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よっつのこわい
むつは雷獣の小さな頭に、ちゅっとキスをした。それを見ていた冬四郎は、うわぁという嫌そうな顔をしている。
「お別れね。おじちゃんに投げて貰おうね」
冬四郎は倉から出してきた布の四方を持つと、真ん中に雷獣を入れさせた。
「あ、雨だ」
「本当…雷雨の時に来て雷雨の時に帰るのね」
「投げるぞ」
雷獣は布に足をかけて、むつの方を見ている。むつは、しゃがみこんで名残惜しいようで、頭を撫でている。
「また、遊びにおいでね」
いや、それは…と言いかけた冬四郎だったが、寂しそうなむつの顔を見るとそれは言えなかった。
「ほら、早くしないとまた置いてかれちまうだろ?」
「あ、うん…またね」
冬四郎は布の四方を両手で持ち、空を見上げた。稲妻が地上に向かって何度も伸びている。仲間を探しているのだ。




