よっつのこわい
冬四郎はむつの傘を閉じると、腕にかけ相合い傘をして仲良く歩き出した。相合い傘といっても、むつの方に傘を傾けているから冬四郎の肩はびっしょりと濡れている。
「ねぇ、それじゃしろーちゃん濡れてる。風邪ひいちゃうよ?」
むつが何度も言ったが、冬四郎は頑として譲らず、自分が濡れるのは構わないようだった。
帰省している家の前を通りすぎ、坂をのぼっていく。民家は少し減り、木々が目立つ辺りだった。街灯も少なく、薄暗い場所だ。
むつの、玉奥の家が見えてきた。宮前の家と同じように、門がありなかなか大きな家だった。
長らく誰も住んでいない家だが、手入れはされているのか綺麗だった。だが、門は当たり前だが開かない。
「どうやって入るんだ?」
「あっち、裏門の方に回ったら入れる」
壁をぐるっと回り込むと小さな門が見えた。
「外して」
冬四郎はむつに傘を持たせ、網戸を外すように持ち上げると、かたんっと音をたてて簡単に門は外れた。
「前に来た時に気付いたの。外れるって」
「敷地内に入れても、家には入れないだろ?」
冬四郎が門を押さえている間にむつは、するっと中に入った。冬四郎も入ると、元通りになるように門をはめこんだ。




