表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストップウォッチ⏱  作者: やごうまさはる
19/101

第19話

「みんないいぞ、その調子だ!」

楠田が興奮しながら選手を迎えた。

「園山、見事なカウンター攻撃だったな。まさに『してやったり』という感じだな。」

「でも監督、相手は攻め方を変えてきます。たぶんカウンターはもう使えません。」

言いながら英はグラウンドに足を延ばして座った。

すかさず1年生が英の足をマッサージする。

「なあに、相手は2点を取り返しに遮二無二(しゃにむに)攻めてくるさ。カウンターはさらに有効だ。」

楠田はそう言ったきり、戦術については特に何も語らなかった。


「園山先輩は、葉山中が後半どういう攻めをしてくると思いますか。」

英の隣に座った松永が尋ねた。

英はうつ伏せになりマッサージを受けている。

「さあな、攻め方はわからねえが、俺のマークはきつくなるだろうな。」

「大丈夫ですか?かなり疲れているようですけど。」

「まあ、なんとか持たせるさ。後半、松永には俺の分まで動いてもらうことになるだろうけどな。」

「俺は大丈夫です。どんどん使ってください。」

「それと、あのシュンってやつ。あいつは曲者だからな。必ず二人マークに行かないとやられる。」

「あのでかいやつですね。わかりました。みんなにもマークを徹底するように言っときます。」

「頼りにしてるぜ、後輩。」

英はそう言うと、目を閉じ、時間いっぱいまで休んだ。


ピーッ。後半開始の笛が鳴った。

葉山中はバックラインを前半よりもかなり下げてきた。

明らかにカウンターを警戒した守りだ。

さらに案の定、英には葉山中ミッドフィルダーがガチガチのマンマーク。

実力に勝る葉山中は、緑丘中の攻撃の糸口を切り、確実に勝つ作戦を選んできた。


(ちっ、やはりその手で来たか。)

英は思い切った作戦に出ることにした。

「松永、トップ下に入ってくれ。俺はボランチだ。」

「はい。」

(なるほど、敵は戸惑うだろうな。そして勝負どころで相手のマークを振り切って反撃に転じる。ミニゲームの時の戦法だな。)

松永は英の考えをすぐに理解した。

英がディフェンスに回ったことで葉山中は少し戸惑ったが、すぐに前半のフォーメーションに戻し波状攻撃をしかけた。

そして緑丘中はついに相手に得点を許してしまう。

桑田の守備力が弱いことを気付かれ、そこをつかれたのだ。

サイドライン際をドリブルしてきた相手のフォワードが、桑田を振り切り鋭いセンタリングを上げた。

ボールは長身のセンターフォワードにドンピシャ。

キーパーは一歩も動けず、ゴール右隅に決められた。


(ちくしょう、ついに1点入れられたか。それも後半が始まって10分も経っていないというのに…。)

英は中腰になり荒い息をついていた。

(でもここで守りに入ったら、一気にたたみかけられてしまう。ここが勝負所だ!)

だが、キックオフのボールを受けた英は、味方にパスをすると、後方に下がってしまった。

「園山、なに下がっているんだ。ここは攻める時だろ。」

楠田が怒鳴る。

その時、葉山中がボールをパスカットした。

そしてまた桑田がいる方のサイドから攻めてくる。

ディフェンスの選手がライン際を駆け上がり、パスを受ける。

桑田が振り切られた。

だが、桑田が抜かれた瞬間、桑田の後ろから英が現れ、ボールを奪う。


「松永!」

英はそう叫び、敵を一人かわし猛然と走りだした。

相手の選手が3人詰めてきたが、近づいてきた松永にパス。

松永はダイレクトで英に壁パス。

さらにパスを受けた英はゴールへ向かって突き進んだ。

松永はいつでもパスを受けられるように英の右側を走っている。

清水が前線で相手ディフェンスをかき回す。

ボールはハーフラインを5メートル程超えた位置まで来た。

(まだ、清水にはパスが通らない。もう少しゴールに近づかないと…。)

「逆サイドにパスだ!」

松永にパスしながら英が叫んだ。

チーム一の俊足、ウイングの持田がライン際を走っていた。

松永がパスをだす。

「松永フォローに行ってくれ。清水ニアサイドだ。」

そう言いながら英は持田の逆サイドへと走った。

清水がニアサイドに走りこむ。

持田からパスを受けた松永がセンタリング。

そのボールは清水の頭の上を越えて、ゴール中央フリーの英へ。

胸でワントラップしてシュート。

ボールはサイドネットに鋭く突き刺さった。


この1点が葉山中の反撃ムードを消し去った。

葉山中は、焦りからミスを連発し、逆に緑丘中に攻め込まれる場面が多くなった。

そして葉山中が意地の2点目を入れたところでゲームが終了。

スコアは3対2だ。

「やられたよ。」

センターサークルからベンチへ向かう英に、葉山中の長身フォワードが話しかけてきた。

「お前、園山っていうのか。お前みたいな選手がいるなんて知らなかったぞ。なんで県代表に選ばれなかったんだ。」

「さあ、そんなこと知らねえよ。」

「なあ園山、俺藤村学園に行くんだ。お前も行くだろ?」

藤村学園はサッカーの名門で、何度か全国優勝をしている強豪校だ。

「いや、俺は西城に行く。」

「西城?…そうか、お前頭いいんだな。」

「頭はよくないけど、西城に行かなきゃならないんだ。西城に行って藤学を倒す。」

「へえ、大きく出たな。わかった、じゃあ来年も敵か。高校では負けないぜ。」

「ああ、よろしくな。太刀中(たちなか)(しゅん)君。」

英は太刀中に背を向けて、味方のベンチに歩いて行く。

(俺の名前、何で知ってるんだ?)

太刀中は不思議そうに英の後ろ姿をしばらく見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ