よっつのこわい
むつと冬四郎が目的地である、2人の実家に着く頃にはもう真っ暗になっていた。運転に疲れた冬四郎と眠たそうなむつは、足取り重く玄関をくぐった。
「ただいまーっ」
それでも、むつが元気よく言うと奥からパタパタとスリッパを鳴らして、初老に近い和服姿の女性が出てきた。
「おかえりなさい。冬四郎さんもむつさんも、お疲れ様。お腹は?」
「空いてる」
冬四郎が先に上がるとむつは、冬四郎の靴を揃えた。そして、自分も靴を脱いで揃えて置くと、スリッパを出した。
「ありがと」
むつは頷くと自分のバッグを持ち、和服姿の女性、2人の母親と一緒にダイニングに入っていった。
むつはバッグを置き、キッチンで2人の為に夕飯を温め直している母親に、重たそうな紙袋を渡した。
「あたしとしろにぃからだよ」
「まぁ、ありがとう。お父さん、書斎に居るから挨拶して来なさいね」
冬四郎とむつは揃って頷いた。玄関の方に戻りつつ、重厚なドアをノックした。中から返事はなかったが、ゆっくりドアを開けた。
むつが首を突っ込み、覗くと机の上に書類を広げていた父親が、それに気付き柔和な笑みを浮かべた。
「お父さん、ただいま」
「おかえり。ずいぶん遅かったな」
へへっと笑いながらむつは書斎に入った。後から冬四郎も入ってきて、2人は父親の向かいにあるソファーに座った。
「高速道路が渋滞してたんだよ」
「そうなの。火事だったの…あと、お兄が帰省の約束忘れてたのも遅くなった原因」
「余計な事、言うなよ」
冬四郎とむつのやり取りを父親は、楽しそうに眺めている。
「それはご苦労だったね。2人とも眠そうだし、早くご飯食べてゆっくりしなさい」
「はーい。あ、お土産お母さんに渡してあるの。ワインだよ」
「そうか。それなら、仕事を片づけて少し呑もうかな」
「うん、そうして。ご飯食べて来るね」
冬四郎が先に立ち上がり、ドアを開けた。むつは少し迷うような素振りを見せたものの、先に書斎から出た。




