よっつのこわい
「で、何で俺の名前出したんだ?」
実家では吸えないタバコを吸おうと、冬四郎はくわえた所で、むつの方を見た。咳き込んでいるのに、悪いかなと思ったが、むつはぽっと指先に炎を灯して火をつけてくれた。
「あ、悪いな」
「ん。で、何でしろーちゃんにしたかって言うとね…消去法だったの。いちにぃだと女の子らしくしなさいって五月蝿いし、にぃには勉強ばっかりだし、さんにぃは甘い物ばっかり食べさせようとするし…ってなったら、しろーちゃんが1番五月蝿くないし、ほっといてくれるからね。ほら、力の事も知られてたし」
冬四郎が煙を逃がすように、窓を開けるとむつは、窓にこつんっと額をくっつけた。
「さんにぃでも良かったんじゃないか?まだ、マシそうだけど」
「さんにぃ酷いよ。帰省してた、さんにぃにあっちこっち食べ歩きつれ回されて、毎日部活してたのに、1週間で4キロも太ったの‼そのくせ、あの人がりっかりでしょ?同じ県に住むってなったら、余計に太りそう…絶対に嫌」
「あぁ…それは困るな」
冬四郎は兄弟の中でも、ひょろっと細くいくら食べても太らない兄の事を思い出していた。今日の帰省でも、甘い物ばかりを土産と言って、むつにすすめていた。むつも苦笑いをしながら、いちいちそれを口にしていたな、と。
「で、お前の中で1番マシだと判断されたのが俺だったのか?」
「うん。間違ってないと思ってるよ…何かね、そうやってしろーちゃんって名前出したら兄さんたちが猛反対してきて、けど黙り決め込んで…ね」
「あぁ、そりゃ何か気まずいな」
兄たちには悪いと思ったが、冬四郎は内心嬉しかった。どんな理由にせよ、妹がそうやって名前すら最初から無かった自分を選んだ事に。だが、それが元で久々の帰省にも関わらず説教されたのかと思うと悲しくもあった。




