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よっつのこわい
紙のままではあるが、投げたからといって途中でひらひらと落ちてくる事はなくしっかりと羽ばたいて飛んでいる。
「よし。あとは何か包む物」
「待て待て、何するんだ?」
「投げるのよ」
冬四郎は、口を開けて何かを言いたそうにしたが、結局何も言葉が思い付かなかったのか、口を閉じて黙った。
「空に帰すんだもん。投げる」
「これをか?」
これ呼ばわりされた雷獣は冬四郎の腕から逃れようと、ばたばたと足を動かしている。爪が痛かったのか、冬四郎が手を放すと、雷獣はむつの所に駆けていった。
「それしか思い付かないし」
足元にすり寄ってきた雷獣をむつが抱き上げた。すっかりなついている。
「けど、届くわけないだろ」
「そう。だから、あれとあなたよ」
むつはひらひらと落ちてきた、鳥の形の紙を拾いあげて、冬四郎に見せた。
「嫌な予感しかないぞ」
「でしょうねぇ…けど急がないと。だんだん雷が光らなくなってきてる」
「移動しちまってるのか。仕方ないか。どうするつもりか教えて貰わないとな」
冬四郎が諦めたように言うと、むつが嬉しげにぱっと笑みを浮かべた。雷獣もぱたぱたと2本の尻尾をふっている。




