よっつのこわい
支度を終えた冬四郎とむつは、エレベータに乗り込んだ。むつの旅行用の鞄は、当然のように冬四郎が持っていた。
「あ」
「どうし…おぉっ」
ぐらっとエレベータが大きく横に揺れ止まった。そして電気も消えた。だが、揺れは続いている。
冬四郎はむつの方を見ようとしたが、その前にむつがぎゅっと冬四郎の手を握ってきた。冬四郎は荷物を置き、むつを抱き寄せた。
「地震だな」
「うぅ…まだ揺れてるぅ」
「エレベータは紐でつってる箱だから仕方ない。じっとしとけばおさまるよ」
「ワイヤー切れそう」
「そんな簡単に切れるわけないだろ」
頭1つ分程、背の低いむつの長い髪の毛を撫でながら、冬四郎は揺れがおさまるのを待った。
揺れがおさまってくると、じじっと音をたてて電気がつき、エレベータも動き出した。1番近い3階で止まると、2人は降りた。
「大丈夫か?」
「うん。結構、揺れたね」
「そうだな…とりあえず階段使うか」
階段を下りて、地下の駐車場に行くと荷物を後部座席に積み車に乗った。
「大丈夫か?」
「うん…びっくりしたぁ」
助手席にだらしなくもたれ座ったむつの顔色は、あまり良くはない。
「仕事で、大変な目にあってるのに地震が怖いのか?それとも停電か?」
「それとこれとは別だよ。エレベータで地震ってのが無理…さっきは、ありがと」
「ん?うん?…とりあえず行くか。京井さんとこ寄るんだよな?」
「うん、お父さんにワインのお土産」
冬四郎は車のエンジンをかけて、駐車場から車を出した。助手席の窓を半分ほど開けると、むつは額を窓につけるようにして風にあたっていた。




