よっつのこわい
父親は大袈裟なくらいの溜め息をついた。それは、冬四郎と3人の兄たちもだった。
「済んだ事は仕方ない…。色々、話が反れてしまったがな。お父さんが言いたいのは、養子離縁の話を出された時から考えてたんだけどな」
冬四郎は、ちらっとむつを見た。むつは、目元をぬぐってしっかりと父親の方を向いていた。
「お父さんとお母さんの間に産まれた子じゃないからって、むつを4人の兄さんたちと区別して育てたつもりはない。だから、家に居ずらいから離縁をって言うなら反対だ。そりゃあ…息子と娘じゃ違うからな、その辺の区別はしたかもしれない。冬四郎以外の兄さんたちだってな、むつが他所の子だからどう接して良いか分からないんじゃない。歳が離れすぎてるからだ。だから、学校まで迎えに行って、外でならと思っていたんだよ」
ゆっくりと話す父親を、むつはじっと見ている。
「今日、急遽3人が帰省したのだって、むつが帰省するってお母さんが話したからだよ。玉奥の家は、これからもお父さんが残していくから大丈夫だ、こそこそ出入り何かしなくて良い。冬四郎をわざわざ連れてきたのは、何か運び出したい物があったんだろう?けど、今日はダメだ」
「え、何で?」
「昨日出歩いて風邪ひいただろう?声が変だ。だから、ダメだ。それに今日ダメって言えば、また冬四郎も連れて帰って来てくれるだろう?冬四郎もまぁ帰って来ないからね…むつもちゃんとたまにで良いから帰ってきなさい。むつの家はここだし、お父さんとお母さんはわたしたちなんだから、嫌かもしれないけど」
「嫌だなんて思った事ない…申し訳ないとは思ってるけど。他人なのにって」
「そういう遠慮はいらないんだよ?もう少し言いたい事は、はっきり言ってごらん?」
冬四郎と兄たちが見守っていると、むつは目に溜まった涙を拭って大きく深呼吸をした。




