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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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ゆめのうち

おちょこから溢れ、テーブルの上いっぱいに広がったそれを見ながら、颯介は1歩下がった。土色のような緑のそれは、時折膜の中で、くるっと動いている。産まれる直前なのかもしれない。


これが、テーブルの上で孵化する所を想像して颯介は気分が悪くなった。どうしようかと、悩んでいると何処かからちりっと鈴のような音が聞こえた。颯介は振り返ったが、むつの部屋に鳴るような物があった記憶はない。気のせいかと思ったが、また聞こえてきた。


テーブルから離れた颯介は何処から聞こえてくるのかと、目を閉じて耳に神経を集中させた。鈴かと思っていた音は、もっと研ぎ澄まされたような強い音のような気がした。そして、聞き覚えがある物だった。


「むっちゃん…?」


鈴よりもむつが日本刀の鯉口を切る時の音に、似ている気がした。颯介が名前を呼ぶと、答えるようにまた聞こえた。鈴とは似つかない、音だった。


名前を呼ぶとむつが、側に居るような気がした。


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