よっつのこわい
結局、ボトルを1本、4人で呑み切り両親は寝室に引っ込んだ。片付けは冬四郎が引き受けてくれたので、むつはゆっくりお風呂に入っていた。だが、暖まったせいか酔いが急に回ってきた。
冷たいシャワーを浴びて、髪の毛を拭きながらリビングに戻ると冬四郎は缶ビールを呑んでいた。
「お風呂どーぞ」
「ん。むつも呑むか?」
「今はいらない。心臓ばくばくしてる」
ひんやりとしフローリングに座り、ソファーに頭を乗せたむつの顔は赤くなっていた。
「お湯につかったのか?」
「うん。ちょっと気持ち悪い」
立ち上がった冬四郎は、大きめのコップに氷水を入れてきて、テーブルに置いた。
「ゆっくり飲めよ」
「はーい」
冬四郎は缶ビールを呑み干し、風呂場に向かった。むつが入った直後だからか、少し甘いようなシャンプーとシャボンの清潔な香りが漂っている。
きゅっとシャワーをひねると、冷水になっていた。もろにかぶった冬四郎は、舌打ちをしたが誰にも聞こえはしない。
お湯に戻して、頭と身体を洗い浴槽のふたを開けた。ほのかに柑橘系の香りがした。お湯の中には布袋が浮いている。
布袋の中には、何か分からなかったが柑橘類の皮が入っているらしく、そこから香りがしている。むつが長くお湯につかっていた理由が分かった冬四郎は、笑みを浮かべながら、肩までしっかりお湯に入った。
むつが入った後、というのがありありと分かる香りは、なかなか消えず何となく落ち着かない。それが嫌なわけではなく、その事を意識してしまう自分が嫌になった。
お湯でざぶざぶと顔を洗い、冬四郎は風呂から上がった。自宅ではないので、タオルだけで、うろうろするわけにもいかず、仕方なく寝間着のスウェットを着た。だが、上半身は着ずに手に持ってリビングに戻った。




