当たり前だわ。
それよりも私、今日はレオがすっごい熱弁して、どーしても食べたい物があるって聞いてたんだけど……着いたらすぐに食べに行くのかしら?」
少しいたずらっぽく訊くと、レオは苦笑しながら頬を掻いた。
「あはは……それ掘り返しちゃう?」
「もちろん。さすがにフェアじゃないもの」
どういう意味かわかるよね? と唇を尖らせると、降参とばかりにレオが両手を軽く上げる。
「僕の配慮が足りなかったのを認めるよ。まあ、言葉遣いは次第に慣れていけば良いさ」
そう言って笑ったレオは、そのまま耳打ちするようにアルへと顔を寄せた。
「ところで…僕の婚約者が可愛すぎるんだけど、どうしよう」
………普通に聞こえてますから…。って、何をアルに耳打ちしてるのかしら、この人は…っ。
「あの…その、どう答えれば……」
ほら!アルが困惑してるから!
「アル、スルーして良いのよ。疲れちゃうから」
「す、するー?」
「えっと…律儀に返答しなくて良いのよ」
そっか、普通に前世でスルーとか使ってたけどこっちで馴染みはないわよね。
「えぇー、それだと僕が切ないんだけど?」
「だって一日一回とかで済むの? それ」
「サラが可愛すぎるから無理だね」
「どれだけ好きなのよっ」
頬を膨らませてみせるレオに呆れた目線を向けると、良い笑顔を返されてしまった。というか、一日一回でも多いと思うんだけど…。
そんなやり取りをしていると、アルの肩がプルプルと震えだした。
「アル? どうしたんだい?」
「い、いえ…お二人が仲が良くて…ふっ…なんか、良いなって…」
どうやら、笑うのを堪えているらしい。
私とレオは顔を見合わせると、ニッと笑顔を交わした。思いがけずだが、アルと少し距離が縮まった気がして、私とレオもくすくすと笑いあったのだった。
今回は区切りが良いので少し短めですが、明日の更新分はキャラクターたちが好き勝手に動いたので、少し長めになってます。




