よっつのこわい
「むつ、むつ」
むつの住むマンションに着くと、冬四郎はむつの肩を揺すった。うっとおしそうに、冬四郎の手を払い除けながら、むつは薄く目を開けた。どうやら、ご機嫌斜めなようだ。
「着いたぞ」
「んーしろーちゃん今日泊まってって」
「はぁ?車は?」
「地下、バイクの横駐車場借りてある。そこに停めたらいいから」
動くのも嫌なのか、むつはまた目を閉じてしまった。仕方なさそうに冬四郎は、言われた通りに地下にある駐車場に向かう事にした。
「バイクどこだよ」
「地下2階の奥の方」
冬四郎は、むつのバイクを見逃さないように辺りに気を付けながら、ゆっくり地下2階まで車を走らせた。
「あそこ」
むつが指差したのは1番奥だった。ようやく動く気になったのか、むつはもそもそと上着を退けるとシートベルトを外した。
「本当に泊まるのか、俺?」
「嫌?」
「嫌じゃないけど…泊まってどうすんだ?」
「ご飯作って」
冬四郎はむつのバイクと隣の車に気を付けながら、バックで車を停めた。
「んー眠たいっ。運転ありがと、疲れた?」
「そこそこな。誰かさん寝ちまうから暇だったぞ」
「寝てても良いって言ったくせに」




